「兵法的戦い方」を使って戦う時のおおまかな流れ
「兵法的戦い方」の考え方・行動指針を用いて戦う場合の、おおまかな流れを説明していきたいと思います。
戦術にしろ、対人格闘術にしろ、その術体系をあらかじめ知っておくことは大変重要です。そもそも、その術体系を採用するかどうかを決めなければなりません。また、術体系を知っておけば、練習するに当たっても効果的な練習成果が期待できます。
「兵法的戦い方」全体を流れる思想とは、完全なる勝利よりもいかに納得のできる成果で戦いを終結させるか、です。
その考え方を実現させるために、目的をはっきりさせ、戦いの期間を限定し、周到な準備で相手を圧倒し、譲歩を引き出させ、常に戦況を見渡し、戦いの継続か撤退かを考え続けます。
そして、最も避けるべき行動として、「怒りや復讐心による執着により、惨敗するまで戦いにとどまってしまう」を掲げます。
「兵法的戦い方」の段階は、全部で5段階となります。各段階については、ページを改めてより詳しく説明し、皆さんが実際に行動しやすいように配慮します。
- 「兵法的戦い方」は5段階で構成される
- 兵法的戦い方(1):戦いの最終目的を定める
- 兵法的戦い方(2)・紛争期間中の経済的見通しを立てる
- 兵法的戦い方(3):会社と戦うための準備をする
- 兵法的戦い方(4):戦うことに専念し、戦意を維持する
- 兵法的戦い方(5):各戦局で戦況を分析し、進路を決断する
「兵法的戦い方」は5段階で構成される
「兵法的戦い方」は、難しいことを要求しません。しかし、前段階での準備と、目的に沿った行動、そして現実を直視する姿勢が要求されます。
第1段階。何を目的にして戦うのか、を明確にします。これは「何のために戦うのか」と言い換えてもいいでしょう。
第2段階。目的が明確になったら、どのくらいの期間戦うことができるか?を把握します。戦うには、家族の理解も必要です。家族を交え、どのくらいの期間を経済的・精神的にもちこたえながら戦うことができるか、を分析し、把握します。
第3段階。この前段階の作業(前段階だが、最も重要)を終えて、初めて準備(証拠収集・勉強etc)に取り掛かり、戦いを始めるのです。
第4段階。目標の設定・経済的な推し量り・戦うための具体的な準備の二つを終えて、やっと行動に移ります。行動の火ぶたは、会社に対する宣戦布告をもって開始されます。その勢いは、まさに堰をきった濁流のごとく、相手の詭弁に惑わされず、ただ己の権利の実現に向けてのみ進みます。
第5段階。戦いの最中には、何度も当該戦闘を客観的に見直す機会があるでしょう。その時に冷静な判断で、勝機あらば戦いを継続し、勝機無き場合は、損害を最小限に抑えつつ戦いから身を引きます。
「兵法的戦い方」の流れ・全体像は、これだけです。特に難しい所はありません。そして「兵法」という割には地味だと思ったはずです。相手があっと驚くような奇をてらった戦術などはありません。そのような戦術は、聞こえはいいが常人には再現不可能で、我々が使う兵法としては意味のないものです。
ではこの流れを、各段階ごとにもう少し詳しく見ていきましょう。各段階は、もう少し詳しく説明する必要がありますが、このページでは各段階の要点をさらっと述べていきたいと思います。
兵法的戦い方(1):戦いの最終目的を定める
「なぜ戦うのか?」「戦うことで何を得たいのか?」・・・・その一番重要なことを、この段階でしっかりと定めます。目的を定めないで戦いに入ると、行き当たりばったりの戦いしかできなくなってしまいます。
会社との闘いでは、労働者側が圧倒的に不利です。その戦いの中では、無意味な行動をしている余裕はありません。周到に考えられた適切な行動を、来るべきタイミングで放つ必要があります。そのためには、事前の計画と準備が必要です。
事前の計画と準備は、最終的な到達点が定まっていればこそ、有効に行うことができるのです。ですからこの段階で、しっかりと最終目的を定めることです。
しっかりと目的を定めるには、会社との戦いによって大きな影響を受ける人(ほとんどの場合、同居の家族のみ)とだけ話し合い、己の身の丈に応じ、かつ価値観にあった到達点を選び出す必要があります。
怒りと不安の中で考える時間を取ることは難しいのですが、「兵法的戦い方」では最も重要な段階ですので、しっかりと取り組んでもらいたいです。
兵法的戦い方(2)・紛争期間中の経済的見通しを立てる
最終到達点を決めたら、その場所に行くまでに必要なモノを把握します。最も「必要なモノ」は何でしょうか?それは「お金」です。
現実の戦争であれば、「必要なモノ」には実に多様なモノが含まれます。武器、弾薬、食糧、車両・・・・・。しかし労働紛争ではほとんど「お金」となるのです。
会社と戦っている最中は、休職や出勤停止、減給などで、平時の収入が大幅に減る可能性があります。その期間でも日常生活を維持するための出費は変わりません。出費は変わらないのに収入が減るならば、当然経済的に困窮します。経済的な困窮は、家計を破たんさせ、最悪家族の絆すら壊しかねません。
ですから戦う前に、「経済的な心配をしないで戦うことができる期間」を、あなたの貯蓄・副収入等を考慮して把握しておきます。そうすることで、戦闘期間中の精神的なプレッシャーを大幅に減らすことができるのです。
また、「経済的な見通しが全く立たない絶望的な戦い」を事前に予測することができます。経済的な見通しが立たないのであれば、戦うべきではありません。家族の絆や平穏を損ねるほどの価値は、この紛争には存在しません。事前の予測と、撤退する勇気さえあれば、最悪の事態を避けられますね。
兵法的戦い方(3):会社と戦うための準備をする
目的と戦う期間が定まったら、会社と戦うための準備を開始します。準備については、第一・第二段階の時点ですでに進められている労働者の方もおられるでしょう。経済的な見通しを推し量ることも、準備の一つですから。第二段階にしっかりと取り組んだ方は、この第三段階では証拠や資料集めをし、勉強することに専念します。
「準備」とは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?まず最初に今回の紛争ではどこが違法であり、今回はどのような権利を主張できるのか?を分析と勉強で明確にすることです。その次にその権利をこちらが主張できる根拠たる証拠を集めます。それらの準備を経てから、宣戦布告により次の「第四段階」の「行動」へと進んでいきます。
勉強、と書きましたが、机に座り何時間もかけるような勉強は当然必要ありません。労働者の方向けに書かれた解説書の中を見て、あなたの紛争に関連する箇所を読み込み、そこに紹介してあった裁判例(判例)に目を通します。暗記する必要はありません。ただ、必要な時に持ち出し参照できるように、印刷等をしてまとめておきましょう。
証拠集めですが、なるべく会社にいる時に集めておきたいですね。特にパワーハラスメントや職場いじめの場合、相手の言動を記録しておくことは特に重要です。今この瞬間にも相手の心無い言動にさらされている労働者の方は、録音・ノート記録等の証拠集めをするべきです。
争点を明確に定め、証拠集め等の準備をして、そのうえではじめて会社側に戦う意思を通達します。もちろん、拒否したい辞令等はその都度はっきりと拒否しておくのですが、本格的に戦う意思は、準備が整うまで伏せておきます。しかし多くの方が、不当な行為に冷静さを失い、準備不足の状態で会社に宣戦布告をしてしまいます。そのようなことをしたら、陰湿な嫌がらせの集中砲火を浴び、効果的な行動をする前に無残に排斥されることは目に見えています。
兵法的戦い方(4):戦うことに専念し、戦意を維持する
この段階は、宣戦布告をもって始まります。先の第二・第三段階にすべきことにしっかりと取り組んでおられた方は、後は予定された行動をするだけです。
もちろん、紛争の途中では予定外のことも当然起こります。その時は、その予定外のことが後の行動や紛争結果にどのような影響を与えるかを冷静に分析します。この分析ですが、個人的な感情はなるべく排した方がよいでしょう。行動をしているときは、いくら予定通りの紛争過程を過ごしていたとしても、少しのことで心が乱れるものです。ともすれば、会社に対する恨みの感情により、予定外の出来事をより悪い方へと運んでしまうかもしれません。
予定外のことや不都合なことは、そのままにしておくと戦意の維持に非常に悪い影響を与えます。行動する時は、戦意の維持に最も気を付けるべきだと言っても過言ではありません。
兵法的戦い方(5):各戦局で戦況を分析し、進路を決断する
会社と戦っている最中は、常に戦いの状況を見極め、何が自分にとって満足のいく結果となるかを考え続けます。
例えばあっせん・調停等の話し合いによる解決を選んだ場合には、公的機関の担当者は、双方が歩み寄りをできる解決案を積極的に提示してくれます。それらを吟味し、譲歩の許容範囲であらば承諾することも意味のあることです。
話し合いで解決、というと、泣き寝入りをしたかのような感じを受けるかもしれません。しかしそれは違います。不当な行為をされたままで何も言わずに去っていくのと、権利を主張して会社側を紛争の場に引きずり出したのでは、まったく意味が違います。会社はそのことだけで、多くの準備と手間を強いられます。そしてあなたが立ち上がったことは多くの同僚の記憶に残り、会社の権威の失墜を引き起こします。
ですから戦っている最中は、戦況を分析し、勝算の有る無しを尺度にします。勝算が少ないなら、早期の歩み寄りを模索し、早急に紛争から撤退します。勝算が多いなら、たとえ激しい戦いになろうとも、もう少し戦いを継続します。
当ページ参照文献
- 孫子 (講談社学術文庫)
- 戦争論(徳間書店)
- 補給線(中公文庫)
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