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あなたの懲戒解雇理由は有効?懲戒解雇の理由(事由)の知識

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懲戒解雇に関わる相談において、懲戒解雇の理由が強引で不相当なケースが多いことを実感しています。その傾向は、企業規模が小さいほど、または経営体制が独裁的である傾向が強いほど、顕著となっています。

このような懲戒解雇権の乱発(濫用)を防ぐためには、各労働者が、企業の懲戒権の範囲と限界を知っておくことが有効となります。

難しく考える必要はありません。過去の裁判例を参考にしつつ、よくある事例の知識を頭に入れて自身の例を照らし合わせれば、不当な懲戒解雇に為すすべもなく犠牲となってしまう事態を防ぐことができます。

当ページでは、企業の懲戒権の知識と懲戒処分理由、懲戒解雇における裁判例を紹介して説明します。

不当な懲戒解雇の理由(事由)を見抜くための基礎知識

 企業には、無制限に懲戒処分権があるわけではありません。企業が懲戒処分を有効にするためには、一定の条件が必要となります。

 不当な懲戒解雇を見抜くための「懲戒解雇の要件」の知識 でも説明していきますが、当ページでは不当な懲戒解雇の理由を見抜くための知識という観点から説明していきましょう。

 懲戒解雇が有効となる条件とは、以下のものです。

 これらの条件を満たしていて、初めて懲戒処分は裁判において有効と判断されるのです。以下で、これらの条件について詳しく説明します。

胸三寸の懲戒解雇理由が無効であることを説明するイラスト

【条件1】周知された就業規則に「懲戒の種類および事由」が明記されており、会社に懲戒権が存在していること

その会社に就業規則はあるか?

 あなたの会社に就業規則は存在するでしょうか。存在しないというのならば、あなたに突き付けられた懲戒処分(懲戒解雇)は、裁判で無効と判断されることになります。

 会社が懲戒権を行使できるためは、その会社で就業規則が作られていることが必ず必要なのです。その会社に就業規則が存在しない以上、会社は全従業員に対して例外なく、懲戒権を行使することができません。

 会社が、労働者が原因で生じた損害について賠償を求める場合は、懲戒権とは違うことなので、その場合の損害賠償請求自体は、無効なものではありません。

就業規則は労働者に周知されているか?

「周知されている」とはどのような状況か?

 「周知」とは、以下の状態にしておくことを言います。

  • 常に作業場の見やすい場所に掲示する(見やすい場所に画びょうで止めて貼っておく等)
  • 常に作業場の見やすい場所に備え付ける(就業規則をつるしておく等)
  • 労働者に就業規則を記載した書面を交付する(就業規則が書かれた書面を、各労働者に手渡す)
  • パソコンで常に労働者が閲覧できる状態にしておく(労働者が自由にアクセスできるホームページ上もしくはデータ上に、就業規則の内容を示す等)

 これらの状態であれば、労働者は就業規則を見る時、心理的な抵抗感を感じることなく見ることができます。

 上記の状態でなく、例えば就業規則が上司の机の中に保管されている場合はどうでしょうか?その場合、労働者は上司に閲覧の申請をしなければならず、そこで「閲覧する」意思に心理的なストップがかかってしまいます。

 そのような状態は、「周知」が徹底されているとは言えません。よってこのような状況であるならば、裁判や労働審判において当該懲戒解雇の無効を主張する場合に「就業規則は上司の机の中に保管されており、自由に見ることはできなかった。つまり就業規則は周知されていなかった。」と主張することになります。

労働基準法上就業規則を作成する義務のない会社であっても、作ったならば周知する必要がある

 ブラック企業の中には、従業員が常時10人にも達しない小さな零細企業もあります。

 そもそも、そのような会社には、就業規則の作成義務すらありません。作らなくてもいいのです。しかし前記の通り、会社が労働者に懲戒処分を下すためには、懲戒処分について明記した就業規則を作らないといけません。

 そして作った以上、就業規則であるがゆえに、周知をしないといけないのです。「常時雇われている従業員が10人未満の会社には就業規則作成義務がないから、作っても周知義務もない」というわけではないのです。

就業規則中に「懲戒の種類および事由(理由)」が明記されているか?

 就業規則があり、それが周知されていても、就業規則中に「懲戒の種類および事由(理由)」について書かれた規程が存在しないと、会社は有効な懲戒権を行使できないことになります。

 しかしここ最近は、企業防衛型の就業規則が当然のごとく出回っています。インターネット上にも、すぐにでも使えそうな企業防衛型就業規則のひな型が多数存在します。これらには間違いなく「懲戒の種類および事由(理由)」について書かれた規程が存在しています。

 つまりほとんどの会社が、「懲戒の種類および事由(理由)」規程を備えた就業規則を持っていることになります。よってこの条件をもとに無効を主張することは、かなり稀なケースとなるでしょう。

【条件2】労働者の行為が、就業規則に定められた懲戒事由に該当していること

 上記の通り、最近の会社の就業規則には、そのほとんどすべてに「懲戒の種類および事由(理由)」の規程が備わっています。

 しかしその内容を見てみますと、あらゆる行為を含むような書き方がされている傾向があります。それを「包括条項」といいます。包括条項は、具体的な行為を示した項目を受けて、いちばん最後に以下のように示されるのが一般的です。

「包括条項」を説明するイラスト

 「前各号」とは、この包括条項前に示されてい具体的な行為のことです。労働者が前各号の中の一つに当てはまるか当てはまらないかはっきり断定できない行為を引き起こした場合、会社はこの包括条項を使って「○号に準ずる行為をしたので、懲戒処分する」と言い得ることになります。

 このような包括的な表現をもつ規程が懲戒の事由中に存在すると、労働者のあらゆる行為が懲戒事由に該当する可能性が生じ、それが懲戒権の濫用につながる道を作ってしまいます。

 よって裁判所は包括的な条項が存在していても、労働者を保護する観点から、懲戒処分の事由を限定的に解釈する姿勢を採っています。

【条件3】懲戒処分は、懲戒の理由となった行為の性質や事情に照らして社会通念上相当なものであると認められること

 下された懲戒処分が、労働者の起こした行為に照らして、重すぎる処分でないか?という視点から導きだされる条件です。一般的に、「社会通念上相当なものであるか否か?」という言葉で表されます。「社会通念上相当」という言葉は、曖昧で分かりにくい言葉ですね。

 そこで、この条件を検討する場合、以下の4つの視点で見ていくことにします。そうすると検討しやすくなります。

  • 労働者の行為に照らして、処分が厳しすぎないか?
  • 同じ規定に同程度違反した場合に、皆同じ程度の懲戒処分がなされているか?
  • 従来には不問とされていた行為について懲戒処分が下された場合、事前の十分な警告や指導があったか?
  • 懲戒処分に至るまでの手続きは、しっかりとなされていたか?

労働者の行為に照らして、処分が厳しすぎないか?

 この視点については、わかりやすい基準というものがなく、各事例ごとに判断が分かれる傾向があります。裁判例を見てみても、各事例ごとに事情が異なるため、労働者にとって厳しい判決もあれば、そうでない判決も見られます。

同じ規定に同程度違反した場合に、皆同じ程度の懲戒処分がなされているか?

 懲戒処分における平等性の原則です。

 特定の労働者を狙い撃ちした解雇が行われた場合、気をつけて検討したい視点です。労働組合を立ち上げた労働者や、社内の労務管理について法律にのっとった権利を主張した労働者に対して、特に厳しい処分である懲戒解雇が行われた例をよく見ました。

 当然ですが、複数の労働者が同時に懲戒処分該当事由である行為を起こした場合、複数の労働者に対して行われる処分は、すべて同じでなければなりません。

従来には不問とされていた行為について懲戒処分が下された場合、事前の十分な警告や指導があったか?

 この視点も、懲戒処分の平等性の原則から得られる視点です。従来まで不問とされていた行為なのに、特定の労働者がその行為を引き起こした途端懲戒処分に付する、というのは、差別的な対応と言えます。

 当該労働者に対する報復的な意図は明らかであり、報復的な意図で行われる懲戒処分は相当な行為と言えず、無効と判断されます。

 従来不問な行為について懲戒処分とするには、事前に当該労働者に十分な説明と指導が必要となります。

懲戒処分に至るまでの手続きは、しっかりとなされていたか?

 労働組合が存在する会社では、その組合と会社で、懲戒処分における手続きが合意されている場合があります。そのような場合には、その手続きを守らないで行われた懲戒処分は無効となります。

 しかしそのような取り決めが存在する会社など、ほとんどありません。無い会社では、手続き上の保護は得られないのでしょうか?そんなことはありません。

 懲戒処分における取り決めがない場合は、懲戒処分を行う前に本人に弁明の機会を与えることが要請されます。この「弁明の機会」はどのような会社(組合と会社とで懲戒処分を行うための手続きの合意がなされている会社も含まれる)でも経なければならない重要な手続きと言えます。

 懲戒処分後に発覚した別の懲戒処分対象行為を、懲戒処分の理由の一つとして後付けできないのは、この「弁明の機会」が与えようがないからです。懲戒処分後に発覚した別の懲戒処分対象行為については、再び弁明の機会を与え、しかるべき手続きを経て処分を検討しなければなりません。

 「懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないというべきである。」【最1小判平成8年9月26日:山口観光事件】

懲戒解雇の理由(事由)となりうる行為の種類を知ろう

 「懲戒事由」とは、懲戒処分をするうえでの根拠となる理由、ということです。懲戒処分の対象となる理由は、主に以下のものです。

  • 経歴詐称(今まで経験した学業・職業・地位などを偽ってだましたこと。)
  • 職務懈怠(担当している仕事を怠ったこと。)
  • 業務命令違反(業務命令にそむいたこと。業務命令違背。)
  • 誠実義務違反(職務中の不正行為などのこと。)
  • 企業外非行(私生活上における不行跡・非行のこと。)
  • 二重就職(兼業禁止規定がある場合における他社での就職のこと。)

 懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も過酷な処分となります。よって上記の懲戒処分理由に該当していたとしても、その行為の実情が一層悪質で重大であったこと(当該労働者が社内に在籍していると社内秩序を維持するのが困難であるような深刻な実情)が必要となります。

経歴詐称

 「経歴詐称」とは、今まで経験した学業・職業・地位などを偽った行為のことを指します。代表的な懲戒処分の理由と言えます。

 懲戒処分することが相当だと判断されうる経歴詐称は、重要な部分を偽ったものであるものに限定される、という考え方が一般的です。裁判例においても、経歴詐称は懲戒処分の理由となり得るがそれは重要な部分を偽ったものであることを要する、と判断されています。

 「重要な部分」とは以下の部分であるとされています。

  • 学歴(最終学歴)
  • 職歴
  • 犯罪歴

 上記3つに該当すれば、問答無用で懲戒処分が有効となる、というものでもないのです。考え方のポイントは「労働者が、問題となっている偽りの経歴ではなく真実の経歴を告知したならば採用したか?」という判断基準です。その点も踏まえ、各「重要な部分」についてはページを変え、詳しく説明していきます。

担当している仕事を怠ったこと(職務懈怠)

 「職務懈怠」の内容は以下の行為となります。

  • 無断欠勤
  • 職務怠慢
  • 勤務成績の不良
  • 職場放棄
  • 頻繁な遅刻
  • 出勤不良

 これらの行為で懲戒処分をするには、会社に責任がなく、行為の原因が労働者の身勝手な理由や不注意で行われており、かつ、指導しても改善の見込みが無い状態であることが必要となります。

 ましてこれらの理由で懲戒解雇にするには、上記の要件に加え、その行為が会社に重大な損害を与え、企業秩序が乱されており、当該労働者を会社から追放しなければ企業内の秩序を保つことができないというやむを得ない状況が必要となります。

 職務懈怠によって懲戒解雇された場合に役立つ基礎知識、そしてその解雇が有効となるか無効となるかの判断基準、具体的な戦い方については、ページを変えて一層詳しく説明していきましょう。

業務命令違反(業務命令にそむいたこと。業務命令違背。)

誠実義務違反(職務中の不正行為などのこと。)

企業外非行(私生活上における不行跡・非行のこと。)

二重就職(兼業禁止規定がある場合における他社での就職のこと。)

理由を踏まえた戦い方

 懲戒解雇を含む懲戒処分は、例えそれが明らかに不当だと考えられる場合でも、裁判等の司法手続きに持ち込んで処分無効の司法判断を得ないかぎり、撤回を強制する術はありません。労働者が「この解雇は明らかに不当なものである」と会社に詰め寄っても、「じゃあ、裁判でも何でもしてみたら?解雇は撤回しないからね。お好きにどうぞ」と言われることが多々あります。

 なぜなら不当解雇の争いついては、私たちが真っ先に思い浮かぶ労働者の味方「労働基準監督署」が関与してくれないからです。解雇無効有効の判断は、個々の解雇ごとに複雑な事情が絡みあっていることが多いため、裁判所で双方が主張立証をする過程で有効無効の判断が為されるのがよいと考えられるからです。

 裁判となると、弁護士を立てるか、自ら訴状を書いて、法廷に立って会社や会社側弁護士と争わないといけない・・・。そんな面倒で恐ろしいことになるなら、次の転職先に早く落ち着いた方がいい・・と多くの労働者が考え、あきらめてしまいます。そのことを会社は知っているので、「お好きにどうぞ」などと強気で人を馬鹿にした態度をとるのです。