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戦略的思考法:第1段階~最終目的の設定

労働紛争における戦略的思考法の第一段階たる「最終目的の設定」について、その内容と設定の仕方を紹介していきます。

「最終目的」設定の意義

目的のあいまいな状態での行動は非効率的

 最終目的を設定することは必要であるだろうか?もちろん必要だと言うことができます。

 それは多くの戦史の中の失敗例でも明確であります。目的を見失った上で行われる行動は、多くの時間の浪費と物質的損害を生み出します。

 労働紛争でも同じことです。私怨・意地・プライド等にさらされてその場の感情で動いてしまうより、最終目的を定めた上で、絶対的な指針をもって動いた方が効率的なのです。

 最終目的があいまいなことは、多くの弊害を生みます。最終目的によって、歩む道が変わってくるからです。

 細かい戦法や、末節の対処法など、最終目的の設定に比べれば、それほど重要ではありません。労働紛争においては、「三国志演義」の諸葛孔明のような、奇をてらった目覚ましい戦法があるわけではありません。目指すべき状態をはっきりさせ、そのための準備をし、現実的な根回しをし、権利の主張をするために必要な手続きを淡々とこなしていくことが重要です。

「解雇」か「大幅な賃金カットか」で決断を迫られた労働者の例を見てみる

 例えで話してみましょう。大幅な賃金のカットを通告された労働者の例です。その労働者は、賃金カットに応じなければ、解雇もあり得る、と言って脅されたとします。

 この労働者は会社と戦う道を選びました。その場合、どのような最終目的を設定するのでしょうか?あれもこれも、ではなく、明確に目的を定めると、紛争過程で心が迷いにくくなります。

 その職場に、以前と同じ環境(同じ担当部署・同じ人間関係など)でとどまりたいのか、それとも自己の尊厳や家族の生活を脅かした会社側に、謝罪や賠償等の責任を取らせたいのか、はっきりさせることが、労働紛争に取り組む第一歩となるのです。

 職場に以前の環境のままでとどまりたいのならば、派手な紛争よりも、会社や同僚と話し合いの場を持ちながらの穏健な具体策を展開していくでしょう。逆に謝罪や損賠賠償を最終目的とするならば、退職を前提として、内密な証拠収集・隙のない交渉・公的機関を使った責任追及などが取るべき道となります。

 焦点がブレていては、全て成し遂げられない可能性があります。労働紛争では、会社は常に労働者よりも力関係で優勢です。少ない機会とわずかな突破口に狙いを定めるのです。

「最終目的」をどのように設定するべきか?流れに沿って理解しよう

 ここでは、最終目的を設定する過程・方法を説明しましょう。最終目的を設定する時、私は下図の三段階を踏んでいます。

最終目的設定の流れの図

自分の心の声に耳を傾け、自分の「憲法」を掲げ、それに見合った最終目的を掲げる

 あなたの声に耳を傾けるべきです。同僚の厳しい指摘があったとしても、それよりも優先すべきは、あなた自身の考えです。

 ある最終目的を選ぶことで、達成するための苦しみを受けるのは他ならぬ労働者自身であるのだから、目的設定の過程において他人の無責任な意見によって決断を邪魔されてはなりません。

 あなたの人生の中で、今まで多くの信念や好きな考え方があったはずです。それらのものを、一度書き出してみるのもいいでしょう。

 書き出されたものは、あなたの人生の生き様を表すものです。それらはあなたの人生の「原則」であり、あなた自身の「憲法」です。

 目の前に示されたあなたの「憲法」と共存できる最終目的を選びます。共存可能な最終目的であるならば、紛争最中も自分の心の中に必要以上の違和感を感じないものです。

 自分の「憲法」を見出すために役立つ書籍としては、以下の書籍が例として考えられます。

 自己を知るためには、ただ頭で考えているだけでは効率が悪い。手を動かして書き出し、まとめ、見つめなおしてみる。労働紛争という非常の事態を契機として、自分の憲法をまとめ上げ、それに見合った最終目的を掲げましょう。

家族とゆっくり話し合う

 先ほども書いたように、最終目的をどのように定めるのかは、まったく自由であります。

 ただ、選ばれた最終目的によって影響を受ける存在がただひとつあります。それは労働者の「家族」であります。彼ら彼女らは、労働者の収入により生計を立てている、一心同体の存在です。話し合いをし、互いが納得できるくらいの目的を設定するといいでしょう。

 ともすれば長い戦いとなる労働紛争において、家族の同意は精神的な拠り所を与えます。

戦略的思考法の第2段階である、「自己と相手の状況を知る」を行った後に、修正を施す。

 自分の「憲法」に見合った最終目的を掲げ、家族とよく話し合い、同意も得たとします。そうしたら、戦略的思考法の第2段階に進みます。第2段階は、「自己と相手の状況を知る」でしたね。

 戦略的思考法:第2段階~自己と相手の状況を知る

 自己の状況と相手の状況を知ることで、最終目的が非現実的なものであると感じる場合があります。

 例えば、会社の経営者は尊大かつ傲慢で、今まで決して持論を曲げたことがない、という事実が分かったとします。それなのに、最終目的が『話し合いによって「謝罪」と「相応の賠償」を実現する』では、実現しそうにありません。あくまで謝罪や賠償を実現させたいなら、話し合いだけではなく、公的手段の力を借りる、外部労働組合の力を借りる、などの大がかりな手段が必要になります。

 そのようにして、知り得た事実をもとに、新たに最終目的を現実的なものに修正します。

 この過程は必ず行ってください。労働紛争は勝ち負けがすべてではありません。しかし、現実を直視せず、そうでありながら家族を一か八かの博打に巻き込むような愚挙はしてはならないのです。

 「兵は国の大事なり」です。現状を知って、我が圧倒的に不利な状況であることが思い知らされたとしても、この「最終目的の修正」をすることによって、最悪の事態を避けられる可能性が生まれます。

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