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会社による一方的な「有給休暇の買取」は許されない!

年次有給休暇を取得した年が終わるまでに取得休暇を消化できなかった場合、消化できなかった有給休暇を会社は「買取」できるのでしょうか?

「買取」については、買取行為が労働者の自由意思に反し、法定分ですら強制的に買取処理がなされた場合などに問題となってきます。このページでは、会社による未消化分の年次有給休暇の「買取」の是非について詳しく説明していきましょう。

「買取」で検索する人は、「会社から一方的に有給休暇の買取を通知されて、有給休暇の日数が減らされた人」と、「社長・上司から従業員の有給休暇を買取処理するよう命じられた人」の2通りの立場の人がいると思います。このページでは、それらの人の疑問にこたえるように説明していきます。

「買取」に関する知識を仕入れ、違法な買取行為によってワークライフバランスを実現する重要権利たる有給休暇取得の権利を侵害されないようにしましょう。

労働基準法の有給休暇の制度趣旨から、「買取」は原則禁止

労働局通達でもはっきりと禁じられている会社による「買取」

 年次有給休暇とは、労働者が取得して休暇を取ることで、初めて法律の求める趣旨を満たすものです。よって、年次有給休暇の買取の予約をして有給休暇の取得を抑制したり、請求された有給休暇を与えないことは法律の趣旨に反することになり、原則禁止となります。

 ここで労働局による通達【昭30・11・30基収※3000号】を見てみましょう。※基収(労働基準局長が疑義に応えて発する通達のこと)

『年次有給休暇の買上げ(※買取のこと)の予約をし、これに基づいて本条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、本条(労働基準法第39条)違反である。』

相談を受けた実例

 以下の例は、上の行政通達に抵触する禁止行為です。有給休暇は使ってはじめて意味のあるもの、という視点で考えれば納得出来ます。

  • ある時上司が、「君がまだ使っていない有給休暇の半分を買い取る」と通知してきた。12日あったのに、買い取り分日数分の6日はいきなり減らされてしまった。
  • 有給休暇を請求したら、上司に「その有給日は当社で買い取るので、取得は認めない」と言われた。

 一見買上げてもらうと、もらえるお金が増えていいように感じます。しかし、有給休暇の趣旨は、有給休暇による心身のリフレッシュです。買上げによって、リフレッシュは成し得ません。

 前者は、法で定められた日数分を、一方的に買い取る行為。当然許されません。

 後者は、買取によって、有給休暇の取得を抑制しているので、また許されません。たとえ買取対象日数が法で定められた日数を超えた日数であったとしても、有給休暇の抑制している点で、許されないのです。

「消滅してしまった年次有給休暇」と「法律で定められた基準以上の付与分」の買取はOK

「消滅してしまった年次有給休暇」の買上げ

 消滅した年次有給休暇分を買い上げる行為は許されています。

 年次有給休暇は、発生から2年で取得する権利が消滅します。その「2年たって消滅した分」を会社が事後に買い上げることは問題ない、という「買上げ禁止」の例外の一例です。

※ 有給休暇の時効消滅については、年次有給休暇の「繰越し」はできるのか? 参照。

 「事後に」が重要です。会社が事前に有給休暇の取得を抑制する意図に基づいて、有給休暇の買上げを予約することは、通達で労働基準法違反である、と示されています。

 例えば、「未消化で年次有給休暇が消滅しても、買い上げる」などとに労働者に宣伝して、年次有給休暇の取得を抑制する行為は好ましくないと言えるでしょう。

 労働者の都合で退職する場合、退職の日に未消化となった年次有給休暇を会社が恩恵的に買い上げる行為は、差支えないとされます。

「法律で定められた基準以上の付与分」の買上げ

 労働基準法で定められた「最低限与えるべき日数」以上の日数を、会社が買い上げることは、基本的に問題がないと言われています。

 つまり、法で定められた条件より好待遇な部分について買い取りすること、かつその行為をすることが有給休暇の取得の抑制を狙ったものでないこと、の二つを条件を満たせば、会社による「買取」行為ということですね。

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