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会社の勝手にさせないための「有給休暇の計画的付与」の知識

「有給休暇の計画的付与」は、我が国の有給休暇の低い消化率を上げるための対策として、労働組合と使用者が労使協定を成立する半自動的な有給休暇付与の仕組みです。

しかし、御用組合(会社の言いなりの組合)や形ばかりの労働者代表による、従業員の希望をまったく無視した労使協定によって、会社にとって都合のいいように計画的付与が行われるなどの危険性が潜んでいます。

このページでは、労働者の希望が反映した有給休暇の計画的付与を実現させるために、誰でも理解できる実際の労使協定の締結方法を詳しく説明します。希望に沿った労使協定を結ぶために会社と堂々と交渉できるための基礎知識もできるかぎりわかりやすく説明します。

2019年4月からの有給休暇義務化の法改正に伴い、会社が効率よく義務を果たすための虎の子の手段として、計画的付与の制度が注目されました。このページでは、計画的付与制度が有給休暇義務化によって悪用される可能性についても言及します。

まず「有給休暇の計画的付与」の制度の特徴を知ろう

 本来有給休暇は、労働者各人の自由な意思に基づく時季指定・使用目的に沿って利用されなければなりません。そして与えられた日数分については、使用者に気兼ねなく、当然に消化されるのが理想です。

 しかし日本の職場では、職場の同僚や使用者に気兼ねするためか有給休暇の取得率が低いままであったため、昭和62年の労働基準法改正で「計画的付与」の制度が新設されることになりました。

 この制度の発足に合わせ、入社後最初に有給休暇が与えられる日数も、6日から10日に変更されました。

 取得率を上げるために放たれた新制度の大きな内容は、以下の3つです。

  • 手続:会社と過半数労働組合(社内に組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との書面による労使協定で成立する
  • 効果:適用範囲とされた事業場全体の労働者に効果が及ぶ(有給休暇を取らされる)
  • 制約:付与された有給休暇のうち「5日」を超える部分についてのみ「計画的付与」ができる
  • 種類:3つの付与形式がある

 本制度は、労働組合組織率(全会社中において労働組合が結成されている割合)の低下も相まって、大きな成果を挙げていないのが現状です。しかし2019年4月における有給休暇義務化の法改正に伴い、再び脚光を浴びるようになりました。3つの特徴について、詳しく説明しましょう。

会社と過半数労働組合(社内に組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)との書面による労使協定で成立する

 計画的付与の制度は、事業場の過半数労働者で組織される労働組合と使用者との労使協定にて成立します。その場合は、労使協定は書面で結ばないといけません。

 その事業所に労働組合が存在しない場合は、事業場の労働者の過半数を代表する者との労使協定によって成立させることができます。

 社長一族が経営しているような中小・零細企業においては、社内に労働組合など無い場合が多く、このような会社では過半数代表者との締結がメインの方法となっているようです。過半数代表者の選出は、挙手等の手段で決められるようですが、現実は経営者が勝手に選んだ都合のよいイエスマン的な者が代表者となり、労使協定も労働者の関与しない場所で勝手に結ばれているのが現状です。

 中小・零細企業におけるこのような現状が、労働者にとって不利益な有給休暇取得のケースにつながる可能性を生じさせます(後述)。

適用範囲とされた事業場全体の労働者に効果が及ぶ

 成立した労使協定は、計画的付与に反対の労働者にも効果が及ぶ、というのが裁判所の考え方です。労使協定において有給休暇を一斉に取得させると合意した日に、個々の労働者の意図に関係なく、有給休暇を取らされることになるのです。

 下の判決文を見てください。この裁判は、事業場において多数派労働組合(当事業場全体の98%の労働者が加入)と会社が結んだ労使協定によって決められた有給休暇に一斉消化日について、少数派労働組合の組合員にその効力が及ぶか?という争点で争われた事件です。文中の「長船労組組合員」は、少数派の労働組合を指します。

 「・・・本件計画年休は、その内容においても、事業所 全体の休業による一斉付与方式を採用し、計画的付与の対象日数を二日(平成五年 からは、四日)に絞るとともに、これを夏季に集中することによって大多数の労働者が希望する一〇日程度の夏季連続休暇の実現を図るという法の趣旨に則ったものであり、現時点において年休取得率の向上に寄与する結果が得られていると否とを問わず、本件選定者ら(長船労組組合員)について適用を除外すべき特別の事情があるとは認められない以上、これに反対の本件選定者ら(長船労組組合員)に対し ても、その効力を有するものというべきである」【三菱重工業長崎造船所事件:福岡高判 平成6年3月24日】

 本判決に対しては、98%の労働者が加入している多数派労働組合が結んだ労使協定とはいえ、意思に反した合意内容を少数派労働組合の組合員にまで及ぼしてしまう判断に批判的な意見もあります。しかし、締結に至るまでの過程が適切であったこと・多くの労働者の希望に叶う合意内容であったことなどを理由に、少数派組合員に効力が及ぶ帰結させたものだと考えられます。

 判決文中における「特別な事情」ですが、本判決も含めた幾多の裁判例を見てもはっきりと示されていません。ここで、当事件の第一審判決文を見てみましょう。

 「労基法の規定に基づき、労使協定により年休の取得時期が・・・特定されると、その日数について個々の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権は当然排除され、その効果は・・・事業場の全労働者に及ぶが、その協定に反する少数組合がある場合には、少数組合員を協定に拘束することが著しく不合理となるような特別の事情があったり、協定の内容が不公正であったりするときは、少数組合員に及ばないこともある」【長崎地裁判 平成4年3月26日】

 第一審でも、「特別な事情」についての具体的言及はありません。本判決中における「協定の内容が不公正であったりするとき」も含め、その内容を争うときは、個々の裁判において各事件内容に沿った判断がその都度なされる、と考えた方がいいでしょう。

 以下は行政通達となります。より踏み込んだ記述ではありますが、この通達においても、「特別な事情」に関する具体的な内容は示されていません。

 「・・・特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮するよう指導すること。」【基発1号:昭和63年1月1日】

 よってここでは、事業場において多数を占める労働組合が、適切な手続きによって使用者と有給休暇計画的付与の労使協定を結んだ場合には、少数派労働組合の組合員やそれ以外の労働者(どの組合にも属していない労働者)にもその効力が及ぶことがある、と認識しておきましょう。

 これらの裁判例を鑑みると、計画的付与されることを拒否するためには、「多数派労働組合と会社との間で成立した労使協定の内容・手続き等の不適切さの主張」と、「自身にとって計画的付与されることが不都合な事実を『特別な事情』として主張していくこと」の2点に力を入れていくことになります。

 この裁判前例は、多数派労働組合が会社のご都合主義的組合(御用組合)である場合に、問題を起こします(後述)。

付与された有給休暇のうち「5日」を超える部分についてのみ「計画的付与」ができる

 計画的付与の労使協定といっても、全ての日数を計画的付与の対象日とすることは出来ません。労働者個人が私的な利用で使用するためにも、最低5日は残しておかないといけません。

 有給休暇の趣旨に照らしてみても当然の制約であると思われます。いくら労働組合が日にちの決定に関与するとしても、所属労働者の細かい希望までも反映させることは当然難しいものです。

 全部の日数を組合と使用者に決められてしまっては、労働者個人の私的な用事の場合に有給での休暇を取ることができなくなり、経済的な不利益を被る可能性も出てきます。「5日」を超える日数を保有していない労働者にどうしても計画的付与をしたい場合(例:事業場内の全労働者に一斉に計画的付与をしたい場合)は、付与日数を増やす・特別休暇を与える、などの措置が必要となります(後述)。

 意外とわかりにくいこの決まりについて、以下で具体的に説明しましょう。

入社してから6カ月を経過していない通常の労働者のケース

 入社してから半年未満の労働者を含めて一斉に計画的付与を行おうとした場合、この労働者には有給休暇が付与されていないため、原則計画的付与の対象労働者とすることができません。この労働者には、特別休暇を与えるなどの措置が必要です(後述)。

比例付与方式で有給休暇が「5日」しか与えられないパートタイム労働者のケース

 有給休暇を「5日」しか保有していない比例付与のパートタイム労働者がいたとします。「5日」を超える休暇日数を保有していないため、計画的付与の対象労働者とすることができない、ということなのです。例えばこの労働者が次の基準日に「6日」を付与された場合は、1日だけ5日を超える日数があるため計画的付与の対象労働者とすることができます。

3つの付与形式がある

労働者に一斉にあたえる「一斉付与方式」

 事業場全体を一斉に休みにしてしまう方式です。全ての労働者に同一の日に有給休暇を与える方式です。

 工場稼働を一斉に止めることが出来るので、経費の節約にもなるのでしょうか?一斉に作業場を休めることができるなら、使用者にとっては有効な制度なのかもしれません。

個人ごとに与える「個人別付与方式」

 個人ごとに計画年休が設定されます。個人の私的な用事などを考慮して計画が組まれるようです。

 私の経験として、大きな企業に勤めておられる労働者の方に多く見られました。まだまだ中小・零細企業ではほとんど見られません。

 実際多くの職場で行われている個人付与の流れは以下の通りです。個人の希望も聞かずに労使協定で上から日を決めることは難しいですから。菅野和夫先生は、著書「労働法 第10版」 (法律学講座双書)の中で、この制度のことを「年休カレンダー方式」と命名していました。

 

 (1)年度の初めにおいて、年休カレンダーへ従業員が記入するという形で取得希望日を調査

   ↓

 (2)これを使用者の方で調整

   ↓

 (3)労使協定で各労働者ごとに取得日を定める

 

班別にあたえる「班別付与方式」

 労働者全体をグループにわけたり、又はそれぞれの労働者の班ごとに区切って計画年休を与える方式。班ごとや部署ごとに繁閑の差が出る時は、合理的な付与方式かもしれません。

「5日」を超える日数がない労働者がいる場合に一斉に計画的付与する方法

 事業場全体で一斉に計画的付与を行使しようとすると、2つの問題が出てきます。「5日」を超える有給休暇日数を保有していない労働者への対応の問題、そして「5日」を超える部分があっても計画的付与予定日数分に、その超えた部分の日数が足らない労働者への対応の問題です。

 その場合には、何ら措置をしないままに計画的付与を断行することはできません。でないと、私的利用のために留保されるべき5日分を、その労働者は確保できない等の問題が生じるからです。それはれっきとした労働基準法違反となります。

 その場合の対応策としては、以下のものが挙げられます。

措置をして計画的付与をする場合(有給休暇の付与日数を増やす・特別休暇を与える・対象労働者から外す)

有給休暇の付与日数を増やす

 有給休暇を新たに与えて「5日」を超える部分を作り出し、超えた部分について計画的付与をする措置です。

 「5日」を超える部分がない労働者とは、入社後6か月を経過しない労働者である場合が多いものです。よって「新たに有給休暇を与える」という措置よりも、「6か月に至る前に、前倒しで有給休暇を付与する」という措置が取られることが一般的です。

 前倒しで特定日(よく使われる日が「入社日に付与」)に10日付与されたとすると、5日を超える部分が生まれるため、その労働者にも計画的付与をすることができます。

 このような措置を採る場合には、就業規則の計画的付与の部分に、当該特例措置が可能であることがあらかじめ規定されていなければなりません。

「特別の休暇」を与える

 「5日」を超える日数を持たない労働者、または「5日」を超える日数を持っているが計画的付与する日数には足らない労働者に対し、特別に休暇を与える措置です。

 「特別の休暇」というフレーズですと、使用者による恩恵的措置による休暇というイメージが湧きますが、それは違います。計画的付与をするうえで、労働基準法の定めに違反することを回避するために使用者がしなければならない義務的措置です。

 よって、「特別の休暇」に与えられる金額は、労働基準法第26条の規程による「休業手当(後述)」の金額を下回るものであってはならないと考えられます。使用者の胸三寸で特別の休暇において支払われる金額が決められてしまっては、有給休暇の権利を持たない労働者は計画的付与によって休むたびに低い金額をつかまされる可能性が生じ、収入において不安定な立場に置かれてしまうからです。

 「特別の休暇」を与える場合にも、就業規則の計画的付与の部分に、「特別の休暇」を与えることがあることがあらかじめ規定されている必要があります。

 この方法を採る場合の方が、付与日数を増やすよりも余分な人件費が生まれない点で会社にとって有利です。つまり、有給休暇がない労働者や5日を超える部分を持たない労働者には、計画的付与予定日数分を特別休暇として与えればよいのです。また、超えた部分はあるが、超えた部分が計画的付与予定日数分に足らない労働者には、足らない分を特別休暇として与えればよいことになります。

「5日」を超える日数がない労働者を計画的付与の対象労働者から外し、斉一的付与そのものを断念する

 この方法が、実はもっとも現実的な措置となります。上記ふたつの措置は、中小企業や零細においては、ほぼ採られない措置です。もっとも、この措置をすれば、もはや斉一的付与とは言えなくなりますが。

 しかし「5日」を超える日数がない労働者を計画的付与の対象労働者から外してしまえば、新たに休暇など与える必要もないため簡単であり、使用者としても余分に人件費を払うこともなくなります。

何ら措置をせずに斉一的に計画的付与をする場合(該当労働者に「休業手当」を与える)

措置をせず休ませる場合に使用者が支払うべき金額の最低額は、「休業手当」相当額(平均賃金の6割相当)である

  • 有給休暇がない労働者
  • 有給休暇を保有していても、「5日」を超える部分がない労働者
  • 「5日」を超える部分を有していても、超える部分の日数が計画的付与予定日数分に足らない労働者

 この3つのケースの労働者に対しては、事業場内において斉一的な計画的付与の際、有給休暇の付与日数を増やす・特別の休暇を与える等の措置をしなければなりません。そして措置をしないままに計画的付与で休ませる場合には、会社は上記3つのタイプの労働者に、最低限支払う額として「休業手当」を支払わなければなりません(【昭和63年3月14日・基発150】)。

 そもそも、休業手当とは、労働者に原因がなく使用者側の都合で休まされる場合、得られるはずであった賃金の補償的意味合いで労働者に支払われるものです。その額は「平均賃金の6割相当分」を支払うものとされています。※この金額は最低のものであるから、これを上回る額を支払っても良いことになります。

 よって、あなたの場合において支払われる休業手当の金額を知るためには、まず最初に平均賃金の額を割り出さなければなりません。

平均賃金を求める方法(原則)~日給制・時給制・出来高払制以外の労働者の平均賃金計算法

 平均賃金とは、「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」です。

平均賃金を算出する公式図

 平均賃金を求める手順は・・・

  • (1)まず起算日(算定すべき事由の発生した日)をはっきりとさせる
  • (2)「賃金の総額」に含めない賃金を分別し、その金額を総額から差し引く
  • (3)「期間の総日数」に含めない期間をはっきりさせ、その日数を総日数から差し引く
(1)まず起算日(算定すべき事由の発生した日)をはっきりとさせる

 原則は、算定すべき事由の発生した日が起算日となりますが、賃金締切日(俗にいう「締め日」のこと)がある場合においては、算定事由の発生した日の直前の賃金締切日から起算します(労基法12条2項)。

 現在の企業においては、賃金締切日があるケースがほとんどですので、原則のまま計算する場合はごく稀です。計画的付与において休業手当を支払う場合には、計画的付与によって有給休暇の権利がない労働者が休ませられる日の初日が「算定事由の発生した日」となります。その日の直前の賃金締切日が「起算日」となります。

 賃金締切日が異なる賃金が並存するケースでは、各賃金において「算定事由の発生した日」の直前の締切日が起算日となります【基収5926号:昭和26年12月27日】。

(2)「賃金の総額」に含めない賃金を分別し、その金額を総額から差し引く
  • 臨時に支払われる賃金
  • 3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金
  • 現物給付

 「臨時に支払われる賃金」とは、定期的に支払われることがない賃金のことです。「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するもの」【基発17号 昭和22年9月13日】と行政は解釈をしています。例として、私傷病手当・結婚手当・弔事手当・見舞手当などが挙げられます。

 直下で挙げる『「期間の総日数」に含めない期間』の間に、休業期間の理由に基づき支払われたような賃金については、「臨時に支払われた賃金」の性格を有するため、これもまた「支払われた賃金総額」から差し引きます。【※例】「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間」に支払われた見舞手当など。

 「3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金」の代表例はボーナス・賞与です。

 「現物給付」は、支給されたのものの市場での価値が算出困難であるため、除きます。

(3)「期間の総日数」に含めない期間をはっきりさせ、その日数を総日数から差し引く

 以下の期間は、その期間も計算式の分母に含めてしまうと平均賃金額が不公平に低くなってしまうため、総日数から差し引いたうえで計算をします。

  • 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
  • 産前産後の女性が労働基準法65条の規定によって休業した期間
  • 育児・介護休業法の定めるところにより休業した期間
  • 試みの試用期間
  • 使用者の責に帰すべき事由により休業した期間

平均賃金を求める方法(例外)~日給制・時給制・出来高払制の労働者の平均賃金計算法

 賃金が時給制・日給制・出来高払制の場合は、暦日数たる総日数で割ってしまうと不当に平均賃金が低くなる可能性があるため、実際に働いた日数で計算をします。

日給制・時給制・出来高払制の労働者の平均賃金を算出する公式図

 例外における算出の手順は以下の通りです。原則の計算手順に、「(4)原則の計算式で算出した額と、例外の計算式で算出した額を比べる」の作業が加わります。

  • (1)まず起算日(算定すべき事由の発生した日)をはっきりとさせる
  • (2)「賃金の総額」に含めない賃金を分別し、その金額を総額から差し引く
  • (3)「期間の総日数」に含めない期間をはっきりさせ、その日数を総日数から差し引く
  • (4)原則の計算式で算出した額と、例外の計算式で算出した額を比べる

 ここでは「(4)原則の計算式で算出した額と、例外の計算式で算出した額を比べる」の作業について説明しましょう。

(4)原則の計算式で算出した額と、例外の計算式で算出した額を比べる

 日給制・時給制・出来高払制の労働者の場合、最初に原則の計算式で計算します。その後、例外の計算式で計算をします。

 例外の計算式で導かれた金額は、日給制・時給制・出来高払制の労働者の平均賃金の最低基準額となります。多くの場合、例外の計算式で計算した額の方が金額が上である場合が多いものです。少ないケースですが、原則の計算式で計算した額が例外の計算式で計算した金額を上回る場合は、当然に、原則計算の金額がこの労働者の平均賃金となります。

日給制・時給制・出来高払制の労働者の平均賃金を決定する過程を説明する図

会社の勝手にさせないための「計画的付与」の手続き方法

 計画的付与の制度は、労働組合・労働者の過半数代表が関与する、労働組合関連の制度です。よって、労働組合を作る・合同労組(外部労働組合)に加入する、ことを前提に話を進めます。個人の力だけで、会社ですでに行われている制度・仕組み・慣習に反抗することは現実的でないからです。

社内にすでに労働組合がある場合は、その組合の機能的能力(使用者と対等に協議ができるか)を見極める

 あなたの所属している会社に労働組合があるならば、その組合が、労働組合が本来果たすべきであった役割を担っているかを厳しく調べます。

 そもそも御用組合(会社とのなれ合いの組合)は、使用者と団体交渉などしません。団体交渉と労使協議は、行われるタイミングがまったく違います。団体交渉は、労使協議決裂後や、労働者に対して不当な扱いがなされた場合に、組合が圧力をかけつつ話し合いをするために行われる団体行動権です。

 あなたの会社の組合が御用組合であったならば、その組合に入ってからかき乱すか、合同労組に加入して交渉力を鍛え、自ら代表者選出に立候補するか?を考えないといけません。

 御用組合であっても、組合が存在する以上はその中で上に上がっていく方法が労力が少ないと思います。ただ、抗戦の意思を打ち出したことで組合内部の人間に疎まれるならば、その組織はイエスマンのたまり場であるため、見切りをつけて新しい組合を結成した方が得策です。

過半数代表者に立候補する者は後日労働組合を結成することを前提として、合同労組に加入し、立候補に対する不当な扱いに備える

労働者代表にふさわしい人間とは?勤続年数や熟練度は関係ない

 過半数代表者にふさわしい人間とは、必ずしも年長者のベテランであることを必要としません。ふさわしい人間の要素を以下に挙げておきました。逆を言えば、以下の要件を満たしていない者は、ベテラン年長者であってもふさわしくない(務めを果たすことができない)ことになります。

  • 会社の経営陣側とのしがらみが少ない労働者
  • 経済的余力のある(給料が少なくなっても生活できる)労働者
  • 他人からの批判や拒絶に動じない労働者
  • 勉強し続けることができる労働者

 過半数代表者の人選は非常に重要です。もし過半数代表者を立てることが、労働組合の前段階であるならば、組合設立時に過半数代表者は、そのまま組合長や執行委員になる可能性の高い人物でもあります。

会社の経営陣側とのしがらみが少ない労働者

 会社の経営陣側とのしがらみが多い人間は、話し合いの過程でどうしても妥協が多くなってしまいます。

 労使協定の締結作業は、労使の話し合いのうえに成り立つものである以上、労働者側にもある程度の妥協は必要となります。しかししがらみの多い人間は、相手に対する遠慮から妥協をし過ぎ、労基法に定められた最低基準を下回るような合意をしてしまう可能性も生じます。

 経営陣側との人的つながりがあることは、時に有利となります。しかしいくら話し合いが和やかであっても、法に定めた基準を満たさない要求は、断固拒否する意志の強さが必要となります。

経済的余力のある(給料が少なくなっても生活できる)労働者

 一族経営の中小・零細企業においては、労働組合は蛇蝎のごとく嫌われます。それは使用者の選任した場合以外の労働者代表(自ら立候補した者・労働者の自由意思によって選ばれた者)でも同じことです。会社の政策に立てつく者として、十中八九、排除の対象になります。

 会社は、己の意に沿わない者を、全く畑違いの部署に配置転換したり、家族生活を正常に送ることができないような遠隔地部署に転勤させます。そして移動先で無理なノルマを課し、達成できないと叱責を繰り返し、その者の承認の欲求を踏みにじり、自ら退職させるように仕向けます。私のいままで見てきた嫌がらせは、このような手段ばかりでした。

 この場合、排除の対象となった労働者に残された道は、「休職による緊急避難」しかありません。そのまま会社に出勤したのでは、普通の人間では負けてしまいます。休職し、労働組合の力を借りるか労働委員会の力を借りて、不当な配置転換を撤回させる必要があります。

 休職している間は収入が絶たれるため、その期間を支える経済的なバックボーンが必要となります。日々の生活を暮らすのがやっとの人間では不当な配置転換の際に緊急避難たる休職ができないため、会社との交渉においても弱気な姿勢を見せてしまいます。

他人からの批判や拒絶に動じない労働者

 他人からの批判や拒絶に弱い人間は、過半数代表者を務めることは難しいでしょう。過半数代表者は、上記した通り会社側の人間から確実に邪魔な存在に扱われます。そのような他人からのマイナスの感情に耐えられる人間でなければなりません。

勉強し続けることができる労働者

 過半数代表者は、年々改正されていく労働関連法や裁判例について、日々勉強をしていく必要があります。日々の勉強を怠ると、最新の知識を仕入れることができないため、会社側の交渉担当者に足元を見られるマイナスの可能性が生じます。

代表候補者の合同労組(外部労働組合)への加入

 過半数代表者の候補者は、単独で、もしくは事前に立候補に賛同する労働者(立候補者に投票する労働者)と共に、合同労組へ加入します。これは、立候補や立候補者に投票したことに対する報復への備えです。

 これは大げさな話ではありません。一族経営の会社では、賃金減額などの不当な行為に対する苦情を言った2時間後に、遠隔地に転勤になったり、解雇通知が来るのです。合同労組に加入をしていれば、立候補と同時に加入の事実を告げるなどして、使用者の報復をけん制することができます。

 会社に、弁護士や社会保険労務士などの専門家が顧問としてアドバイスしているようならば、なおこの備えは効果的です。

 合同労組については、ここでなくてはならない、というこだわりは持たなくてもよいでしょう。複数の組合を調べてみて、自分に合ったところを選択すればよいと思います。

過半数代表者選挙

計画的付与に関する労使協定を見て、誰が現在の過半数代表者か知っておく

 計画的付与を取り決めた直近の労使協定を見て、現在誰が過半数代表者になっているか調べます。そのうえで、今回の計画的付与は自分の意見をまったく反映されておらず、何とかしてほしい旨を告げます。

 十中八九、「勝手に労働者代表にされ、勝手に協定を結ばされた」という答えが返ってくることでしょう。その実態を確認した後、今度の労使協定の際に、立候補する旨をその代表者に伝えます。

過半数代表者選挙に備えた根回し

 過半数代表代表選挙があるのが分かっている場合(一定の時期に過半数代表者が決められる場合)は、今度の選挙では自分が立候補する旨を伝えます。分からない場合(勝手に決められている場合)は、会社に立候補する旨を通告します。

 会社が反発をしてきたら、合同労組へ加入の際、代表者選挙に立候補する際の方法を教わったことを伝えます(合同労組へすでに加入していることを知らしめて不当な行為のけん制をするため)。

 他の同僚らにも、過半数代表者選への関心を高めてもらうため積極的に発言をしてください。

過半代表者選挙立候補

合同労組の団体交渉(もしくは労使協議)で、労働者の自由意思が唯一反映される「無記名投票」を目指す

 中小・零細企業において、使用者が自ら選任する「労働者の過半数を代表する者」には、使用者の意向に「イエス」しか言わないイエスマンしか選ばれません。これでは代表者とは言えません。よって、過半数代表者選出に、労働者が積極的に関与することが必要となります。

 後述しますが、2019年4月からの有給休暇義務化に伴い、計画的付与制度が使用者の義務の回避の手段として悪用される可能性が高まりました。よって、イエスマン的労働者代表を選出させない態勢づくりが急がれます。

 現在の代表者選出方法を観察してみましょう。あなたの会社の選出方法はどのようなものでしょうか?

  • (1)使用者が勝手に決める(労働者の多くは、誰が代表者かも知らない)
  • (2)朝礼などの会合で、代表者として使用者が紹介した者に対して「信任か否か」の挙手
  • (3)書面に代表者の名前が書いてあり、各労働者欄に信任か否かを記入する方法
  • (4)立候補者が示され、そのうえで日にちを決めて無記名で投票する

 これらの選出方法は、私が見てきた会社における選出方法でした。この中で、真に労働者の自由意思が反映される方法は、(4)のみでしょう。

 (1)の選び方は論外です。労基法違反のなにものでもありません。労基法にはしっかりと「労働者の過半数を代表する者」と書かれ、労基法施行規則においても代表者の選出方法が「投票、挙手等」と規定されています。

 (2)・(3)についても、外形は施行規則の方法にのっとってはいますが、労働者の意思は反映されない方法でしょう。そもそも、代表候補者の目に見える形で、誰が己に不信任をしたかが分かる方法であると、各労働者は候補者に対して遠慮し、不信任に意思など表明できないものです。使用者がそのことを当然理解しています。それゆえ、このような方法を採るのです。

 会社の顧問をしている弁護士・社会保険労務士らは、労働組合対策の一環として、このような代表者選出においても、法に抵触しない巧妙で姑息なアドバイスをするのです。

 よって、計画的付与において使用者の独断を避ける方法の第一歩は、(4)の代表者選出方法を確立することになります。

計画的付与に関する労使協定を見て、誰が現在の過半数代表者か知っておく

労働者の利益に配慮した労使協定の締結を目指す

有給休暇義務化に伴う、計画的付与悪用の可能性を説明。年間休日の減少には要注意!

 2019年からの有給休暇義務化制度の発足に伴って、計画的付与の制度が注目を浴びるようになりました。

 この制度、労働者が従来の方法(自ら時季を指定して取得する方法)で有給休暇を取得している場合や、労働組合と会社の取り決めによる計画的付与で有給休暇を取得している場合は、その分を「5日」から控除することができるからであります。

 つまりこの計画的付与制度によって労働者に有給休暇が5日以上与えられれば、会社としては有給休暇を取らせる義務を免れることができます。

 問題はここからであります。会社内で過半数を占める労働組合が御用組合(会社の言いなりの組合のこと)で、会社が会社カレンダーで例年休みであった時期を出勤日とし、そしてその労働組合と労使協定を結んでこの期間を計画的付与による一斉休業と期間としたらどうでしょうか。使用者は会社の稼働日を実質減らすこともなく、労働者に有給休暇を取らせる義務を免れることができるのです。

 労使協定締結による計画的付与は、計画対象日が出勤日(労働日)であることが必要である(【昭和63年3月14日・基発150】)ため、従来休みであった日を出勤日にしたうえで、御用組合と労使協定を結び、さも計画的付与がなされたような体裁を整えるのです。

 このような姑息な手段を野放しにさせないためには、まず年度始めに配られる会社カレンダーにおける年間休日をチェックします。増減はないか、年間稼働日数が増加したいるならば、増加した期間について会社側と労働組合で話し合いが為されているかどうかを判断します。

 会社カレンダーにおける年間休日を減らすことは、「休日」という重要な労働条件を一方的に変えてしまう「労働条件の不利益変更」行為のなにものでもありません。個人だけで就業規則の変更について、不利益変更だとして改めさせるのは至難の技であります。外部労働組合(合同労組)に加入し、その労組の支部を社内で作り、会社カレンダーの一方的変更に対し団体交渉をするのが王道となります。

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