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これでわかる!労働問題解決のための「民事調停」利用法

民事調停による解決した時のイメージ

 労働問題を解決するうえで、裁判所で行われる司法手続きについて知っておくのは節目における選択肢を増やすことにつながります。

 特に民事調停は、弁護士に依頼せずとも自分の力で十分に挑戦できる司法手続きの一つであると考えています。「自分一人でできる」=「コストが最小限で済む」であり、請求金額が低い場合の労働紛争においては、現実的な選択肢の一つとなるでしょう。

 このページでは、そんな「民事調停」の制度の大まかな概要と労働問題での利用方法を説明していきたいと思います。

1.「民事調停」の制度の概要

 民事調停の制度の大まかな特徴は以下の通りです。

 各特徴について、簡単に説明しましょう。紛争解決のために司法手続きを利用することになった際の参考にしてみてください。

申し立てに特別な法律知識がいらず、手続きが簡単

 民事調停は、会社側の住所地を管轄する簡易裁判所に「調停申立書」を提出することから始まります。

 この「調停申立書」、通常の訴訟を行う場合に提出する「訴状」に比べ、記載がとてもやさしくなっています。簡易裁判所には定型の申し立て用紙が備え付けられており、かつ受付窓口で説明を受けながら作成することもできるからです。あなたに労働法の知識がなくとも、心配ありません。

 受付窓口では、調停申立書の作成方法だけでなく、調停の流れや概要の説明も受けることができます。受付窓口で相談にのってくれる方は裁判所事務官であり、一般的に裁判官や弁護士に比べ親切で目線が庶民目線であるため、相談しやすいでしょう。

調停調書には、判決と同じ効力が与えられる

 調停調書には、通常訴訟で出される「判決」と同じ効力が与えられます。

 「有給休暇の未払い賃金分○○○○円を支払う」ことで調停が成立し、調停調書が作られたならば、会社側が賃金分を支払わない最悪の事態となっても、その調書で強制執行手続きができる、というわけです。

費用が安い

 民事調停の手数料(調停申立書に貼る収入印紙代)は、訴訟の場合の半額となります。手数料は、訴額に応じて額が定められています。有給休暇の未払い賃金については、考えられる有給休暇取得日数の最大数が、一般的には40日以下であることから、100万円くらいまでの訴額でおおよそ収まるでしょう。

民事調停を利用する際の収入印紙代

 この手数料に加えて、郵便切手代金がかかります。調停に関わる関係者に書類等を郵送するために使われます。この額は関係者の人数や郵送回数によって変わってきます。しかし、切手代が加わる程度では高額な負担になることは考えにくいでしょう。

 そのように考えると、訴額が100万円弱であったとしても、手数料と郵便切手代で1万円前後の負担で済むことになります。これは退職した状態で戦う労働者にとって、大きなメリットとなるでしょう。

迅速な解決が期待できる

 当事者同士だけの話し合いと大きく違う点は、法律のプロ(調停主任たる裁判官・2名の調停委員)が公平な立場で両者の言い分を聞いて、話をまとめる努力をしてくれる点でしょう。調停の申請を受けると、簡易裁判所は、あなたの事件にふさわしい調停委員を2人選ぶことになります。

 両当事者だけの話し合いでは、両者が感情的になっているのでまとまる話し合いもまとまりません。まして有給休暇賃金の未払いトラブルでは、労働者もすでに退職していることが多いため、使用者への今までの私怨も合わさって激しい攻撃となることが予想され、決裂の可能性も高くなります。

 労働者が民事調停を選択すれば、会社側へ「話し合いでこの問題を解決したい」という意思を表明することにもなり、調停委員の手助けも相まって、会社側のかたくなな態度を和らげる可能性を作り出します。

 円満な解決を前提にした提案が裁判所から提示されるため会社側も納得しやすく、それゆえに調停後の未払い分の賃金がわだかまりなく支払われることにつながります。

「非公開」で行われるため秘密が守られる

 民事調停は原則「非公開性」です。また、合意に至るまで調停委員により、両当事者は顔をなるべくあわさずに事情を聴取されるよう配慮されます。

 「非公開」ゆえ、知られたくない秘密がある場合でも利用しやくすくなります。日本の裁判は、簡易裁判も含めて「公開」が原則であるため、民事調停の利用価値はここでもいかんなく発揮されます。

調停委員の配慮により、合意に至るまで両当事者はなるべく顔を合わさないで話し合いを進めることができる

 民事調停では一般的に、両者の合意がなされるまでは、両当事者がなるべく顔を合わして話し合い・事情の聴取がなされることがないようように配慮されます。私はこの点は極めて大きなメリットだと考えています。

 指定された調停日に両者は出頭します。しかし、調停室に両者が一緒に入ることはなく、当事者が交互に調停室に呼ばれて話を聞かれ、一方から聴いた話を他方に伝えつつ質問をしていく、とう進行手順で調停が進められていきます。

 これは訴訟とは違う大変大きなメリットです。会社側との戦いで、相手の顔も見たくないくらいにストレスや怒りが蓄積された労働者の方には、相手方の顔を見ながら真っ向をきって手続きを進めることは大変な負担となります。

 私が相談を受けた方の中でも、会社側の人間となるべく顔を合わさないで話し合いが進められるこの特徴に大きな魅力を感じて一歩を踏み出せた方が複数おられました。

話し合いがつかない(調停不成立)の場合もある

 会社側が話し合いに応じる余地がある場合や、『「訴訟まではちょっと・・・」と考えるがいとも簡単に泣き寝入りしたくない人』に向いている選択肢でしょう。

 注意としては、調停が不発に終わる可能性があるということ。簡易裁判所は調停が不発に終わりそうだと判断したとき、「調停に代わる決定」を出すことがあります。この決定は、両者がそれに納得すれば調停が成立したのと同じ効力を持ちますが、そうでない場合は、やはり調停不成立となります。

2.労働問題における「民事調停」の有効な利用法とは?

 労働問題において民事調停をどのように活かすかは、個人の性格や、紛争における置かれた状況によって変わってきます。私の経験等を振り返って、民事調停の有効な利用法には以下の3つがあると考えています。

 以下で詳しく話していきましょう。

個人での話し合いで会社側に不誠実な対応をされた場合に、「再交渉」の手段として利用する

 民事調停は、会社側と再交渉する時の名目としてうってつけです。

 「話し合いでは不誠実な対応しかしなかった会社なのに、また応じてくれるの?」と思うかもしれません。しかし上記で示した通り、簡易裁判所の専門家が関与することで、会社側はいい加減な対応をすることができなくなります。個人での話し合いの場では適当なことが言えても、公の場でそのようなことを言うことは普通の感覚で言ったら恥であり、結果としていい加減な対応がしにくくなるのです。

 労働者が(民事調停とはいえ)法的手段に実際に打って出たことは、会社側に大きな驚きを与えるでしょう。民事調停に参加するか否かは会社側の自由です。しかし法的手段に出た労働者の決意を目の当たりにしたことで、「面倒くさくなる前にここでケリをつけておこう」と思わせる可能性を高め、結果として会社側の参加を促すことになります。

民事調停を、次のフィールドへの「区切り」・「ステップ」として利用する

区切りとして利用する

 「裁判」だけはどうしてもしたくない、と考える労働者の方もいると思います。私も裁判だけはしたくありません。

 しかし裁判を嫌うあまりに「司法手続きの一つもしないであきらめる」ことは、己の心の中に「敗北感・泣き寝入り感」を生じさせてしまいます。この感情を味わうことは、想像する以上にみじめで辛いものです。ひどい場合、ウツの感情を引き起こしたり、長い時間憎しみに囚われてしまうこともあります。

 そのような結果を避けるためにも、是非とも民事調停を選択肢に入れたいですね。「行動」を起こすことが戦う勇気を湧き上がらせます。勇気が湧き上がれば、気持ちが前向きになり、戦い継続の意思も生まれるかもしれません。「行動」の選択肢が裁判手続きしか無いならば、その行動すら起こせませんが、民事調停が選択肢に有れば行動も容易になります。

 たとえ戦いを民事調停で打ち切る場合であっても、「するべきことはやった。私は泣き寝入りしないで、堂々と会社と戦った!」と強い満足感をもたらしてくれるでしょう。そして次のフィールドへのステップを力強く踏み出せるようになります。それこそが「最善ではないかもしれないが一定の成果」と言えるものではないでしょうか。

ステップとして利用する

 調停が不成立後2週間以内に調停が行われた簡易裁判所(訴額が140万円以下の場合)に訴訟を申し立てる場合、申立て費用が割引となります。また、調停で利用した情報を次の訴訟で流用できることになります。

 同じ裁判所での審理であれば、少し気持ちも楽になることでしょう。負担の軽減につながります。いきなり裁判することに抵抗にある人にとって、最初に調停を利用することは、スッテップとして意義のあることだといえるでしょう。

労働基準監督署へ申告する場合の「前段階」として利用する

 労働基準監督署へ申告する前のステップとしても利用することも有効な利用法です。

 「労働基準監督署へ申告しても動いてくれなかった場合に、次なる手として利用するんじゃないの?」と皆さんは思うかもしれません。しかし申告の前に利用することが有効なのです。

 会社は、労働基準監督署へ労働者が申告することを、皆さんが想像する以上に恐れ、そして嫌っています。それは、申告行為をした労働者に対して、容赦のない嫌がらせが行われることが証明しています。もちろん、申告したことに対する嫌がらせは労働基準法で禁じられていますが、そんなことは画に書いた餅であります。私がその現場を自社や相談先で目の当たりにしてきたのだから、間違いありません。

 そこまで憎まれた状態に陥った後で、会社側は民事調停に応じるでしょうか?それは容易に「難しい」と想像できますね。

 ですから、あくまで「申告」という会社側にとって最もタブーな手段に出る前に民事調停を利用するのです。民事調停を選択した方は、話し合いによる穏健で早期の解決を望んだから選択したはずです。両者の関係が完全に破たんする前に、また、話し合いによる望みが少しでもある場合に、最後の穏健解決の手段として民事調停を利用しましょう。

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