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「解雇権濫用法理」を知り、不当な解雇との戦いに活かす!

会社の解雇権を制限する主たるものの一つに、「解雇権濫用法理」という考え方があります。当ページでは、労働者がブラック企業との戦いにこの法理を堂々と主張できるように、詳しく法理の内容を説明します。

「解雇権濫用法理」の内容と、法理が確立されたいきさつを知ろう

「解雇権濫用法理」の内容

 解雇権濫用法理・・なんだか、とても堅苦しい名前ですね。でも、その内容は、理にかなっていると私は思います。

 使用者が労働者を解雇するには、はたから見て合理的な理由が必要で、なおかつ、解雇まですることが社会一般的に相当な処置だと認められなければ、することが出来ない、というものです。

 解雇権濫用法理は、労働契約法の制定で、本格的に明文化されました。労働契約法第16条を見ると、こんな風に書いてあります。

『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。』

 この条文を読んで、あなたの周りでこの決まり事が守られているどうか考えてみてください。おそらく守られていないでしょう。特に一族経営会社などの独裁経営に陥りやすい会社では、解雇権の濫用が横行しています。

 解雇権濫用法理は、そんな使用者の解雇権の濫用を、民法第1条3項『権利の濫用は、これを許さない。』を応用して制限判示し、裁判例を積み重ね、確立してきたのです。

「解雇権濫用法理」確立のいきさつ

 解雇の全体像を把握する でも述べましたが、私人と私人の決まりごとを定める民法では、使用者は一定の期間さえおけば、労働者を自由に解雇することが出来たのです。

 しかしそれでは経済的なバックボーンのない労働者が、生活に困窮してしまいます。よって、労働者の辞職の自由はそのままに、使用者の解雇の自由だけを、裁判では制限しようとしてきました。

 その裁判例が積み重なり、まず”労働基準法18条の2”という形で条文化され、続いて労働契約法の成立に伴い、同法16条に移りました。

※裁判例の積み重ねの中で、「解雇権濫用法理は、正規従業員の解雇については厳格に適用され、それ以外の非正規・中途採用者・能力を買われて採用された労働者についてはやや甘めに適用される」という傾向も生みだしました。

「解雇権濫用法理」確立のいきさつの図
「解雇権濫用法理」確立のいきさつ

解雇権濫用法理を盾に戦う時は、あなたの解雇に「客観的に合理的な理由」があるかどうか確認することが第一歩となる

 解雇権濫用法理の内容は、”合理的な理由の存在”と”解雇にすることが社会一般的に見てしょうがない状況”という2つから成り立っています。ここでは”客観的に合理的な理由”について説明したいと思います。

 解雇されたり予告された時、労働者のまずすべきことは、解雇してきた理由を特定することです。ここはおさえよう!解雇理由証明書を請求するための基礎知識 で紹介している通り、労働者には解雇理由を文書で請求する権利があります。

 ただ、”客観的に合理的な理由”は、杓子定規でシロクロつくものではない、と労働紛争の現場では捉えられています。合理的な理由があるか否かは、個々の具体例に沿って判断されることになります。なんともそれがもどかしいですが・・・。”客観的に合理的な理由”は以下のものに大別出来ます。例とともに挙げておきます。

「客観的に合理的な理由」の例

「労働者の労働能力の欠如」の例

 業務成績の著しい不良・病気やけが治癒後の労働能力の喪失

「労働者の社内規則等の規律違反」の例

 業務命令に背いた・職場規律の違反行為・重大な経歴を偽った・会社の業務を妨害した・無断欠勤などの職務懈怠

「経営上の必要性」の例

 職種の消滅による解雇・経営不振による解雇

「客観的に合理的な理由」ありと判断されるかどうかは、あなたの解雇にまつわる事情によって左右される

 先ほども書いたように、あなたが解雇された理由が解雇の権利濫用で無効か否かは、単純に判断されません。解雇に至るまでの経緯や、会社の置かれた状況も加味されて判断されるのです。会社の行為が行きすぎな場合であっても、簡単には”会社が悪い!”とは判断されません。

 判断の場は、裁判や労働審判などの、ちょっと大がかりな場で判断されることになります。解雇無効だと思うが、低モラルな職場に復帰するのは嫌だと考えるならば、あっせんや調停の場で解決金を求めるのも、釈然とはしないが貴方の体力を減らさない合理的な方法なのかもしれません。

 解雇の場合に求められる”合理的な理由”について、裁判所はどのような事情の時に合理的だ、と認めているか知るには、過去の裁判例をみるのが一番です。

 解雇の合理的理由有るか否かを争う裁判例は実に多いので、それらをサッと見ておくのも勉強になります。

 とにもかくにも、解雇されたり解雇予告された時は、使用者に解雇の理由を尋ねることです。文書で、徹底的に具体的に!それが、不当な解雇と戦うための大きな一歩となるのですから。

あなたの解雇に「客観的に合理的な理由」があっても、「社会通念上相当」でなければならない

 合理的な理由があったとしても、使用者は自由に労働者を解雇することは出来ません。解雇権濫用法理上はそうなっているのです。

 つまりどういうことかと言いますと、合理的な理由が認められる場合でも、解雇という手段をとる以外致し方無い、というケースでしか解雇してはならない、ということです。

 解雇の合理的な理由がある労働者が居たとして、他の手段をとれば解雇せざる得ない事由が消えるような場合は、そちらの手段を優先しなければならない、という内容です。

 解雇以外の代替措置を取らなかった解雇については、過去の裁判例でも多くが無効になっています。

例1

 勤務成績が悪いというだけではなく、それがために会社から当該労働者を去らせなければ会社の経営に支障が生じるまでの重大な程度に達している、という事実が必要という例。

例2

 勤務態度が不良な労働者に対して、それを理由にいきなり解雇するのではなく、しかるべき教育指導をするなど、手を尽くしたうえで改善されない場合に初めて解雇の措置が相当となる。教育指導等の努力もしないでいきなり解雇では、相当とは言えない、という例。

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