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懲戒解雇理由ごとの実戦的戦い方~職務懈怠

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懲戒解雇される理由には、実に多くの理由があります。しかしその多くが、特定の労働者を企業外へ追放するための方便として利用されています。

当ページで詳しく説明する「職務懈怠」も、その例外ではありません。職務懈怠にて懲戒解雇された多くのケースを検証すると、懲戒処分の「極刑」たる懲戒解雇にふさわしいような職務懈怠は実に稀です。多くのケースで、些細な怠慢を大義名分に、懲戒解雇が乱発されているのです。

この状況の被害者とならないためには、どのような対策をした方がいいのでしょうか?それは、過去の職務懈怠における代表的な裁判例をいくつか知り、いざ事が発生したら、迅速に己のケースを比較できるようにしておくことです。

当ページでは「職務懈怠」で懲戒解雇された場合の実戦的な戦い方を説明します。最初に「職務懈怠」で懲戒解雇された場合の戦い方のポイントを説明し、そのあとに時系列に沿って実際の戦いの過程における対応方法・手続きの仕方を説明します。

「職務懈怠」で懲戒解雇された場合の戦い方のポイント

 懲戒解雇される理由は多々あれど、懲戒解雇における戦い方は、基本的に一致しています。限られた時間と資力のもと、効率よく戦いを展開するために、必要な作業を事前にリストアップし、実行していくことが、懲戒解雇の戦いを効率よく進めるうえでのポイントとなります。

 以下に挙げる作業を、計画的にもらすことなく実行していきます。終了した作業はチェックして消していくと分かりやすいでしょう。職務懈怠を理由をした懲戒解雇で必要と思われる作業は、以下のものです(順番はその都度変わる)。

「職務懈怠」で懲戒解雇された場合の各作業の実行手順の図

 図を見ていただくとお分かりの通り、各作業は並行して行っていくことになります。それゆえ、各作業のポイントを押さえておくことが大事となるのです(ポイントを押さえず進めると、並行作業ゆえに到達点が見えにくくなり、目的に沿った作業ができなくなる恐れがある)。各作業について、説明していきましょう。

話し合いに関わる作業

 懲戒解雇の撤回を求めるためには、労働者は、辞令をもらったら速やかに当該解雇について異議を唱え、撤回を求めます。何も言わない場合、「解雇について異議がない(黙示の同意)」ととられる危険があるからです。

 懲戒解雇に対する異議は、なるべく会社側との話し合いの場ではっきりと伝えましょう。話し合いにすら応じようとしない経営者には、内容証明郵便で意思を伝達していきます。

 裁判は、当事者が意見の食い違いにより争っていることが前提となります。話し合いの内容は、ボイスレコーダーで録音のうえ反訳書を作成し、以後の手続き(調停・労働審判・裁判など)ですぐに証拠として提出できるようにしておきます。

解雇手続き上の不備に対する分析作業(すべての解雇に対して行う)

 懲戒解雇の場合、解雇が労働者にとって苛酷な結果をもたらすため、懲戒解雇に至るまでの手続き上、不備がなかったかについて、冷静に分析します。懲戒解雇を争う場合において分析すべき手続き上の不備は、以下のものが考えられます。

  • 就業規則がそもそも存在しない
  • 就業規則中に懲戒処分に関わる規程がない
  • 就業規則中の懲戒処分に関わる規程のなかに、労働者の問題行為が規定されていない
  • 就業規則が自由に閲覧できる状態にない(周知されいていない)
  • 事実関係を会社側が十分に調査していない
  • 労働者に反論・弁明の機会を十分に与えない状態で解雇した
  • 労働者の今までの功績を無視して、懲戒解雇を断行した

 これらの不備は、一つの不備あったからというだけで解雇無効になるほど、決定的な要素にはならないのが現実です。しかし裁判では「総合的に勘案して」判決がなされるため、労働者にとって裁判上有利に働く要素は、しっかりととりこぼさず主張をしておきます。

解雇期間中の賃金の算定作業

 この作業は、労働局のあっせんや、裁判所の手続き(民事調停・労働審判・裁判など)を利用することになった際に行う作業となります。

 不当な解雇をされて働く機会を失った期間は、会社の責に帰すべき理由によって労働をすることができなかった期間とみなされ、労働者からの請求があれば、その期間中の賃金を会社は払わなければならないからです。

 この計算作業をしておくと、民事調停や労働審判中の調停の試みの際に、相手方に対して具体的な解決金額を示すことができます。計算方法は、以下のページを参照にしてください。

職務懈怠による懲戒解雇特有の分析作業

裁判例では、たった1回の「問題行為」だけで懲戒解雇の有効性を認めた例は少ない

 職務懈怠を理由とする懲戒解雇の裁判においては、たった1回の問題行為が行われただけで実行された懲戒解雇について、その有効性を認める裁判例はとても少ないものとなっています。

 よって、職務懈怠を理由とする懲戒解雇をされた場合、その点をまずチェックします。あなたの例において、会社側はどのようなあなたの行為を理由に、懲戒解雇をしてきたのかをハッキリとさせます。場合によっては、労働者にとって身に覚えのない行為を理由とした懲戒解雇もされる場合があります。

 理由がはっきりとしない場合(辞令において解雇理由が記載されていない場合など)は、まず、解雇理由証明書を要求していきます。ここが出発点です。

たった1回の「問題行為」だけで懲戒解雇される例外・・・職務上の重大な注意義務違反についての分析

 たった1回の「問題行為」だけでも懲戒解雇が有効とされる裁判例も存在します。その裁判におけるキーワードは、「職務上の重大な注意義務違反」であります。

 重大な・・・という点があいまいですね。つまり、当該労働者の職務上、最も基本的に注意すべき義務、ともいえるでしょう。

 例えば、トラックの運転手や、バスの運転手である場合は、就業時間までに体内からアルコール分を抜いておかねばなりませんが、その職務上の当然の配慮を怠り、就業時間のかなり間近まで飲酒をし、それが原因で運転操作を誤り、事故を引き起こしたなどのケースが考えられます。

 そのような場合は、会社に対し物的な損害のみならず、信用上も損害も与えることになります。重大な損害をあたえるわけですね。このような結果を引き起こした場合には、たった1度の問題行為をしただけであっても、懲戒解雇の相当性が認められることがあるのです。

懲戒解雇特有の分析作業(懲戒解雇の相当性についての分析)

 この分析は、懲戒解雇で解雇された場合特有の分析作業です。裁判における主張の切り札的なポイントであるため、この分析はしっかりと行います。つまり「懲戒解雇の相当性」についての分析です。

 具体的には、問題行為が会社に与えた影響・損害の程度を分析することになります。その問題行為が行われたことによって、どのような負の影響があったのでしょうか?

 問題行為があっただけで、会社に目立った損害もない場合、会社側は、行為を引き起こした労働者に対し「以後このようなことのないように」と指導すればよいのです。目立った損害もないのに、懲戒解雇という労働者にとって極めて不利益な処分をもって会社から追い出すことは、行為の問題性の程度に比して過酷な処分だと考えられます。

 裁判においては、訴状や準備書面において、「行為に対する懲戒解雇は○○の理由により不相当であるため、当該処分は無効である」と主張します。

復職後の根回し作業(復職を考えている場合に行う)

 裁判や労働審判によって首尾よく解雇撤回を勝ち取り、職場に復帰しても、労働者の戦いは終りません。これ以後は、会社側の巧妙で陰湿な嫌がらせを受ける可能性が高くなるからです。

 解雇撤回前と後において、労働者と経営者との関係に何ら変化がなければ、撤回以後、陰湿な嫌がらせを受ける可能性は非常に高いのが現状です。経営者は、労働者に司法手続きまでされて解雇を撤回させられたことを、決して水に流すことはないでしょう。

 よって、会社側からの報復に備えないといけません。つまりこの作業は、必然的に欠かせない作業となってしまうのです。復職後の身の安泰を図るうえで考えられる対策は、以下の3つです。

  • (1)合同労組(外部労働組合)に参加する
  • (2)同僚らの協力を事前に得ておく
  • (3)会社内で仲間を募って、労働組合を結成する

 これらの3つの対策のうちで、現実的に成し得る作業は、(1)と(2)になると考えられます。

(1)合同労組(外部労働組合)に参加する

 合同労組(外部労働組合ともいう)は、誰でも一人で参加可能な労働組合です。一定の組合費を支払えば、どの会社の従業員でも、その組合の組合員になることができます。

 合同労組に参加することの最大のメリットは、自ら労働組合を結成しなくとも、交渉力・会社への抑止力について強力な力を持つ労働組合の一員になることができる点でしょう。合同労組を活用する方法については、別ページで詳しく説明します。

(2)同僚らの協力を事前に得ておく

 労働紛争に入る前、もしくは紛争の最中に、同僚らの協力を得ておくことは、復職後の精神的な平穏にとって大きな意味を持ちます。

 労働者を強引に解雇するような会社において、同僚らの表立った協力を得ることは実に難しいでしょう。彼らにはそれぞれ守るべき生活があるからです。「面倒なこと」に巻き込まれたくないのです。戦う労働者が孤立無縁となって追い詰められても、彼らには関係ありません。優先すべきは我が身です。

 よって、表立った協力ではなく、陰における協力を求めます。内面における協力、と言ってもいいでしょう。

 復職後における嫌がらせで多いパターンが、「労働者にだけ意図的かつ露骨に仕事を与えない」「上司や同僚らに無視・冷たい態度をさせることで労働者を居づらくさせる」です。

 同僚らと話を合わせ、表立っては疎遠でもいいが、プライベート等では、今まで通り接してもらうこと、そして、表立った協力は一切求めないこと、を伝えれば、大方の同僚は了解してくれるでしょう。

 そのような陰の協力すら拒否し、会社側と一緒になって嫌がらせをする同僚は、しっかりメモを取っておき、後日の対応に備えます。

 私の労働紛争の先輩諸氏の多くは、このような割り切った協力を得ることで、会社側の精神的圧迫を回避することに成功しています。しかし、嫌がらせが度を超す場合は、パワハラの問題ともなってきますので、平素より嫌がらせの内容を記録します。そうすることで、司法手続き、労働組合による追及の際、効率的な戦いが展開できます。

(3)会社内で仲間を募って、労働組合を結成する

 この対策は、実に困難な手段と言えるでしょう。労働紛争を経て復職した労働者は、同僚らにとってみれば「近づきたくない存在」であることが多いのです。その労働者が、労働組合結成の話など持ち掛けた日には、次の日から避けられることは間違いないでしょう。

 その職場で、以前に会社と労働紛争を繰り広げた労働者が別に存在するならば、声をかけてみるのもいいでしょう。しかし組合結成の話ではなく、現状や悩みを話し合うのがベターであると思います。そのような話の中で、結成の話を選択肢の一つとして取り上げていくと、自然に検討し始めることができます。

 しかし紛争直後で会社側の圧力が強いので、労働組合に関しては、合同労組加入をメイン選択肢にしておくことが現実的です。合同労組に加入後、支部開設という形で会社内において組合を結成できるメリットもあるからです。

時系列で知る「職務懈怠」で懲戒解雇された場合の実戦的・具体的な戦い方

 「職務懈怠」を理由とした懲戒解雇と戦う場合は、おおむね以上で述べた各作業を行っていくことが有効です。

 しかし各作業は並行して行うことが多いため、わかりにくいところもあります。ここではあらためて、時系列で戦いの作業の手順を示します。この手順は、過去の経験の中でわりと多いケースを参考にして示しているため、各人の戦いにおいては順序が違ってくることもあるでしょう。

 その点を踏まえ、手順は各人の戦いの状況に応じて自由に変えていきます。

解雇理由証明書(退職時の証明書)の発行を要求し、職務懈怠の内容を確認する

 

 

 

条件に抵触するかしないかの分析をする

 裁判例を見ても、いくつかの勤務懈怠行為のうち、一つの行為に該当するだけで懲戒解雇の有効性を認めた例はあまりありません。1つの行為によって有効性を認めた場合でも、その程度が深刻である傾向が見られます。

 裁判において職務懈怠が有効となるか否かを判断するうえで考慮する点は、以下のものだと考えられます。

  • (1)周知されている就業規則の中に、問題となっている行為が懲戒処分の対象となる行為として定められており、かつ、その行為に対する処分として懲戒解雇の手段があると定められていること
  • (2)問題となっている行為について、会社側が労働者に数回にわたり改善指導しており、かつ十分な弁明の機会を与えたこと
  • (3)問題となっている行為について、過去に同行為を行った他の労働者にも同じ対応・処分をしていること
  • (4)問題となっている行為に対して行われた懲戒解雇が、行為の規律違反の程度やその事情に照らして、相当な程度の量刑であること
  • (5)問題となっている行為が企業内秩序を著しく乱し、当該労働者を企業外に排斥しなければ企業秩序を維持できないほど重大な程度であること

 裁判においては、これらの点について双方が主張と立証を通じて事実を明らかにし、そのうえで総合的に判断されます。一個が該当しているから即懲戒解雇無効、となるものでもないのです。

 勤務懈怠において懲戒解雇が有効だと判断されるためには、各行為を複数行っているか、もしくはある行為の程度が深刻で、会社が労働者に幾度となく指導をし、それでも改善が見られず、かつ当該行為をそのままにしておいたら、企業内の秩序や利益が保つことができない、という事情が存在することが必要となります。

 つまり懲戒解雇が、最悪の事態を避けるための「最終手段」としてやむを得ず行われたことが必要となるのです。

 懲戒解雇は、解雇された労働者にとって深刻な不利益を与えることが多いため、裁判所はその有効性を認めるあたって、このような慎重な判断をしているのです。しかし会社内で懲戒解雇が行われる場合には、ここまで慎重な判断がされないケースがほとんどなのです。

分析結果をもとに、以後の戦略を練る

話し合いの場において、弁解をし、解雇の撤回を求める

最後通告。解雇の撤回がなされないことが明らかになったと同時に、淡々と解決手続きに着手する。

解決手続きの節目において戦況の分析をする

解決手続きが終了したら、以後の準備、義務の履行を速やかに行いつつ、相手方の義務の履行がなされるかどうかに気を配る