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戦略的思考法:第3段階~中間目標の設定

ブラック企業との戦いにおける戦略的思考法の第3段階たる「中間目標の設定」について、その意義と設定方法、具体例等を紹介していくページです。

中間目標を設定することの意義

 最終目的を設定した後、改めて中間目標を設定することにどのような意義があるのでしょうか?中間目標設定の意義には、大きく以下の二つの意義があります。

  • 最終目的までの道のりの通過点を設定することで、本道からそれにくくなる
  • モチベーションの維持がしやすくなる

 この二つの意義について、以下で説明していきましょう。

最終目的までの道のりの通過点を設定することで、本道からそれにくくなる

 人間が最終的な目的までたどり着くには、多くの場合長い時間を要することになります。なぜなら、人間は最終的な目的を、実現困難な性質を有するものに設定する傾向があるからです(目的のレベルが高いから最終目的となり得る、とも言えますが)。加えて人間の意志は弱いものであり、最終目的にたどり着くまでの過程で多くの「よそ見」をして、実現に要する時間をより一層増やしていきます。

 そのような状況で、「中間目標を設定すること」は、長い道中で非効率的な選択・よそ見をしないために大いに役に立ちます。

 最終的な目的を設定しただけでは、実現するまでの長い時間の中で何をしていいのかわからなくなります。「最終目的」は、具体的な行動を目的まで導くものとしては大きすぎるのです。その中で、中間的な到達点を定めておけば、その中間目標を実現するために、細かく具体的な対策を立てることが容易になるのです。

 下図を見てください。

「中間目標」が設定されてない図

 最終目的を設定するだけでは、目的を実現するために今すぐ取り組むことができる具体策を立てることが困難となり、取り組むべき順序も入り乱れてしまいます。しかしここで中間目標を設定してみるとどうでしょうか。ここでもう一度下図を使って説明しましょう。

「中間目標」が設定されている図

 図のように、最終目的実現のために欠かすことのできない要素を取り上げ「中間目標」として掲げることで、中間目標を実現するための細かな具体策を列挙することが容易になります。頭の中で「どうしたらいいのか?」をイメージしやすくなるのです。

モチベーションの維持がしやすくなる

 モチベーションの維持・・・それは労働紛争において切実な問題です。

 労働紛争は、職場環境で行われる一種の「イジメ」です。学生間で行われるイジメの多くが、被害者(いじめられる側)の精神的屈服による泣き寝入りで幕が閉じるのと同じで、職場におけるそれも標的にされた労働者の屈服と泣き寝入りで幕は下ります。

 職場の不当な行為は学校のイジメと異なり、経済的な脅威を伴います。労働者の生活にも直結した、生物の生存本能に訴えかけるきわめて深刻な精神状態を招きます。悲壮な覚悟で労働紛争に臨んだとしても、立ち上がった時の士気を維持しながら進むことは大変な労力を伴うのです。

 その状況の中で、大きすぎる目的たる「最終目的」しか目指すべき指針が無かったらどうでしょうか?その労働者は、『実現不可能な夢物語を追っているのではないか?』という不安を常に抱くことになるでしょう。そして遅かれ早かれ当初の士気は衰え消滅し、紛争を継続することができなくなります。

 中間目標を設定することは、これらの危険をすべて回避しうるもの、とはなりません。しかし、精神的に辛い紛争期間中の「励み」となる可能性があります。また、最終目的実現のために前進していることを常に意識できるため、脇道にそれることも少なくなります。

 ・・・・中間目標を設定することの意義を知ったところで、次は設定方法と注意点について述べたいと思います。

中間目標を設定するための具体的な方法

中間目標設定の方法

 中間目標の設定は、それほど難しい作業ではありません。自分の心の声に耳を傾け、周り(家族)の考えも聞く必要がある「最終目的の設定」に比べ、容易だと言えます。

 中間目標は、以下の二つの段階をもって設定します。

  • 第1段階:自分の掲げた最終目的を検討し、その目的に達するためには今自分は何が足りないか?を考える
  • 第2段階:その「足りないもの」を「中間目標」として設定する(足りないものが多ければ多いほど、中間目標が多くなる)

 上の図『【例】解雇事件・中間目標を設定した場合』のケースを例にとり見てみましょう。

中間目標設定方法の具体例・上図Aさんの解雇撤回事件のケース

 上図の労働者の方(Aさんとします)は、不当に解雇されたことを受けて、「解雇の撤回」・「復職して以前と変わらぬ環境で仕事をする」の二つを最終目的としました。

 この最終目的を掲げたあとで、Aさんは最終目的を成し遂げるうえで自分に足らないものは何かを考えました。

 そこで足らないものは、「解雇撤回を実現するため会社と話し合う交渉力」・「解雇撤回闘争期間中の生活費」・「復職後の嫌がらせに対する不安に対する備え」の3つだと判断しました。

「解雇撤回を実現するため会社と話し合う交渉力」を克服するための中間目標

 Aさんは、自分に労働法の知識がないこと、そして面と向かって交渉する精神的タフさが無いことを自己分析で知っていました。だから自分の力だけで交渉する道は選ばないようにしました。

 個人でダメなら集団で交渉しよう・・。しかしこの会社には労働組合もないし、労働組合を結成する行動力がある労働者もいない・・。私自身も、組合を結成する発起人となる行動力も意志もない・・。そのように考え、外部の労働組合に参加することにしました(外部労働組合に関しては1人参加OKの外部労働組合に入って闘う参照)。

 そしてAさんは、労働者のために親身になって交渉してくれる外部労働組合を捜すことにしたのです。この考えにより、中間目標は「外部労働組合に加入し、団体交渉で解雇撤回を目指す」となりました。

「解雇撤回闘争期間中の生活費」を克服するための中間目標

 解雇の辞令が下され出勤する場所がない以上、生活費を稼ぐ手段が奪われることになります。その期間の生活費を確保することが重要だとAさんは考えました。そうすることで家族の不安も和らぎ、協力も得られると考えたのです。

 そこでAさんは、家計の支出と収入を把握し、生活費の確保に必要な指針を得ようとしました。この考えを受け、中間目標は「紛争期間中の就労不能期間の生活費の確保を図る」となりました。

「復職後の嫌がらせに対する不安に対する備え」を克服するための中間目標

 例え解雇撤回を実現させても、復帰した職場で孤立してしまってはその後の仕事を継続することは困難となります。Aさんは、孤立した状態で仕事を続けられるほど精神的な強さを持ち合わせていない、と考えました。

 そこでAさんは、職場に復帰しても同僚から孤立せず、かつ解雇を撤回させられた会社からの報復もされないように、なんらかの事前策を講じることにしました。この思考結果を受け、中間目標は「復職後、部署内で孤立しないように、理解者を確保する」となりました。

 ・・・ここで挙げた中間目標の設定の例は、ほんの一例に過ぎません。中間目標を設定する場合は難しく考えず、中間目標設定のための二つの段階を意識しながら実行すると良いでしょう。中間目標を設定することは、その設定が多少ズレていたとしても、全く立てないでさまようよりもはるかに効率的になります。

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