兵法的戦い方(1):戦いの最終目的を定める
「兵法的戦い方」の第一段階である、最終目的の設定の作業を説明します。
目的の設定自体は、それほど難しい作業ではありません。目的の設定は自分の考え方ひとつで設定することができるからです。
しかし最初に目的設定作業を誤ると、後に目的の設定ミスに気づいても、変更することは容易ではありません。よって、設定におけるいくつかのポイントを知ったうえで作業するのがいいでしょう。
設定ポイントの一つとして、目的設定において、戦いの様々な局面を予想して、最初に路線変更にも対応しうる目的設定作業を行う、というものがあります。
とても難しそうですが、最終目的を設定し、最終目的を達成するための中間目標、中間目標を実現するための具体策を併せて設定していけば、戦いの局面の大筋をとらえることができ、多くのパターンを具体的に想定できます。
頭の中だけで考えていてもわかりづらいので、まずは紙やパソコン上に書き出していきましょう。そうすることで、考え方や各局面における可能性が分かってきます。
「兵法的戦い方」において最終目的を定めることの【役割・意義】
行き先を定めることで採るべき方法がわかり、進むべき道からそれることを防ぐことに役立つ
最終目的を定めることの役割・意義として、「目的が明確になれば戦う際に採るべき方法が見えてくる」という効果が挙げられます。
最終目的も定めないで、希望を実現するための有効な手段を見いだすことは難しいものがあります。偶然一回ばかり有効な手段を採ることができても、紛争の最中を通して有効な手段を選び続けることはできないでしょう。目的が定まっていれば、進むべき方向性に合った手段を採り続けることができるのです。
最終目的を明確にしておけば、最終目的を実現するための中間的な目標を打ち立てることができます。そして中間的な目標をクリアするための、細分化された具体策をたくさんリストアップできます。できれば、最終目的・中間目標・具体策は紙か何かに書いておきたいですね。
それができれば、あとは具体策をこなしていくだけとなります。そして、紛争状況の変化や実現したい目的の変化に合わせ修正を加えていきます。最初に大まかな道筋が立てられているので、修正作業はそれほど手間がかからず、容易に可能となります。
紛争最中は、己の取る行動が目的に近づくために必要な行動かを常に検証しなければなりません。検証するためには最終目的・中間目標・具体策が挙げられていることは不可欠となります。最終目的の設定は、検証し道を迷わないための第一歩となるのです。
行き先を定めることで、無駄な行動を軽減できる
会社との戦いにおいて無駄を省くことは、結果において大変重要な意味を持ちます。
労働者と会社の戦力を比較したならば、残念なことですが、圧倒的に会社の方が勝っていることがわかるでしょう。経済力、戦うための人材、置かれた状況・・・・。すべての要素において会社が優位なのです。
ですから我々労働者は、戦いに際して限りある資源と時間・機会を常に節約し、必要な場面で集中的に利用し、小さい動きで最大の効果を得なければなりません。資源と時間を節約するためには、「周到に練られた計画に沿った行動」が最も有効です。また、労働者にとって望ましい機会(好機)に乗じて絶妙な対応をするためには、やはり事前の準備が欠かせないのです。
「周到に練られた計画に沿った行動」も「事前の準備」も、最終目的の設定と、それに続く中間目標・具体策の立案から産みだされるものだと言えるでしょう。
「兵法的戦い方」における最終目的の【定め方】
自分の考え方に合った目的を選び、家族と相談し了承を得て、自分と相手の状況に応じて実現可能な内容に修正する
まず当該労働紛争において、あなたが考え得る結果を思いつく限り挙げます。そして自分や家族にとって望ましい結果に絞り込みます。絞り込む過程で、あなたの心の望むものである結果であることは大前提となります。最終目的を選び取る過程で、同僚や友人・周りの人間の意見や忠告・批判は考慮しないでください。考慮すべき意見はただ一つ、家族の意見だけです。理由は下段の注意点で述べます。
あなたが望み、かつ家族が賛成してくれる目的ならば、どのような目的でもいいでしょう。目的設定の過程で、己の価値観をしっかりと把握しておくことも有益となります。労働紛争における戦略的思考法 ~(1)最終目的の設定 のページでは、己の価値観を客観的に把握したうえで最終目的を定めるアプローチをとっています。しかし日頃から自己と向き合ってないと、紛争発生の緊急の場で「己を見つめなおし・・・」という作業はなかなかできるものではありません。リストラ解雇等で当面の仕事を失うなど時間がある場合以外は、この作業は割愛し、挙げた目的リストから直感を信じて最善の一つを選び取るのも一つの方法となります。
最終目的を定めたら、中間目標と具体策をリストアップする
最終目的を設定したら、続けざまに中間目標と具体策を挙げておきます。この段階では、そんなに細かく神経質に作業する必要はありません。どのような感じで挙げるのでしょうか?以下の図を見てください。
最終目的は、細かい具体的な行動から直接達成することは難しいものです。その過程には、何らかの区切り・段階があります。「兵法的労働紛争戦闘術」では、その区切りを「中間目標」と呼ぶことにします。中間目標は最終目的よりも細分化された、そして達成容易な到達点です。達成容易な到達点を挙げることで、さらに細かい「具体策」を見いだすことができます。具体策は文字通りより具体的で、かつ単純であるため、数多く挙げられた具体策をこなしていく段階で最終目的に自然と近づいていく、という望ましい結果を生みだしていくことになります。
上の図では、中間目標が3つ挙げられていますね。あなたの紛争のケースでも、中間目標は複数になることでしょう。複数の中間目標を見渡し、その中で優先順位を決めます。そして優先的に達成すべき中間目標のための具体策をこなしていくのです。
「兵法的労働紛争戦闘術」で最終目的を定める時の【注意点】
実現不可能なことを最終目的にしない
人にはそれぞれ、異なった価値観・できる事できない事があります。労働紛争でも同じことです。
ですから家族以外の他人の意見はできるだけ考慮せず、あなたの本心が望み、かつあなたが背伸びをせずに達成できる目標を設定してください。できそうなことにコツコツと取り組むことで、知らないうちにゴールは近づきます。
あなたの心が耐えられない戦い方は、きっと戦いの最中にあなたの心を打ち砕くでしょう。そうなると態勢が崩れた最悪の状態で戦線を離脱することになりかねません。
また、あなたが望みもしない結果を得たとしても、以後その職場であなたが心穏やかに日々を送ることは難しくなります。
「勝敗」や「相手を苦しめること」にだけに徹底的にこだわることができるのは、あなたがその職場を去る時だけです。
最終目的に家族以外の他人の意見を反映させない
最終目的を選び取る過程で、同僚や友人・周りの人間の意見や忠告・批判は考慮しないでください。考慮すべき意見はただ一つ、家族の意見だけです。なぜなら、あなたの家族だけが紛争による経済的ダメージを受けるからです。
友人や同僚は、経済的なダメージは受けません。ですから、彼らの意見はどうしても傍観者的な意見になりがちです。そして「長いものに巻かれろ」的な意見が多くなります。そのような意見にいちいち耳を傾けていたら、労働者の権利など主張できなくなります。「同僚だって、紛争で人手が足らなくなったら仕事が忙しくなり、影響を受けるじゃないか!」という意見が聞こえてきそうですが、、その点は紛争の原因を作った会社側が責任を負うべきであり、労働者が負うべきことではありません。
当ページ参照文献
- 孫子 (講談社学術文庫)
- 戦争論(徳間書店)
- 補給線(中公文庫)
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