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「有給休暇の理由」講座の番外編~自由利用の例外を知ろう!

年次有給休暇を取得する時の理由は、一部の例外を除いて基本的にどのようなものでもいいとされています。その点については、会社に取得妨害をさせないための「有給休暇の理由」講座 でも述べました。

しかしこのページでは、有給休暇自由利用の例外について、改めて説明したいと思います。例外が適用されてしまう理由とは、以下の3つに該当する場合です。

  • 有給休暇の権利を濫用して使う場合
  • 労働の義務が無い日に年次有給休暇行使を利用しようとする場合
  • ストライキなどの団体行動に年次有給休暇を利用しようとする場合

自由利用と思い込み会社に戦いを挑んで、「例外」を盾にやり込められることがないように、ここでしっかりと知識を加えておきましょう。

当ページでは、以上で挙げた3つの場合ごとに、詳しく説明をしていきたいと思います。

自由利用の例外(1):有給休暇の権利を濫用して使う場合

 有給休暇の権利を濫用して、その行為が無効となった戦いと裁判例があります。見てみましょう。

『タクシー運転手が夜間常務を嫌悪し、その拒否のために年休指定をすることは権利の濫用であり、無効』【日本交通事件】

 いくら有給休暇が労働者に当然に認められた権利とは言え、職場での嫌なことの回避のための手段として有給休暇を使うことは、民法の権利濫用法理に照らして無効だ、ということです。

 正直この裁判例、夜間業務を嫌悪してそれを拒否するために有給休暇を使った、など内面的なことなので、黙ってればいいのに・・と思ってしまいそうですね。裁判所は権利のバランスにシビアなのです。使用者権の濫用を許さない代わりに、労働者の権利の濫用も許さないのです。

自由利用の例外(2):労働の義務が無い日に年次有給休暇行使を利用しようとする場合

 年次有給休暇を使うには、使う日が「労働日」である必要があります。「労働日」とは、労働する義務のある日になります。

 労働する義務のある日とは、どういった日でしょうか?分かりやすく言えば、会社の出勤カレンダーなどで記載されている日だと思えばいいでしょう。

 逆に、労働する義務のない日とは、どういう日でしょうか?

  • 会社カレンダー上の、休日や非番の日
  • 育児・介護休業の期間、子の看護休暇の期間
  • 産前産後の休業期間

 労働義務のない日は、年次有給休暇の法律上の性質から、有給休暇の効力が生じる余地がないとされています。

自由利用の例外(3):ストライキなどの団体行動に年次有給休暇を利用しようとする場合

ストライキなどの団体行動に年次有給休暇の利用が認められない理屈

 有給休暇の行使に当たっては、労働者の側には「時季指定権」(いつ有給休暇を利用するかを指定する権利)が認められます。そして使用者側にも「時季変更権」(有給休暇の取得時期を変更してもらう権利)が認められます。

 しかしストライキなどの労働闘争・団体行動においては、使用者側に時季変更権など認められません。「ストライキをこの時期にしてほしい」などという権利は使用者にはないのです。

 よってストライキなどの団体行動に有給休暇を使用することを認めることは、時季変更権の行使できない有給休暇の行使方法を認めたことになってしまいます。時季変更権を行使できることは使用者の正当な権利であり、それが認められない団体行動時の有給休暇行使は、有給休暇ではない、というのが理屈なのです。

 また、ストライキなどの団体行動は、労働者がストライキ中の無賃金というリスクをおかして、使用者の事業の運営を妨げ、要求を通す、という平等の立場を前提として認められます。

 そうであるのに、ストライキで使用者の事業の運営を妨げることができる上に、そのうえストライキ中に有給休暇が認められ賃金までもらえるのでは、使用者にとって不平等であり、ストライキ中のノーワーク・ノーペイの原則に反する、という理屈が成り立ちます。

 制度の趣旨による”有給休暇自由利用の原則の例外”とは、これらの考え方から導きだされるのです。

裁判例:林野庁白石営林署事件

裁判になった背景

 A田(仮称)はB社(仮称)の職員であった。B社にはC労働組合(以後「C組合」)があり、A田はその組合員であった。

 C組合は、B社の許可を得ず勤務時間中に組合大会を開催し、それについてB社から処分を受けた。その処遇について不服であったC組合は抗議活動を活発化させ、抗議活動は、D分会を中心に展開された。

 A田はD分会における組合活動に参加するため、2日分の有給休暇を請求した。しかしB社はその請求を不承認とし、賃金をカットした。

 A田は裁判を起こし、第1審で勝訴。しかしB社が控訴した。しかし第2審もA田が勝訴。そこでB社は最高裁に上告をした。しかし上告審でもA田が勝訴した。

上告審判決文における重要箇所

『年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である。』

『いわゆる一斉休暇闘争とは、これを、労働者がその所属の事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱するものと解するときは、その実質は、年次休暇に名を借りた同盟罷業にほかならない。したがって、その形式のいかんにかかわらず、本来の年次休暇権の行使ではないのであるから、これに対する使用者の時季変更権の行使もありえず、一斉休暇の名の下に同盟罷業に入った労働者の全部について、賃金請求権が発生しないことになるのである。』

『・・・他の事業場における争議行為に休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら当該年次有給休暇の成否に影響するところはない。』

『・・・時季変更権の行使要件である「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべきのもであるからである。』

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