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見逃さない!支払われない有給休暇分未払い給与の請求方法

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『誰でも可能!有給休暇を全部消化し退職するための7ステップ『退職時に有給休暇消化を拒否された場合の実戦的反撃法!のプロセスを経たならば、おおよそ会社側は請求された有給休暇分の賃金を払うことでしょう。

しかし中には、そのプロセスを経ても支払いに応じない会社もあります。その場合は、自ら行動して支払うように求めないとなりません。

有給休暇の賃金を支払わないことは、労働基準法違反であるため、労働基準監督署に申告することが一般的な行動だと考えられています。しかし監督署が必ず動いてくれる保証などなく、その場合は自ら司法手続き等を駆使して請求していくことになります。

「なんだか難しそう・・」と考えるあなたのために、このページで請求の流れと具体的方法を紹介していきたいと思います。簡単・手軽ではありませんが、決して不可能なことではありません。

「会社に催促→労働基準監督署に相談→内容証明郵便で請求→労働基準監督署に申告」という、一般的な流れについて、自身の幾度かの経験をもとに、流れに沿って説明します。

会社に催促のあと、労働基準監督署に相談

会社に督促する

支払われているかの確認作業

 給与支払日に有給休暇取得分の賃金が払われているかを確認します。賃金締切日をまたいで有給休暇を取得消化した場合は、支払いが、当月と翌月に分かれるのが一般的です。

 在職中の労働者であれば、給料明細表を持参して給料計算を担当する部署(総務課・経理課など)に尋ねてみるといいでしょう。手違いがあっただけの可能性が高いからです。在職中の労働者に対する意図的な有給休暇未払い行為は、取得申請の際のトラブルがない限り頻繁に行われることではありません。

 支払いが翌月に渡る可能性がある場合は、当月分締切日までの有給休暇分が支払われているかを確認します。しっかりと支払われているならば、翌月の支払日まで待って、そこで残りの雄休暇分が支払われているかを再度確認します。最初の支払月に支払われているならば、おおよそ支払ってくれるでしょう。

督促

 もし給与支払日に有給休暇分が支払われていない場合は会社に問い合わせをします。問い合わせ方法は電話でもいいですが、通話内容は録音をしておきます。そこでの会社側の対応・態度によって、以後の請求手続きが平和的であるかそうでないかが予想できます。

 退職時に有給休暇を消化取得した場合を前提に、質問内容を説明しましょう。

 『給料日を迎えましたが、〇月○日に取得請求した○○日分相当の有給休暇賃金が支払われていません。』

 『速やかに支払いをお願いします。』

 このような通話だけで支払ってくれることはまずありませんが、監督署での相談事実を作り、かつとプレッシャーを与えるために当準備はしておきます。

労働基準監督署の総合相談センターに相談する

労働基準監督署に行き相談をし、相談した事実を作り、申告の布石を打つ

 有給休暇相当分の賃金が支払われていないことは、れっきとした労働基準法違反であります。よって、労働者の味方・労働基準監督官に助けてもらうことを多くの労働者は期待するでしょう。

 しかし監督官はそうやすやすと助けてくれません。会社の住所地の管轄労基署の窓口に行って監督官に相談しようとしても、監督官には相談させてくれません。まず受付窓口にいる総合労働相談員に相談することになります。

 監督官に助けてもらうためには、賃金未払いについて「申告書」を自ら作成し、それに必要記載事項を書いて監督官に提出する必要があります(これを「申告」という)。しかし相談員にかかると、申告することに待ったをかけられます。私は以下の言葉で水を差されました。

 『もう一度、会社側に支払いを促した方がいい。』

 『申告するということは、会社の経営者に刑事罰を与える重大なこと。できるだけ催促によって解決した方がいい。』

 このような言葉で待ったをかけられ申告を阻まれたらならば、『分かりました。もう一度、監督署に相談した事実を伝えて、期限を区切って催促します。しかし、今度こそ支払われなかったら、申告をします。』といってその場を後にします。そのようにしておけば、再度訪問した際に申告に難色を示されたら、『○月○日の相談時に、今度支払われなかったら申告します、といいましたよね。』と言って押し切りやすくなります。

 未払い発覚後に監督署に行く意義は、相談した事実を作ることと、次回の訪問時に申告をしやすくすることの2点にあります。

労働基準監督署に相談した事実を盛り込んで、内容証明郵便で支払いを促す

 労基署に相談後、間髪を入れず内容証明郵便にて支払い請求をします。文面には以下の内容を盛り込みます。

  • 労基署に相談してきたこと
  • 労基署において、今回の賃金未払いは労働基準法違反であると指摘されたこと
  • 賃金の支払い期限(○○日までに支払ってください、という文言)
  • 指定期日までに支払われない場合、労働基準監督署に申告する、などの法的手段を採るということ

 支払い無き場合は法的手段を採る、等の表現は、刑法上の「脅迫罪」にならないか、という心配は不要です。「脅迫罪」とは、他人を畏怖させる目的で、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告げて人を脅した時に成立するものであります。この場合、労働者は正当な権利の行使を目的として内容証明郵便にて会社側に告知しているだけであり、脅迫罪には当たらないことになります。

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 有給休暇分賃金未払いの戦い場合は、サービス残業等の関わる割増賃金請求の戦いの場合と違い、労働基準監督署に相談したことをほのめかし、かつ未払い分請求の内容証明郵便の文中にも、申告する可能性を示します。サービス残業等の関わる割増賃金請求の戦いの場合は、監督署に相談した事実を知らせると、会社側が監督署の立ち入り検査に備えた証拠隠滅を行う可能性があるため、相談した事実も告げず、やむを得ない場合については「法的手段」としか書きません。

 有給休暇分未払いの戦いにおいて勝敗を決する最も大きな証拠は、有給休暇を請求したことの事実を証明する書類であり、おおかたその手の書類は労働者の手元にあるからです(言い換えれば、請求したことの事実を証明する書面が手元に無い場合は、監督署に行ったことを秘匿する)。

支払指定日までの間、現時点で取りうる訴訟に向けた準備を進めていく

請求する金額をはっきりとさせる

 まず、未払いとなっている金額をはっきりとさせます。未払金額を算定の上、自分がいくら請求できるか(請求するか)を決定します。

 未払金額をはっきりとさせるためには、あなたが有給休暇を取得した際に支払われる一日当たりの金額を把握することが必要となります。その金額さえある程度正確に抑えたならば、あとは、あなたが請求時に持っていた有給休暇日数を金額に乗じます。

 一日当たりの金額を算出する方法を知りたい方は、未払い賃金請求の際にも役立つ!有給休暇の賃金計算方法を参照にしてください。

司法手続きを駆使した解決戦略を考える

 内容証明郵便で指定した日まで何もしないで待っていることはありませんので、ここで司法手続きを利用するうえでの解決の道筋・戦略を考えていきます。

 請求する金額ははっきりとさせてあるため、それをもとに手続きの選択をしていきます。各司法手続きには、長所と短所がありますので、まずそれを把握します。そのうえで手続きを選択し、選択した手続きの細かい部分を調べていきます。

 考えられる司法手続きは以下の手続きです。

  • 調停(給料支払調停)
  • 支払督促
  • 少額訴訟
  • 労働審判
  • 民事訴訟(請求金額によって簡易裁判所か地方裁判所かに分かれる)

各手続きの長所・短所を把握する

調停(給料支払調停)

 調停員が労働者と会社の間に入り、互いの主張を聞きつつ双方が納得できるを案を見つけ、そこで和解することでトラブルを解決する司法手続きです。双方納得のうえの合意であるため、調停成立後の義務の履行(会社の支払い)がスムーズに行われることが期待できます(訴訟では、勝訴しても判決に不服な相手方が意地を張り支払わない事態も発生する)。訴訟などの手荒な手段を用いることに抵抗がある方に適した司法手続きです。

 調停の最大の欠点は、申立てを受けた相手方に参加義務が無いことです。参加しなくても相手方が不利になることはありません(訴訟や労働審判では出席しなければ原告・申立人の主張が通ってしまう)。応じなくても不利になることはないため、会社側が出席したくないと考えれば、話し合いもできないままに調停が終了する事態に陥ります。

 有給休暇賃金未払いのトラブルにおける調停の場合、妥協点が見つけにくいことも、顕著な問題点となります。双方が納得しなければ調停は成立しないため、どちらか一方が納得しなければ、調停は成立しません。有給休暇賃金未払い事例では、労働者側に譲歩の余地はありません。支払ってもらうか否かであるからです。会社側が労働者から有給休暇の申請が無かったなどと反論して譲歩しなければ、話は平行線になってしまいます。よって調停においても事前の準備が重要となります。

支払督促
少額訴訟
労働審判
民事訴訟(請求金額によって簡易裁判所か地方裁判所かに分かれる)

解決戦略考察

 複数ある手続きの中から一つを選ぶには、(1)自身の能力・資質で進行可能か否か(2)使える時間内で収まる手続きであるか否か、の判断基準が参考となります。

 「あの会社には顔なじみの人も多く、訴訟のような手荒い真似はしたくない。話し合いで済ましたい」と考える人ならば、選ぶことができる手続きは調停のみとなります。

 「泣き寝入りで終わるのは嫌だ。何かしらの行動で一矢報いたい。しかし早く終わらせたい」と考える人ならば、選ぶ手続きは支払督促・少額訴訟・労働審判となるでしょう。

 「文章を書くことは苦手ではない。じっくりと取り組んで戦いたい」と考える人であれば、民事訴訟を含めたすべての手続きの中から選ぶことができます。

 誤解を受ける可能性があるので触れておきますが、上記手続きの中から一つしか選ぶことができないなどということは決してありません。己の目的などに合わせて、複数を組み合わせることになるのが一般的です。

 例)調停に相手が出席してこなかった→相手が参加しないとこちらが有利となる少額訴訟を行う

請求の際に必要となる証拠書類の整理

 支払い期限までに、法的手段決行時に必要となる書類を整理しておきましょう。有給休暇請求の場合の証拠は(1)有給休暇が発生していることを証明する書類、(2)取得申請したことを証明する書類、(3)有給休暇分の賃金が支払われていないことを証明する書類、(4)有給休暇取得時に支払われる賃金額を証明する書類、の4つに大きく分類されます。各種類ごとに、最低一つは証拠書類をそろえたいところです。各種類ごとに、複数枚あればなおよいのですが、そこまでそろえられるのは稀です。必要になると予想される証拠書類は以下のものが挙げられます。

 必要になると予想される証拠書類は以下のものが挙げられます。

  • 労働契約書
  • 採用通知書
  • 有給休暇取得申請書の労働者控
  • 有給休暇の取得を請求した内容証明郵便
  • 有給休暇の取得請求の際、上司と話した音声記録とその反訳書
  • 給料明細表
  • 在職中給与が振り込まれていた銀行通帳

 これらの証拠書類について、手元にあるものはファイル等に入れてしっかりと保管しておきます。手元にすぐに見当たらないものは、なるべく探してみます(上記書類がほとんどなくてもすぐにあきらめないこと)。

 証拠書類の中で、準備に最も時間がかかるものは、音声記録を文字起こしした反訳書です。もし訴訟を含めた法的手段をとることを考えている方は、反訳書の作成から取り組むのがよいでしょう。

 上記4種類の分類を用いて、考えられる証拠書類を仕訳けてみましょう。

(1)有給休暇が発生していることを証明する書類

  • 労働契約書
  • 採用通知書

(2)取得申請したことを証明する書類

  • 有給休暇取得申請書の労働者控
  • 有給休暇の取得を請求した内容証明郵便
  • 有給休暇の取得請求の際、上司と話した音声記録とその反訳書

(3)有給休暇分の賃金が支払われていないことを証明する書類

  • 労働契約書
  • 在職中給与が振り込まれていた銀行通帳

(4)有給休暇取得時に支払われる賃金額を証明する書類

  • 給料明細表
  • 労働条件通知書
  • 労働契約書

労働基準監督署に申告する

「申告書」の作成~自分で申告書を作る

 申告書の作成は、一般的にパソコンを使って行います。以前のように手書きで作成するよりも、便利で作りやすくなりました。

 決められた書き方が定められているわけではありませんが、一定の書き方に沿って作成した方が楽に作ることができます。下の画像とPDFファイルは、以前私が未払いの有給休暇賃金を請求したときのものです。

是正申告書の作成例の図

 PDFファイルはこちら。コピー等のうえご使用ください。

冒頭において書くこと

申告者

 ここでは、申告者の氏名・郵便番号・住所を記載します。

違反者

 ここでは、違反者の経営している会社の商号・郵便番号・住所と、違反者の氏名・会社における地位を記載します。

 有給休暇分賃金未払いの場合、例え有給休暇を拒否した直接の実行者が総務・人事・経理部署の人間であっても、支払わなかったことについての最終的な責任者は、その会社の責任者たる代表取締役であるため、その氏名を書くのです。

冒頭の序文

 ここの文章にも、決まった形式はありません。しかし、誰が、労働基準法第104条に基づき、誰の労働基準法第39条・21条違反について申告するのか、については必ず記載します。

「申告者」・「違反者」の欄

 冒頭において、氏名・住所は記載した為、ここでは申告者・違反者の簡単な肩書きなどを記載します。

 申告者については、入社時期・職種・月額給与を、違反者については、経営している会社名・何を業としている会社か、について触れておきます。両者とも、軽く触れる程度でいいでしょう。

「違反事実」の欄

 ここには、違反の事実について詳しく書きます。裁判を起こす際に提出する訴状おいて、「請求の原因(理由)」に該当する部分です。

 申告書の冒頭において労働基準法第39条違反があったと書いたので、事の経緯を書いていきます。

「申し立てる内容について」の欄

 ここには、監督官に対する要望(何をしてもらいたいか)を書きます。

 例では、「一連の違反者の行為は、労働基準法第39条に違反する。よって指導・是正勧告等の必要な措置をとっていただくことを申し立てる。」と書いてあります。一般的に「○○条違反だから、○○等の必要な措置をしていただきたく申し立てる」という形が多いようです。

 インターネット上の文例では、より具体的で細かい要望を盛り込んであるものも見受けられます。しかし申告後に監督署に問い合わせをすることもできるため(具体的なことはあまり教えてくれない)、ここで細かい要望を書くことは必ずしも必要ではないでしょう。

「添付書類(証拠書類)」の欄

 先ほど触れましたが、今手元にある証拠となりうる書類を出し惜しみなく提出します。

 裁判や労働審判においては、証拠として添付する書類や物については「証拠説明書」という書面を別途作成して提出しますが、労基署に申告する場合は不要です。それは、中立な立場で双方の主張・立証をもとに法的判断をする裁判所と、監督官庁として調査・指導等をする労基署という立場の違いによるものです。

 労基署は、当書面と添付書類を資料として、自ら会社に調査に赴き、もしくは提出書類を示してそれを調査するなどして、必要な措置(指導・是正勧告・逮捕等)をします。ですから、裁判の際に提出する「証拠説明書」のように、一書面ごとに立証の趣旨や作成者などを説明するようなことはしないのです。

強い申告の意思をもって臨む

 内容証明郵便で指定した期限までに支払われなかったら、いよいよ法的手段の開始です。会社は、有給休暇分の賃金を支払わなかったのです。労働基準法違反です。一切の遠慮は無用です。

 まず、指定期限日までの間に用意した証拠書類を持って、以前に相談した会社の住所地を管轄する労働基準監督署へ「申告」をしに行きます。

 そこで相談員に、『以前こちらで相談したときにアドバイスを受けた通り、もう一度内容証明郵便で会社に支払いを請求しました。しかし指定した期日になっても支払ってくれませんでした。よって今日は「申告」の手続きをするためにやって来ました。これは申告用紙です。』

 そこですんなりと受け取ってくれる場合もあれば、水を差すようなことを言ってくる相談員もいます。『申告する、ということは、会社の経営者が法律違反で捜査されたりする重要なこと。もう一度請求してみては?』などの反論がなされます。私や私の知人においては、そのような内容でした。

 しかし、もう私たちは内容証明郵便まで使って正式に会社側に支払いを要求したのです。そのような反論に構わず申告の意思を断固貫き通しましょう。

 『繰り返しますが、私はそちらのアドバイス通り、内容証明郵便まで使って支払いを再度求めました。しかしそれでも払わなかったのです。○月○日の相談時に、今度支払われなかったら申告します、といいました。そして今も申告する意思は変わりません。申告用紙をお受け取り下さい。』

 ここまで食い下がられることは多くありませんが、もし申告することを渋られた場合は、この応戦の仕方を覚えておいてください。申告することは、労働者の正当な権利です。監督官や相談員に心無いことを言われても、毅然と、『会社が労働基準法違反をしたとき、労働者が労働基準監督官に申告することは労働基準法104条に定められた正当な権利です。』と決意を述べましょう。

申告には、そろえた証拠書類を持参する

 事前に集めた証拠書類は、監督署での申告においても、その効果を発揮します。この時点で手元にある、証拠書類になりうると思われる書類は、監督署訪問の際に必ず持っていきましょう。

 作成した「申告書」とともに、それらの証拠書類も提出します。

 「申告書」には、文中で依頼した調査と指導についての結果の報告を求めたので、提出した後はその結果を待つことになります。おおよその期間を聞いておきましょう。

 申告から結果連絡まで、おおよそ1~2カ月を考えておきましょう。その期間中は、裁判に向けた準備をする、心身の休息を図る、(在職者であれば)自分に合った合同労組(外部労働組合)を探す、などの行動をすると効果的です。

 裁判に向けた準備ですが、監督署に申告した際に未払いとなっている請求金額が、本当に性格であるか再度調べることを勧めます。なぜなら、裁判では請求訴額によって、申し立てをする場所が変わるからです。