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兵法的戦い方(5):各戦局で戦況を分析し、進路を決断する

「兵法的戦い方」の第5段階目である、各局面ごとにおける戦況の分析・決断の作業を説明します。

この作業を冷静に私心なく行うことが、「負けない」戦いを実現します。一時の感情にとらわれ、目の前の現実を己の期待的観測で捻じ曲げてとらえ、それに基づいて行動してしまうと、そこには再起不能の「惨敗」が待ち受けています。

勝敗の望みが薄くなった戦局、最高ではないがまずまずの成果を得た戦局において、自身や家族のために淡々と決断できてこそ、最高の幕引きができるのです。そのための直接的な作業が分析と決断なのです。

この作業の重要性は、かの「孫子の兵法」においても説かれています。私たちは、古の戦争の達人たちの教えにならい、周囲に流されずに粛々とこの段階の作業に取り組んでいきましょう。

取り組みたい作業とは、以下の3つの作業です。

この3つの作業こそが、「兵法的戦い方」の第五段階目の内容となります。このページでは、上記3つの行動の内容とその取り組み方について、具体的に説明していきます。

分析すべき戦局とはどのような時なのかを知る

 当ページ冒頭でも述べたように、紛争期間中は様々なアクシデントが生じます。しかし、それらを全部「節目」としてとらえその都度分析していたら、大変な手間となってしまいます。

 ではいったい、どのようなアクシデントが、分析を要する「節目」と考えればよいのでしょうか?実は、アクシデントの種類・内容で画一的に判断することはできないのです。目安としては、そのアクシデントが「あなたに大きな心境の変化をもたらしたかどうか」で判断すると考えておくと分かりやすくなります。

 心境の変化には様々なものがあります。しかし紛争期間中に大きな影響をもたらしうる「心境の変化」とは、マイナスに作用するものがその大多数を占めます。

 「アクシデントの大小」や「アクシデント内容の望ましい望ましくない」に関わらず、それらがあなたの心境に大きな変化をもたらしたならば「節目」として捉え、以下で述べる「分析」と「今後の方針の修正」を行いましょう。

 参考までに、分析すべき「節目」の典型となるアクシデントを挙げましょう。これらは一例であり、他にも多くの節目たるアクシデントがあります。

  • 選択した紛争解決手段が終了して結果が出た時
  • 経済的な緊急事態が生じた時

選択した紛争解決手段が終了して結果が出た時

 あなたが選んだ紛争解決手段が結果いかんにかかわらず一通り完結した時は、最も分かりやすい「節目」だと言えるでしょう。

 手続きの過程でこちらが主張する言い分が認められたか否かは、今後の紛争の勝算を推し量るうえで大変分かりやすい目安となるでしょう。

経済的な緊急事態が生じた時

 日常生活の中で発生する経済的な変化は、大きな影響を与えます。

 収入の減少や、突発的な支出は、大きな影響を与える典型例でしょう。マイナスに作用する経済的な変化は、紛争で過敏になっている労働者やその家族の気持ちの平安に深刻な影響を与えます。

 経済的変化の大小にかかわらず、あなたの心に大きな影響を与えた場合は分析すべき「節目」と考えます。

分析すべき戦局において、兵法的な基準に基づいて戦況を公平に分析する

 あなたは『分析すべき「節目」』とはどういうものか理解し、その後ついに「節目」がやって来ました。あなたは兵法的労働紛争戦闘術の第五段階目が求める「節目を知る→分析→方針決定」にのっとり、戦況の分析を始めたいと考えます。しかし分析とはどのように行えば良いのでしょうか?ひと口に「分析」と言っても実に曖昧で、何をどうしていいのか分かりづらいですね。

 「兵法的労働紛争戦闘術」では、この分析作業は兵法的な視点で行うべきだ、と提案します。戦意・人心の一致の程度等、古来より多くの兵法書・軍事書で戦争の帰趨を決しうるものとして説かれた項目を参照にし、あなたの紛争中に同じような要素を見いだし、「勝算」という尺度を用いてそれらを公平に分析するのです。

 著名な「孫子」の兵法には、書の一番最初(始計篇・1)にて、戦いの結果を予測するための分析対象たる要素が述べられています。有名な「五事七計」です。

 「五事」とは、道(政治)・天(自然現象)・地(地形)・将(将軍)・法(軍法)であり、相手(会社側)と比較するための、比較要素です。「七計」とは、五事をもとに相手と比較することです。以下の比較が七計だと孫子は語ります。

  • (1) どちらがよい統治(政治)をして人心を得ているか
  • (2) 信賞必罰はどちらが適正に行われているか
  • (3) 将軍はどちらが有能か
  • (4) 軍隊の力はどちらが強いか
  • (5) 兵士はどちらが訓練されているか
  • (6) 天候や地形・自然条件はどちらに有利か
  • (7) 軍令はどちらが徹底されているか

 「孫子」が語るこの比較方法は、労働紛争で我と会社側の勝算の推し量りに大きな指針を与えてくれます。しかしいくら孫子が現代にも通じる普遍的な内容を持つとはいえ、中国春秋時代に考えられた判断基準をそのまま当てはめるのも無理があります。そこで「兵法的労働紛争戦闘術」では、上の七計を労働紛争に合わせて修正し、相手(会社側)との比較よりも己の現状分析のための指針とし、(2)の項目を経済的な推し量り項目に変じて、比較の基準を示しました。

  • (1) 今も会社との戦いについて家族の理解を得ており、協力体制を受けられているか
  • (2) 紛争期間を支えるための経済的な見通しは、いまだに崩れていないか
  • (3) 戦う意欲、動機づけ、紛争を乗り越えるための行動知識、メンタル的な強さが今の己にしっかりと備わっているか
  • (4) 事前の準備等がしっかりと行われていて、交渉や訴訟等をするための証拠や裏付けを今も持っているか
  • (5) 労働紛争において必須の「交渉術」や当該紛争に関わる法律基礎知識を、今も鍛えているか
  • (6) これから利用する予定の紛争解決手続きは、自己にとって敷居の高いもの、非現実的なものではないか
  • (7) 自己の主張する権利や言い分に、社会通念上相当で客観的に合理的な理由があり、かつそれ主張するために己を厳しく律しているか

 労働紛争は相手(会社側)が存在して初めて戦いが成り立つ構造とはいえ、「本当の戦争に比して、個人の行動いかんで結果が左右される傾向が強い」という特徴があります。ですから「兵法的労働紛争戦闘術」では、孫子の説く七計の考えを、個人的な分析に変更したのです。

 節目を迎えたら、上の七項目の問いかけに、自分の現状を見つめながら答えてみます。難しい場合は、「満たしている、少し満たしている、まったく満たしていない」でもいいのです。難しく考えずに、自分の持っている情報をもって、自分なりに分析します。そしてその時大変重要となるのが、「私情を排し、偏見なく、事実をありのままに」答えることです。

 分析というものは、それを行う者が色眼鏡を通して現状を見つめてしまっては、まったく無意味なものになります。それをしてしまうと、次に続く今後の進路の決定が、誤った方向へと進んでしまいます。

分析後に今後の方針を決断する

 上に示した七つの項目について分析をすることは、それほど難しい問題ではありません。繰り返しますが、現状をありのままに見つめれば、各項目についてそれなりの判断ができるでしょう。

 しかし問題は、分析で得た客観的な事実を、今後に活かすことができるかどうかなのです。いざ判断する段階で、あなたは様々な感情に襲われるはずです。プライド。悔しさ。怨み。不安などなど・・・・。それらの感情が襲う中で、あなたは以後の進路について冷静な判断をしなければなりません。

 ではいったいどのようにしたら、分析結果をこれからの進むべき道に反映させることができるのでしょうか。以下で簡単に説明をしたいと思います。

 節目以後、あなたが進むべき道は大きく3つに分けることができます。

  • 戦闘継続
  • 譲歩等による和解
  • 撤退

 上記七項目の(1)は、紛争を継続させるうえで最も重要であり、かつ基本的な事項です。(1)が満たされなくなったら、それを回復させるための努力を全力でしましょう。逆に言えば、(1)を満たすことが絶望的になったら、紛争から身を引く準備を始めるべきです。

 (1)が満たされていれば(2)・(3)を回復させることは可能です。しかし(1)が回復不能となった場合は、例え(2)・(3)を満たしていても間もなくその2つも満たすことができなくなります。分析の時は、この点は特に頭に入れておいてください。

 (1)・(2)・(3)の3つが満たさなくなったら、例え戦いに何らかの理由で未練があったとしても、素早く撤退すべきです。これらの2つが欠けたということは、戦いを継続すればあなた自身の今後に深刻な影響を与える可能性が極めて高くなるからです。

 (4)以降の項目については、これからの行動次第で、例え満たされていなくても、挽回することができます。(1)・(2)・(3)が満たされている状態であるならば、戦闘を継続しても良いでしょう。しかし、(1)・(2)・(3)の項目については、常にチェックをしてください。

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