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会社の時季変更権の濫用に対抗するための「これだけ!」知識

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会社が時季変更権を行使するためには、様々な制約があります。しかし現状では、労働者に有給休暇を取らせないための方便に使われている現状があります。

このページは、ブラック企業による時季変更権濫用をさせないために書いたものです。よって最初に、時季変更権にかかわる知識(時季指定権・計画年休)も説明します。前提となる知識がないと、いざブラック企業が難癖をつけてきたときに、対応が難しくなるからです。

そして、時季変更権と時季指定権の各々の知識を詳説し、問題となる点、わかりにくい点を具体的に説明します。

ブラック企業は、労働者が知識がないものとたかをくくって、筋の通らぬ詭弁を並べ、ごまかしてきます。私たちは先んじて知識を得て、相手の詭弁を粉砕しましょう。

「時季指定権・時季変更権・計画年休」の全体像

 有給休暇を使う時の特定は、労働者・使用者ともに権利があります。労働者には、使う日時を特定して請求する「時季指定権」。使用者には、指定された日時を変更することを持ちかける「時季変更権」です。

 ここで間違ってほしくないのですが、使用者に時季変更権があるからといって、使用者に有給休暇取得の承認権があるわけではありません。あくまで使用者は「他の日にしてくれ」と労働者に持ちかけることが出来るだけです。

 事業の正常な運営を妨げることがハタからみて明らかな場合に初めて、指定された日時をずらしてもらうことが出来るのです。そんな理由もないのに、ただ有給を使われたくないという理由だけで時季変更権を使用することは、権利濫用で認められません。

 ・・計画年休の制度は、労働組合を結成されている労働者の方に関係が深いでしょう。有給休暇の取得率を上げるための制度ですが、なかなか機能してないようです。

 有給休暇の5日を超える分について、労使協定で日時を決めて取得する、というものです。各人の自由な休暇利用のために、最低5日は残しておかねばなりません。

 この計画年休制度、大きな企業では結構頻繁に行われているようです。しかし、中小零細ではほとんど聞いたことがありません。

 ・・・このページでは、労働者の時季指定権・使用者の時季変更権について詳しく見ていきます。そして 労使協定による「計画年休」の基礎知識 で計画年休の仕組みを改めて説明します。

 まず労働者の時季指定権から見ていきましょう。

「労働者の時季指定権」おさえておきたい基礎知識

 労働者の皆さんには、使用者に有給休暇を使う日時を示して、取得請求することが出来ます。

 この場合、ハタから見て「事業の正常な運営を妨げる」ような理由がなければ、請求することによって有給休暇が成立します。当然、妨げるような理由もないのに、使用者が取得を認めないことなど出来ません。有給の取得を、使用者の承認にかからしめることは、法の趣旨からも不当な行為だと言えます。

 恐らく皆さんの会社には、「有給休暇の取得申請書」なるものが存在すると思います。その用紙には、取得請求する人名、取得する日時、取得する理由などを書く欄があると思います。

 申請用紙を見ていて思うかもしれません。「有給休暇申請の使い道は自由だから、理由なんて書かなくていいんじゃないの?」と。

 ここでもう一度 ◇年次有給休暇は自由に利用できるのが原則だ! を見てもらいたいのですが、使用者が時季変更権を使用するための判断材料として理由を聞くことは裁判上でも問題無いと判断されているのです。

 ですから、多くの会社の申請書には理由を書く欄があるのです。使用者に言わせると、「申請の際にいちいち本人に理由を聞く手間を省くため」という感じでしょうか?

 申請書に詳細な理由を書きたくない時は、大雑把に”家の用事”とかでいいと思います。そう書いておけば、時々申請の際に詳細に聞かれる事もあるかもしれませんが、毎回聞かれることもないでしょうから。

 ここで、会社生活上よく起こり得る注意点に触れてみたいと思います。

いついつまでに取得申請しなければならない、という社内規則は有効か?

 あなたの会社の規則にも、そのような定めがされているかもしれません。「指定日の3日前までに出すこと」なんて規則です。

 裁判例では、そのような取り決めは、合理的な内容である限り有効な定めだ、としています。さすがに、長期休暇でないたった一日だけの休みを、指定日の何カ月前までに出すよう規定することは無理があると思いますが・・・。

 この裁判例【此花電報電話局事件】は、労働者が朝に今日一日を有給休暇にしてくれ、と頼んだ事例です。そのような差し迫った事例で、直ちに時季変更権を行使することは不適法ではない、としました。

取得理由を厳しく問われることはおかしくないか?

 おかしいと思います。有給休暇は自由利用の原則があり、それを阻む不当な行為です。

 裁判例【此花電報電話局事件】では、使用者が理由を聞く事が出来る根拠は「時季変更権を行使する条件が整っている時、変更権行使を控えるかどうかの判断材料にする」のみです。他の裁判例【弘前電報電話局事件】では、休暇理由を聞いて時季変更権を行使するかどうか決めること自体が許されない、としているくらいです。

 厳しく理由を問い正す行為の元には、”有給休暇は承認制度”だという間違った考えが根底にあるのだと思います。

 もしあなたの会社が労働組合を組織しているなら、その点を妥協無く改善要求しましょう。また、労働組合がなくても、取得の際に毅然とした態度で臨むことを積み重ねていきましょう。聞かれるがままに応じていては、だんだんと態度がエスカレートしますから。

「使用者の時季変更権」おさえておきたい基礎知識

 労働者が日にちを指定して有給休暇の取得請求をしてくると、使用者はその日に有給休暇を取ることが「事業の正常な運営を妨げる自由が存在」する場合においては時季変更権を行使できます。

 時季変更権を行使しても、新たに使用者から有給休暇を与え直す必要はない、労働者の再度の申請行為を待っていればよい・・・という感じであります。

 事業の正常な運営を妨げる事由があればいい、と言うが、その事由は、客観的にみて明らかに存在しなければなりません。理由もないのに変更権を持ち出して有給休暇を不承認にすることは、権利の濫用にあたります。

 では、「事業の正常な運営を妨げる事由」とは、具体的にどんな内容なのか?などについて、一般的に問題になる点を少し見ていきましょう。

「事業の正常な運営を妨げる事由」とは?

 休暇を取得する労働者の有給休暇の取得日にするはずだった労働内容が、彼の属する部署・セクションの運営にとって不可欠であり、加えて代替要因を確保することが困難な状況がある場合。

 くだけて言うとこんな感じです。

 きっちり余り無くその日の労働者数の配分がなされている場合で、かつ有給申請が取得日の極めて間近であった場合は、「事業の正常な運営を妨げる事由」があるとみなされやすいです。

 しかしその場合であっても、使用者は代替要因の確保の努力をしなければなりません。その努力もしないで安易に時季変更権を行使することは許されないのです。

≪例≫

 Aさんが有給休暇を申請しました。しかし有給日に彼がする予定だった労働は、彼の属する部署が仕事を進める上で必要不可欠であった。なおかつその仕事は、ベテラン労働者の急な相次ぐ退職でAさんしかすることが出来ない。社内では誰も、その仕事を代わってすることが出来ない。その仕事は、その日にしないと大問題・・・。

 ・・・このような場合、使用者はAさんに「その日だけはマズイから、ちょっと他の日にしてくれないか・・?」と言えるのです。

 結論、「事業の正常な運営を妨げる事由」があるか否かは、微妙な判断でコロコロ変わります。各状況によって、落ち着く結果も変わるのです。

慢性的な人員不足を理由に、いたづらに時季変更権を発動できない!

 上で挙げた、Aさんの例をもう一度見てみましょう。

 上の例で会社が時季変更権を行使できる合理的な理由は、Aさん以外に誰も問題の仕事を出来なかった、という点です。それも、その仕事を出来るベテラン従業員が急に相次いで辞めてしまった、という背景があります。

 ここで考えてみましょう。ベテラン従業員が辞めてから、かなり期間が空いていたら?その間、会社は代替要員の確保のための、他の従業員への教育を怠っていたら?

 まったく教育も施さないで、「君以外にその仕事が出来ないから、休みは認めない」では、会社は代替要員の確保のために努力したとは言えません。Aさんは、この状況をネタに自分の好きな日に有給休暇が取れないことになります。

 ちょっと状況は違いますが、裁判例【西日本JRバス事件】は似たような状況での時季変更権を違法としています。慢性的な人員不足から、代替要員を確保することが常に困難であることを理由に幾度となく為された時季変更を違法と判断したのです。

 有給休暇を与えても正常に業務こなすことが出来るような環境づくりを常日頃からしておくのも、代替要員の確保の努力の一部とみなされるのです。

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