ここはおさえよう!解雇理由証明書を請求するための基礎知識
解雇理由証明書を請求することは、解雇をめぐる戦いにおける、最初で、かつ、最も重要な作業です。
解雇理由証明書が手元にあることで、今後の戦いにおいて、詭弁をならべるブラック企業に打ち勝つ策を考えることができるのです。
このページでは、解雇理由の証明書を請求して解雇を争う場合の、これだけは押さえておきたい!という基本的な知識を説明していきます。
まず最初に解雇理由証明書の制度の意義を説明します。そして大まかな意義を知ったうえで、証明書請求の権利を規定した労働基準法第22条を実際に見ていきましょう。
解雇理由証明書は、解雇の戦いにおいて重要な証拠となります。戦いを有利に展開させるような解雇理由証明書の獲得をめざしましょう。
「解雇理由の証明書」を請求できることの意義
労働者には、解雇された時(もしくは解雇の予告をされ解雇されそうになった時)、使用者に対して「なぜ解雇になったのか」の理由を文書にて具体的に求める権利が認められています。
なぜそのような規程が労働基準法の中に規定されているのでしょうか?その理由として、以下のものが考えられるでしょう。
各理由について、詳しく説明していきましょう。
使用者の自由気ままな解雇を防ぐ
「解雇の理由については具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない」【平成11・1・29労働基準局長名通達】と監督官庁が示す通り、証明書には、具体的な内容を記載しなければなりません。
例えば「日頃から口ごたえをするから気に入らないから解雇した」などの使用者の身勝手な理由による解雇の場合、労働者が解雇理由の証明書を請求した場合は、その事実を証明書に記載しなければなりません。しかしまさか「気に入らないから解雇した」などと証明書に書けるわけがありません。使用者は後々のために行政機関にも体面が保てるような理由を無理やり書かなければならないのです。
だが偽りの理由は矛盾を生じるものです。具体的な経緯まで求められたら、証明書にかろうじて理由を書けたとしても、その理由と経緯は反論の余地満載のものであり、労働者が第三者機関等を利用して戦う場合には非常に有利な拠り所・証拠の一つとなるのです。
それゆえ、使用者は身勝手で自由気ままな解雇をすることがしにくくなりますね。労働者が解雇理由の証明書を請求できる権利を持つことは、間接的に使用者の解雇権濫用を抑止する働きを持つのです。
労働者に今回の解雇を争うか争わないかを判断させるための材料とさせる
解雇理由の証明書に具体的な理由が記載してある場合、労働者はその内容を見て使用者との闘いに勝算があるかどうか判断する材料とすることができます。
例えば記載理由に根拠がない場合、労働者は周到な反論の準備により、第三者機関利用の場で使用者の示した理由をくつがえし「当該解雇に合理的な理由無し」という判断を勝ち取ることができる可能性が高くなります。
しかし記載理由に思い当たるフシがあり、その内容がほとんど真実を語っていてかつ合理的な理由もある場合は、闘いに踏み切っても「合理的理由あり」として、逆に敗北してしまう可能性が高くなってしまうのです。
第三者機関が解雇の有効性を素早く判断できるようにする
焦点の明確化が迅速な判断と解決につながる
解雇理由の証明書に解雇理由とその具体的な経緯が示してある場合、第三者機関はその記載理由をもとに「客観的に合理的で社会通念上相当な理由がある」かどうかを判断できます。
また、証明書に記載されている内容に労働者が異議を唱えている場合、労働者の示した反論内容と提出証拠物をもとに、記載理由が真実かどうか判断することができます。
つまり証明書があることで当該解雇事件の焦点が明確になり、審議が効率的となり、結果第三者機関の迅速な判断につながるのです。
解雇理由の証明書を提出することになる第三者機関とは?
提出することになるであろう第三者機関とは、どこが考えられるでしょうか?
民事裁判・労働審判が行われる「裁判所」がまず考えられます。そして、あっせんが行われる労働基準局・労政事務所も、提出する可能性がある場所ですね。
解雇理由証明書は、それがあるのとないのとでは採るべき戦術が変わってしまうくらい大きな影響を与えます。よって、解雇されたら(解雇されそうになったら)必ず請求することを心がけるようにしましょう。
「労働基準法第22条」を見て正確な知識を得る
労働基準法第22条は、第1項と第2項に分かれて構成されています。
世間一般に言われる解雇理由証明書(このページで主に説明する証明書)は第2項、退職後に請求する証明書は第1項です。では各項をまず見ていきましょう。
労働基準法第22条の第2項
『労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。』
解説しますと、文書や口頭で解雇されることを告げられた日から解雇により退職する日までの間に、使用者に対して「解雇される理由を記載した証明書」を請求できるわけです。
次は「第1項」です。
労働基準法第22条の第1項
『労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれ交付しなければならない。』
・・・「第2項」と「第1項」では、当然に違う箇所がありますね。その大きな違いとは何でしょうか?それは、「解雇を言い渡された時から解雇日までの間に請求する場合」(第2項)と、「退職した後に請求する場合」(第1項)の違いです(あと、様々な内容の記載を請求できるという点も違いますが)。
つまり、各ケースで労働者の置かれた状況によって、証明書を請求する時に、根拠とする条文が違ってくる、ということです。
置かれた状況に応じて第1項を拠り所にして請求するか、第2項を拠り所にして請求するかを理解しておく
繰り返しますが、第22条2項の方は、解雇予告をされてから解雇の日までの間に解雇理由の証明書を請求する時に根拠となる条文なのです。それに対して第22条1項は、退職後に解雇理由の証明書を請求する時に根拠となる条文です(下図参照)。
先にも述べたように「解雇理由の証明書」というと一般的に「2項」の方を指しますが、突然の解雇通知で会社のなすがままに時間的ゆとりもなく会社から放逐された場合でも、解雇に異を唱えて「1項」を使って解雇の理由を請求すれば、2で請求する場合と同じ権利を行使できます。
「解雇通知をもらって即その場で会社から追い出され、『解雇理由証明書』を請求しているヒマもなかった・・・」という声も聞きますが、その場合でも心配はいりません。第1項にのっとって堂々と解雇の理由を記載した証明書を請求しましょう。
・・解雇理由証明書についての基礎知識はここで終わります。さて、次はいよいよ解雇理由証明書を手に入れて実際に戦う方法を説明します。「解雇理由の証明書を請求する・具体的行動編」では、具体的な行動の仕方に徹して説明していきましょう。
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