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理不尽な有給休暇申請手続き規則と戦うための具体的方法!

有給休暇の具体的な取得・申請手続きは、会社ごとに自由に設定できるため、多くの形が存在します。

しかしそれらの手続きの中には、法律で定めた最低条件を脅かすようなものがあったり、取得自体を抑制させるようなものも存在します。

取得の妨げになるような申請手続き規程は当然違法であり無効です。しかし私たちは、手続き規程の妥当性のラインがどこであるかなかなか知るすべがありません。

よって当ページでは、申請手続き規程が違法であるか合法であるかの判断基準を説明します。その後、事例をあげ、それに対する具体的な対策を講じることで反抗へのヒントを提示したいと思います。

社内規程との戦いは、個人で行うにはハードルの高い戦いだと思います。よって集団で戦う場合の方法も紹介します。

理不尽な申請手続き規程が改められ、一日でも多くの有給休暇が消化できるようになることを願います。

 これら4つの過程をどのように行っていくのか?以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

違法性の是非について

社内で取得手続きを定めることは自由だとされているが、その手続きを守ったか否かで有給休暇成立に影響を及ぼすことは認められない

 会社のしたことは違法な行いだと言えます。会社が、取得に関する社内手続きを定めることは自由だとされているが、手続き違反だからといって有給休暇そのものが成立しないという結果は、労働基準法に背くことになります。

 年次有給休暇については、労働者の請求によって使用者は当然に与えなければならないのです。

 使用者が有給休暇取得に際して労働者に行使できる権利は、「この日あなたに休まれると我が社の事業が回らなくなってしまうから、他の日にしてください」と言える権利(時季変更権)だけです。

 その時季変更権ですら、会社は気軽に行使できません。気軽に行使できたら、労働者は自分の望む日に有給休暇を取得できなくなってしまうからです。

 ※ ◇有給休暇を使う時の特定(1)~時季指定権と時季変更権 参照

 労働基準法は、年次有給休暇取得の手続きに関して、何らの制限もしておりません。よって、会社内で有給休暇取得の手続きについて、規程を設けることは自由だとされています。しかし、会社内で定める取得手続きに反したからといて、有給休暇そのものを認めないことはできないのです。それが許されてしまうと、たかが一会社内の規程が、労働基準法の内容を制限することになってしまいます。

「取得の際の手続き規程」では、どこまで規定することが認められるか?

 先ほども書きましたが、就業規則等で取得手続きに関して一定の条項を設けることは、認められるとされています。

 ここで言う取得のために規定することが認められる「手続き」条項の内容とは、どのようなものでしょうか?

 例えば、「取得の際には、所定のA用紙を使って所定の欄に必要事項を記載の上、直属の上司に事前に提出することで請求する」程度の内容だと考えられます。何度も書きますが、「右の手続きを怠った者には、請求対象たる有給休暇を与えない」旨の規程は法律違反となります。

 取得手続き条項の中で、最も問題となるのが多いものは、「いつまでに取得請求をしなければならないか」についてです。

 請求時期について労働基準法は何も記載していません。解釈上は「時季変更権が行使できる前日の終業時刻まで」とされています。

 そして、業種や事業規模って業務に支障がでる場合もあるため、合理的な範囲での制限が可能であるという判例がでています。少し判例を見てみましょう。

  • 10人規模の運送業で、「3日前までに請求しなければならない」の制限は法に反しない【大阪地裁平成12.9.1事件】
  • 前々日までに請求しなければならない規定は有効である【最高裁1小昭57.3.18事件】

 つまり、明らかに有給休暇の取得をしにくくするような程度の激しい制限は許されない、ということです。「取得の際には、30日前までに言わなければならない」旨の過酷な規程は、労働者の有給休暇取得を大幅に制限してしまう恐れがあるからです。

 そしてもう一度言いますが、上にあげた裁判例のような制限であっても、有給休暇の取得を許されない訳ではないのです。

 あくまで、定める手続きを踏まなかったことの責任を追及されるだけなのです。

この事例に対する対策を考えてみよう

 例えば、あなたの社内に「30日前に請求しなければ取得を認めない」旨の手続き規程があったとします。

 そのような場合でも、例えば一週間前くらいに請求をしてみてください。そこで認められるか否かで後の対応を考えます。具体的に以下で説明していきましょう。

取得が認められた場合

 その会社では、「30日前」条項は、有って無いような条項となり下がっていますね。

 そのような骨抜き条項に必要以上に心配をするのはやめましょう。常識の範囲内で(前もって予定が分かっているなら早めに取得申請。風邪等なら、前日か当日の早朝までに低姿勢で申請)請求していきましょう。

 そして、上司等に注意を受けたら、「会社の規程が有給休暇取得の大きな妨げになっている」旨を低姿勢で伝え、改善をお願いしてみます。対決姿勢は厳禁です。

 社内に意見箱みたいなものがあるならば、ここでも対決姿勢を一切表に出さないで、家庭内の致し方ない事情等を引き合いに出すなどして、感情に訴えるつもりで労務管理担当者に冷静に規程改善のお願いをしてみます。

 目標は、30日よりも短い期間で取得が認められるようになること。そうなれば、現状よりもグッと取得が容易になりますね。

取得が認められなかった場合(もしくは期間短縮の願いが認められなかった場合)

 この場合、会社は有給休暇を取得されるのを嫌がっている可能性があります。

 つまり、この手続き条項のことで従業員が法律や裁判例を盾に反論をすると、当該従業員に何かしらの不利益が降りかかる可能性がある、ということです。

 これは決して大げさな話ではありません。有給休暇の権利を請求することで上司・同僚から無言・有言の圧力を受け、退職に追い込まれた従業員の例も複数見ています。

 この場合、とるべき道は主に3つです。

在職しながら監督署を頼る

 「30日前に請求しなければ有給休暇が認められない」現状を証拠に収め、しかるべき行政機関(労働基準監督署)に「申告」をし、指導をしてもらうことです。

 とてもうまくいきそうですが、残念ながら監督署が動いてくれる可能性は極めて低いです。ひどい場合、申告すらさせてもらえず、相談だけで終わってしまう可能性があります。断固とした決意で申告する決意が必要ですが、監督署が動いてくれなければ決意して申告した意味がありません。また、指導後、社内で陰湿な嫌がらせが始まる危険もあります。

転職(退職)時に一斉消化→現状を監督署に申告

 有給休暇を認めないような会社に見切りをつけ、退職時に時効で消滅してない分の有給休暇を一斉消化する。そして在職中に「30日前に請求しなければ有給休暇が認められない」現状を証拠に収め、しかるべき行政機関(労働基準監督署)に「申告」をし、指導をしてもらうことです。

 ※ 誰でも可能!有給休暇を全部消化し退職するための7ステップ 参照

 転職しなければならない労力はありますが、思い切った行動をとることができます。

従業員同士で団結して、強い姿勢で規程の改善を促す

 社内で従業員同士が団結をして、強い姿勢で権利を主張する。

 団結が成功すれば、有給休暇に限らず他の問題の改善も主張できるメリットがあります。団結が難しいなら、外部労働組合に個人加入することが現実的な選択肢となるでしょう。

 有給休暇を認めないような経営者は、多くの場合労働組合も大嫌いです。団結によって一時激しい攻撃にさらされる可能性があります。その覚悟と準備が必要です。そのような事態に陥っても、労働委員会をうまく利用して、合法的な基準をよりどころに経営者の違法な行為を封じていく必要があります。