トップページ年次有給休暇の労働基準法違反に対抗する!>有給休暇の申請期限の設定は、何日前までの設定が許される?

有給休暇の申請期限の設定は、何日前までの設定が許される?

労働者が有給休暇を申請もしくは消化する場合に、意外な足かせとなるのが「有給休暇の申請期限」の縛りです。

この申請期限、会社によってバラバラとなっています。会社によっては、そのような期限について明確に定めていないところもあります。一方では、有給休暇を申請する期限を就業規則等で定めているところもあります。

申請期限が「前日までに申請すること」程度ならいいのですが、ケースによっては「一週間前までに」とか「一か月前までに」と規定されているところもあります。加えて、「申請期限より後の申請については認めない」と定めてある社内規程もちらほら見られます。

有給休暇の申請期限が定めてあることは、労働者にとっては足かせ以外の何物でもないのです。よって私たちは、申請期限についての行政・司法機関の判断例を知って、自社の申請期限の是非を考える必要があります。

当ページでは、有給休暇の申請期限について、事例を用い皆さまと共に考えていきたいと思います。

事例検証~「一週間前までに申請せよ」という期限設定は、制限が著しく労働者にとって不利なものでない限り適法

Aさんは有給休暇取得希望日の前日に取得の申請をした。しかしB社では就業規則に「年次有給休暇の申請は希望日の一週間前までにしなければならない」という規程があり、そのために申請は認められなかった。就業規則のこのような申請期限の制限は、労働基準法に違反するものではないのか?

 ・・・このような就業規則上の制限は、多くの会社で見受けられます。

 我々労働者にとって、このような規程の存在が有給休暇の取得にブレーキをかけるものであることは、多くの方が感じていることかもしれません。ではこのような制限の違法性を考えていきましょう。

就業規則上の制限は、その制限があまりに労働者にとって不利なものでない限りは違法とは言えない。時季変更権の行使をするか否かを判断するための時間的余裕を確保するための制限として度を越えた場合に合理性のないものとなる。

 結論を申しましょう。就業規則上の制限は、その制限があまりに労働者にとって不利なものでない限りは違法とは言えません。しかし就業規則に定めた制限に抵触するからといって有給休暇が全く認められない、という結論は妥当ではありません。

 労働者には、自分の望む日に有給休暇を請求し取得する権利(時季指定権)があります。逆に使用者(会社)には、労働者が希望した日に業務を運営する上で都合が悪い場合に他の日に変更させる権利(時季変更権)があります。

※両権利については、会社の時季変更権の濫用に対抗するための「これだけ!」知識 を参照。

 裁判例は、就業規則上の制限は、「時季変更権の行使について時間的余裕を与えるものであり、代替要員の確保を容易にするものであり、会社が時季変更権の行使をなるべくしないための配慮からなされた制限である場合に、合理的な制限である」という考えを示しました。

 例えば、代替要員の確保にさほどの労力と時間がかからず、ゆえに時季変更権の行使について考える時間が一日くらいあれば十分であるならば、就業規則上の制限は、「前日までに申請せよ」という内容に近くなければ合理性が無いことになります。にも関わらず、「一週間前までに申請せよ。でなければ有給休暇は認めない」という姿勢には明らかに合理的な理由もなく、有給休暇の取得を制限していると判断されても仕方がありません。

 代替要員の確保に要する日数は、各事業所によって違います。ある事業所では、各労働者が高い専門性を有し、かつ人的な余裕が無くて、代替要員を確保するのに3日かかるかもしれません。ある事業所では、当日に労働者が欠勤しても職長等がライン作業に代わりに入ることで事業が回ってしまうかもしれません。

 前者の事業所では、就業規則上の制限は「3日前までに」に近い規程のものが合理的なものとなるでしょう。後者では「事前に遅滞なく」に近い規程が合理的なものとなるでしょう。しかし突発的な人員不足などの緊急事態も想定して、多くの会社では少し長めの制限を採用しています。

就業規則上の制限の合理性は、各事業所によって異なる。よってあなたの会社での代替要員確保の実際の難易度に合わせて、就業規則の制限の合理性を考える。

 冒頭の事例では、「一週間前までに」という制限がなされています。

 その会社での代替要員の確保の現実を見ます。その会社では、代わりの労働者をラインに配置するまでに一週間という時間を要するのか?そのような視点で合理性を考えていきます。

 1週間前にシフトが決まってしまうような勤務形式の会社であれば、合理的な規程だと反論されやすいでしょう。その理論が独り歩きすると、シフトが2週間前、3週間前までに決まってしまうような会社では、有給休暇の申請を「2週間前までに」という規程が合理的だと主張されるかもしれません。それは明らかに行き過ぎだと考えられます。シフトが決まった後でも、代替要員の確保は決して不可能なことではないからです。

 よってシフト制の存在・シフトの決定時期等の表面上の要素ではなく、あくまであなたの会社の現実の代替要員の確保の容易さ困難さに目を向けるべきです。そうして初めて、あなたの会社の就業規則上の合理性の有無が判断できるのです。

この事例に対する具体的な対策とは?

 就業規則の制限がネックになり有給休暇の取得ができない場合は、規程の撤廃または改善等を会社側に働きかけることになります。

 しかし労働者が就業規則の改善を要求したところで、使用者がその要求を採り入れてくれるでしょうか?残念ながらほとんど期待はできません。むしろ従業員としての地位を失うなどの大変危険な結果を招くことになります。

 就業規則の中で有給休暇の取得に過酷な条件を付ける会社は、有給休暇そのものを与えたくない、認めたくない、と考えているものです。有給休暇は会社の承認如何にかかわらず当然に労働者に認められるものであると労働基準法に定めてあるのですが、それでも与えないというのは、法を守る意識が著しく欠けている会社だと判断できます。

 戦う労働者に、「団結力のある社内労働組合」もしくは「積極的に活動してくれる外部労働組合」の後押しが無い限り、正面きっての規程をめぐる戦いに勝ち目はほとんどありません。

 この規程を改善させ、有給休暇を自由に使うことができる健全な職場にするためには、大きく分けて「完全勝利を目指さない」・「時間をかけてもいいので徹底的に根本から改善していく」という二つの方法を実行することが有効でしょう。

完全勝利を目指さないことを前提にした戦い方

「規程の改善」という中間目標に縛られるな。「有給休暇を望む時に取得できるようにする」という最終目的を忘れるな。

 戦いの最終目的を、「就業規則の規程の改善」から「有給休暇の取得」へとシフトします。

 「それでは根本的な解決にならないではないか」という指摘もあるかもしれません。しかし考えてみてください。あなたの目的とは、「有給休暇を自分の望む時に使うこと」であったはずです。就業規則の規程を変えさせることは、目的を達成するための中間目標にすぎません。

 労働法を守る意識の低い会社に就業規則の改定をさせることは、不可能に近い中間目標だと容易に想像できます。中間目標に縛られる必要はありません。目的を達成するために、柔軟に道筋を変える必要があります。専制的な使用者であっても、間接的で穏健な態度で改善を望めば、事態は変わる可能性があります。

良好な関係から信頼関係に発展させ、そこではじめて制限の緩和を提案する。間接的な戦略で時間をかけて目的を達成する。

 会社の定める申請期限を目一杯に使い、望む時期に取得する前準備と根回しをしていくのが、最も穏健な対策でしょう。しかしこれでは、突発的な用事の場合に有給休暇を使うことはできません。

 そこで、使用者との日頃の人間関係を良好に保ち、関係を損ねない範囲で意見要望をしていきます。その意見は、会社にとって建設的で使用者にとっても有益なものである必要があります。そのような意見(一般には、「改善案」などと言われています)を重ね、使用者との良好な関係の上に信頼の気持ちもプラスさせます。そしてその段階に至って初めて、有給休暇の申請期限の緩和を提案するのです。

 その時の緩和案は、労働者の望む究極案であってはいけません。現行の制限と究極案の真ん中くらいをベストの落とし所とするのです。そうなれば使用者も受け入れやすくなり、労働者にとっても申請が一段としやすくなります。

 建設的な意見を数多く提案・実行し使用者の利益を増幅さえ、それゆえに生まれた信頼関係を武器にして本当に達成したかった有給休暇の申請期限の制限を少し緩めてもらう・・・・遠回り的なこの戦略で得る成果は、最も望ましい成果に比べたら少ないかもしれません。しかし例えば「1週間前までに」という制限が、「3日前までに」という制限に変われば、その分有給休暇を取得できる機会は確実に増えるのです。それは最終目的をほぼ達成したと言えないでしょうか?

時間と下準備をもとに周到に地盤を固め、徹底的に改善していく戦い方

 規程の徹底的な改善のためには、労働者の団結がどうしても必要となります。労働者からの意見を「くちごたえ・反乱」としか捉えないような使用者であれば、団結なくして意見を言うことは自殺行為に等しい行動となります。完全勝利を目指さない戦い方をしても、この手の使用者には意味がないでしょう。

 今まで私が見てきた数多くの専制的な使用者は、有給休暇という制度が大嫌い、という特徴を備えていました。その思想は、労働者が休暇を取得する時に如実に現れるのです。時季変更権を濫用する・取得の際に理由を尋問し、内容いかんによっては認めない・取得する時に後を引くような嫌味を言う・マイナス査定をする、などの違法な行為が行われます。そして、その結果として就業規則に申請期限についての過酷な制限が盛り込まれるのです。

 「3日前までに」程度の制限であれば、その会社の有給休暇に対する姿勢は、一般的なものだと考えられます。臨時窮迫な理由がある時は、使用者の恩恵により有給休暇として取り扱ってくれることもあるでしょう。しかし1週間を超えるような制限を設定している使用者に意見を言おうとする場合は、完全勝利を目指さない戦略でいくか、事前の周到な準備をするべきです。

「水面下での準備」と「ゆさぶり」から始める。

 まずは水面下での同志集めとゆさぶり攻撃です。有給休暇について闘争が起きた時に、表だって立ち上がる人間、または立ち上がらないが内面で味方として見守ってくれる人間を集めます。内通者が出ることを防ぐため、これらの人間は本当に信頼できる人間を選ぶべきでしょう。

 そして会社の処遇に不満を持ち辞めていった人間を探し、コンタクトをとり、有給休暇の取得の現状について労働基準監督署に申告をしてもらいます。

 労働基準監督署が申告後に指導や臨検をしてくれるかどうかはわかりません。しかし「有給休暇をとらせない」「残業代を支払わない」「奴隷的拘束のもとで特定の労働者を働かせている」といった事例に対しては、積極的に動いてくれる場合があります。

 たとえ申告が不発に終わっても、表だった闘争の後に違法な行為が行われた場合、団結した労働者が複数で再度申告をするときに大きな意味を持ちます。

 もし会社を辞めた元労働者による申告が実現できない場合は、ある程度団結の目安がついた後に在職中の労働者が複数かつ匿名で申告をします。

 指導や臨検が入れば、専制的な使用者は必ず反応します。犯人捜し、朝礼での脅迫、文書での威圧、などです。もし使用者が有給休暇の取得制限に対して緩和をしたのならば、すぐさま改善された制限いっぱいで休暇を取得してみます。そこでの使用者の反応も見ておきましょう。

立ち上がった後は一気に。行政・司法機関も味方につけ、完全包囲でたたみかけるように。

 相変わらず取得の際に何かしらのマイナスな行動をとり取得を阻もうとするのならば、いよいよ立ち上がる時です。

 まず監督署に再度の申告をします。組合を立ち上げることを監督署に言うのは控えます。そして間を開けず会社で結成大会を開き結成通告をし、同時に「団体交渉」を申し入れ、その中で有給休暇を当然にとらせることを要求します。同時に、組合員に対する嫌がらせに対しては、不当労働行為があったとして労働委員会に即座に救済申し立てをする旨を伝えます。

 一連の流れは、水門を大きく開けたダムのごとく、激しい勢いで次々と行っていきます。それは、使用者による違法な反応を誘発するでしょう。そこで委縮してはいけません。したたかに違法な反応を逆手に取り「弱み」とし、行政・司法機関という権力を味方につけ、完全包囲のもとに有無を言わせず改善させるのです。

 この戦い方は、労働者側に大きな痛みを伴わせます。しかし、社内で「俺が法律だ」的な態度で労働者に接している使用者とは、これくらいのことをしなければなかなか対等に戦うことはできません。