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有給休暇の付与要件~「全労働日の八割以上出勤」とは?

 年次有給休暇は、労働基準法39条に書いてある通り、雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、法に定める所定の日数が付与されます。

 しかし実際には、「全労働日」の正確な意味というのは普段あまりなじみのない言葉ゆえ分かりにくいものです。また、会社で働く中で起こりうる普段と少し違った日を、全労働日に含んでいいかどうか、または出勤日としていいのかどうかも分かりづらいものです。

 また労働基準法等で定められた権利に基づく休暇も、8割以上出勤したかどうかの計算にあたり、どのように処理していいか判断に迷います。

 その分かりにくい点のすき間を突くようなトラブルも後を絶ちません。実際の相談の中で、出勤したものとして取り扱わなければならない休暇を会社の都合のいいように取り扱って欠勤とし、その結果として有給休暇が与えられない、という不利益を受けた労働者の方もいるのです。

 しかしあなたのケースが「全労働日の八割以上出勤」を満たしているかどうかは、以下で示す過程を経ると判断しやすくなり、付与されなかった場合に自分自身で確認することができるようになります。その手順を示しましょう。

 これら4つの過程をどのように行っていくのか?以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

1.「全労働日」の定義をはっきりと理解する

 あなたのケースが「全労働日の八割以上出勤」を満たしているかどうかを判断するために、まずは「全労働日」の内容をしっかりと理解しましょう。「全労働日」の定義については、行政通達と最高裁判所の裁判例で、その内容に触れたものがあります。

  • 「就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい」【基発・昭33・2・13】
  • 「一年の総歴日数のうち労働者が労働契約上労働義務を課せられている日数」【最高裁判・平4・2・18】

 分かりやすく言い換えましょう。あなたが会社からもらった、出勤日と休日が記載されたカレンダーなどを見て、出勤日とされている日が「労働日」となります。その「労働日」の総日数が「全労働日」となるのです。

 時折、暦の上での休日以外の日の総数を「全労働日」としてしまう間違いが見受けられます。あくまで会社が定めた出勤日が「労働日」であり、その総日数が「全労働日」となるのです。

 なぜ「全労働日」を正確に知る必要があるかといいますと、八割以上出勤したか否かの計算(以後「出勤率の計算」とします)にあたっての分母となるからです。ここで出勤率を計算するための数式を復習しておきましょう。

「出勤率を計算するための数式」の図
出勤率を計算するための数式

 全労働日を把握しさえすれば、あとは、労働日に出勤した日を数えてそれを分子に当てはめれば、あなたの出勤率は分かることになります。

 しかし実際には、分母(全労働日)として数えていいのか、または、分子(労働日に出勤した日数)に数えていいのか判断が難しい「日」または「出勤日」も出てきます。それが出勤率の計算を複雑なものにし、有給休暇付与に際して問題となるのです。あなたが出勤率を計算しようとこのページを見ているのも、判断に困る「日」があるから見ているのだと思われます。

 では、以後のステップでその点も踏まえて説明しましょう。

2.式の分母と分子に含ませるべきか分かりづらい日を処理するための前準備として、「全労働日か否か、出勤日とみなすか否か」の視点で、4つの場合に分類する

 上図の式の分母と分子に含ませていいかどうか分からない日を処理するためには、下の図を使って頭を整理することが有効です。

 つまり、有給休暇の出勤率算定の対象となる期間のすべての日を、下の分類表に当てはめつつ整理していくのです。

労働日か否か、出勤日か否かの分類表
労働日か否か、出勤日か否かの分類表

 会社カレンダーや就業規則等で出勤日とされた日で、かつ普通に出勤した日は、何の迷いもなく(1)に含まれると分かるでしょう。

 会社カレンダーや就業規則等で休日とされた日も、問題なく(4)に分類できます。

 しかし先ほども少し触れたように、災害で休日になってしまった日や、出産が長引いて産前産後の法定休業日を超えてしまった日等の「イレギュラー日」の扱いこそが困るのです。会社側がそれらの日を自己の都合のいいように扱い出勤率を計算することで、労働者が不当に不利益を受ける問題が出てくるのです。

 以下で、今まで多くの問題が起こり、それゆえ裁判や行政通達で判断が下された「イレギュラー日」を、【図表2】を見ながら整理していきましょう。あなたが今抱えている疑問を頭に入れながら読んでください。

3.労働基準法上問題となる様々なケースや法に基づく休暇・休日が、4つの分類のどこに分けられるかを知る

(1)に該当する場合(労働日として扱い、かつ、出勤したものとする日)

有給休暇を取得した日

労働者が正当な理由なく、使用者から就労を拒否された日

 労働者が正当な理由なく就労を拒否された日とは、どのような日でしょうか?

 分かりやすく言い換えれば、使用者の理由なき、もしくは明らかに違法な扱い・措置・辞令・命令等で、会社に出勤させてもらえなかった日(出勤できなかった日)が考えられます。具体的に示すならば、以下のような日が挙げられるでしょう。

  • 裁判所の判決により解雇が無効となった場合、解雇の辞令を受けて出勤しなくなった最初の労働日から、復職日直近の労働日までの日々
  • 労働委員会の救済命令を受けて会社が解雇の取り消しを行った場合

産前の休業が出産の遅れで6週間を超えた場合、その超えた日々

 労働基準法による産前産後の休業期間中は、出勤率の計算に当たっては当然出勤したものとして計算されます。

 しかし産前6週間の休業期間は、あくまで「出産予定日」を基本に設定されています。もし出産が予定日より遅れた場合は、当然6週間を超えて休むことになります。行政通達は、その超えた日についても、出勤率計算に際しては、「出勤」として取り扱うように示しました【基収・昭23・7・31】。

◇有給休暇Q&A ~出産の遅れで産前の休暇が6週間を超え、その日数分が欠勤扱いとなって今年分の有給休暇がもらえなかったが、それは違法ではないのか?参照。

(2)に該当する場合(労働日としては扱うが、出勤したものとしない日)

 (2)の日と判断されることは、出勤率計算にあたっては労働者にとって不利なことと言えるでしょう。よって、(2)に分類される日の特徴としては、休んだことについて労働者に何らかの帰責性(責められるべき点)が見受けられます。

分かりやすい例ですと、「正当とみなされない同盟罷業(ストライキ)その他の正当とみなされない争議行為で、労務の提供をしなかった日」が挙げられます。

(4)に該当する場合(労働日として扱わず、かつ出勤したものともしない日)

 裁判例・行政通達で具体的に指摘があったものを以下に挙げましょう。

  • 不可抗力による休日 ※後述
  • 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日 ※後述
  • 正当な同盟罷業(ストライキ)その他正当な争議行為により、労務の提供をしなかった日
  • 所定の休日に労働した日
  • 生理休暇を取った日
  • 慶弔休暇の日

不可抗力による休日

 「不可抗力」とは、天災事変・避けられない外的な犯罪行為等のことを指します。不可抗力による休日とは、これらの不可抗力により(就業場所の破壊やライフラインの断絶による操業不能等で)就労が不可能となった日々のことを言います。

使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日

 売上の減少にともなう生産調整による休業等のことを指します。これらの日々は、労働者が働く意思があっても会社側の都合で拒否をしているわけであるから、全労働日に含め、かつ出勤したことにする、という結論を招きそうです。

 しかしそこで、使用者と労働者の衡平の観点から修正が入り、通達は、これらの日々は「全労働日に含まず、かつ出勤した日ともしない」という判断を示しました。

(3)に該当する場合(労働日としては扱わないが、出勤したものとする日)

 (3)に該当する日はそもそも存在しません。よって、このケースは考えなくてよいでしょう。そのため、分類表の分類数は、3ということになります。

4.あなたのケースの中で分かりにくい日が、4つの場合分けの中でどこに入るかを判断し、そのうえで出勤率を計算する

 ここまで見てきたら、後は自分のケースをもう一度見直します。

 明確に分類できるものから分けていき、最後に分かりにくいものを分類を参考にしながら分けていきます。

 どうしても分からないものは、労働基準監督署の総合労働相談所で尋ねるといいでしょう。労働法に明るい相談員に、匿名で無料で相談できます。

 どのように扱ってよいか分からない日がある場合、その日をあなたにとって都合のいい分類で分けた場合と、都合の悪い分類で分けた場合の二つのパターンで計算します。分類の選択を変えることで出勤率が8割を上下するような方は、万全を期すためにも相談所に行って確認をし、その後会社に質問をしましょう。