戦略的思考法:第6段階~複数の具体策から最善の策を選ぶ
ブラック企業との戦いにおける戦略的思考法の第6段階たる「複数の具体策から最善の策を選ぶ」について、選択方法と、選択の際に参考となる具体例を紹介していくページです。
戦略的思考・第6段階目の手順
戦略的思考の最終段階は、「相手の具体策に対してこちらがどのような具体策で対抗するかを決める」段階です。この最終段階の流れは、下に示したように3つの流れとなります。
- 第一過程:戦略的思考・第4段階で挙げた具体策を当てはめる
- 第二過程:当てはめた具体策に対する「相手の反応」を予想する
- 第三過程:予想した「相手の反応」に対する対策を考えておく
第一過程:戦略的思考・第4段階で挙げた具体策を当てはめる
戦略的思考法:第4段階~中間目標実現のための具体策の設定 では、複数の具体策を挙げることを推奨しました。その理由は、予想される相手の複数の具体策に対応するためです。もう一度、相手の最終目的・中間目標・具体策を予想する過程の図を見てみましょう。
この図のケースを例にとって話しましょう。図のケースで予想される相手の具体策は主に3つです。「言いがかりをつけて、賃金を減額する」・「不慣れな部署への強制的な配置転換とそれに伴う待遇の不利益変更」・「ノルマを厳しくし、その不達成を激しく責め続ける」であります。
これらの具体策に対抗できそうなこちらの具体策を探します。無い場合は新たに具体策を打ち立てなければなりませんが、その打ち立てた具体策は自己の中間目標の実現に貢献し得るものでなければなりません。
例えば「言いがかりをつけて、賃金を減額する」について。相手は、労働者を経済的苦境に立たせて他社へ自ら転職していくことを狙っていると予想できます。その場合こちらはどのような対抗策で臨んだらよいでしょうか?
戦略的思考の第4段階で挙げた具体策の中に、下がった賃金分を埋め合わせしてくれるような具体策はなかったか・・・?そのようにして最善の具体策を選んでいくのです。
数々の具体策の中に、「知人の会社に転職しつつ、その傍ら不利益変更に伴って発生した逸失利益分を請求する」というものがあるならば、この具体策を選ぶのも一つの手だと考えられます。他社への転職によって経済的な損失を最小限に食い止められるし、かつ損失分をも安全な場所からじっくりと請求できるからです。
このようにして、相手の具体策それぞれに対して最善と思われるこちらの具体策を選択・用意しておくのです。
人それぞれによって最善の具体策は異なります。大事なのは、自分の価値観・性格に沿った実行可能な具体策を選択することだと言えます。他人の意見に遠慮したり見栄を張ってはいけません。他人にとってできる策が、常にあなたにできる策とは限らないからです。。
第二過程:当てはめた具体策に対する「相手の反応」を予想する
第一過程が終わったら、次は選んだ具体策に対する相手の反応を予測します。この予測も、各ケースによって全く内容が異なると考えられます。
相手の反応を予測するために参考となる資料として、過去の似たようなケースでの使用者側の反応が参考になります。戦略的思考法:第5段階~敵の目的・目標・具体策を予想する でも話しましたが、人間は過去に経験した成功体験を繰り返す傾向にあります。過去の労働紛争で使用者が成功した対応があるならば、それに着目しましょう。
もし似たような事例が無い場合はどうしたらいいでしょうか?その場合は、「労働トラブルQ&A」のような、具体的な事例が豊富に載っている本を読んでみるのです。そこには、会社の労働法違反に対抗して、それがためにより冷酷な仕打ちをされたむごい事例が多く掲載されています。あなたの紛争ケースにおいて、対抗した場合の相手の反応を予想するのに大いに役立ちます。
しかし関連書籍に載っている事例は、多くの読者の事例に広く対応できるようにアレンジされている場合もあるので、参考程度に考えておいてください。あくまでその会社での過去の事例と、使用者の性質を一番の参考資料にしておきましょう。
第三過程:予想した「相手の反応」に対する対策を考えておく
最後に、予想した相手の反応に対するこちらの対策を考えます。この過程が総仕上げとなるあるケースは多いでしょう。なぜなら、第二過程での相手の反応によって、こちらの目指す最終的かつ具体的な解決点が見えてくるからです。
「最終的かつ具体的な解決点が見えてくる」・・・それは一体どういう意味でしょうか?再び上の図の例で見てみましょう。ここでは「言いがかりをつけて賃金を減額する」という相手の具体策を例にとります。
賃金を減額してきただけでは、こちらとしてはどのように対応していいか分かりません。しかしこちらが「減額理由の明確な説明を求める」という具体策を選択し、その選択結果の相手の反応として「曖昧な説明に終始した挙句、職場内で嫌がらせをしてくる」を予想したならば、徐々に解決点が見えてくることでしょう。
相手の反応まで予想すれば、実現可能な解決点が明確になってきます。「嫌がらせ」と予想できる時点で使用者の歩み寄りの姿勢はほぼ望めないのだから、その職場でずっと働き続けるのは困難だと考えることができます(小さい会社であればあるほど)。であるならば、職場にとどまりつつ減額前賃金への回復を求めるよりも、職場から身を引いた状態で経済的な損失分と精神的な苦痛分の補償を求めていった方が現実的だと考えることができるのです。
この場合に考え得るこちら側の対策としては、「休職しつつ、減額分の逸失利益を考慮した和解解決金を求める」などが考えられます(下図参照)。
ここまで綿密に考えて初めて、労働紛争における行き当たりばったりによる惨敗をある程度予防できるようになります。この状態まできて初めて、細かい法律的な知識や、証拠収集のノウハウなどが必要となってきます。証拠収集のノウハウや法律的知識は、他のカテゴリーで触れていきたいと思います。
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