現実の「己を知り」、ブラック企業との戦いの準備を始める
「孫子の兵法」では、”「彼(か)れを知り己(おの)れを知らば、百戦して殆(あや)うからず。」(相手の実情を知って自己の実情も知っていれば、百たび戦っても危険な状態にはならない。)”という有名なフレーズがあります。 ※浅野裕一訳・孫子・第31刷・講談社学術文庫・2009年4月・53p~54p
この教えはあまりに有名ですが、この教えを実践するのは実は容易なことではないのです。相手(会社)の実情を知ることは難しそうだと予想できますが、己を知ることもなかなか難しい作業なのです。
人間は、自分の欠点を直視することが苦手です。現実に横たわる欠点は、いつしか「こうであってほしい」という願望によって、より有利な状態へとすり替えられてしまいます。これでは己の実情を正確に把握したとはいえず、戦いにおいて危険を回避することはできなくなります。
その点を踏まえ、己を知るための作業方法をこのページで示しましょう。それは、(1)欠点から目をそらさないように心がける、(2)知っておくべき内容について事前にしっかりと把握してリスト化し、最後に(3)自己分析シートや家族の意見を参考に、リストを埋めていく、です。
皆さんがしっかりと己を知り得るよう、詳しく解説していきましょう。
いま現在の「己」を知るために心に留めておきたい2つの注意点
「己」を知ることとは今現在のありのままの自分を知ることであります。自分を知ることならば、誰にも邪魔されず、自由に全てを知ることができそうだと思うでしょう。しかし実際には、そんな簡単に今現在のありのままの「己」を知ることはできないのです。
しかしありのままの「己」を知ることは、惨敗を防ぐため欠かすことのできない作業なのです。皆さんが今現在のありのままの「己」を知るための注意点を、二つ説明したいと思います。
「欠点」というものは自身で把握するだけでも辛い作業だが、認めることで結果的に前に進みやすくなる。
私たちは、自身の欠点をまざまざと見せつけられたり、指摘されることを大いに恐れます。他人の批判を気にしてしまうことを考えればわかりますね。「人に言われることは苦痛だが、自分自身で把握するだけならば大丈夫なのでは?」と思うでしょうが、それもまた難しいのです。
ありのままの「己」を知る作業の過程で欠点を再確認するたびに、私たちは恥ずかしくなり、目をそむけたくなります。そむけているうちに「~であって欲しいのに」という「希望」が、そのまま「現状」へと変化していきます。
把握したのだから、今後は大丈夫、これ以後はこのような行動はとらない、と思い、それで欠点については解決してしまうのです。しかし、長年あなたが取ってきた行動パターンは、簡単には直りません。直すには多くの時間と、強固な意志が必要となります。
今まさにブラック企業との戦いに直面している私たちに、これまでの行動パターンを変える時間と、欠点を克服する精神的ゆとりはありません。それならば、素直に『欠点をも含めた「己」』を認め、そのうえで「己」にあった対策を選択していく方が合理的なのです。
欠点が存在していることに気づくことが、「惨敗」を防ぐうえでの大きな一歩となるのに、これでは労働者を守るべき術が無くなってしまいます。
知るのは、「いま現在」の「己」。過去の栄光時の「己」や将来の希望的観測の上に成り立つ「己」ではない。
私たちが知るべき「己」とは、今現在(ブラック企業と戦おうとしている時)の「己」なのです。
過去に仕事・学業・イベント等でうまくいっていた頃の自分で戦うわけではないのです。また、将来の理想の自分で戦うのでもありません。
過去の考え方と今の考え方は違っていても不思議ではありません。例えば、家庭を持った労働者であれば、家族の生活を守るために、昔と違って上司に反抗するのが慎重になってしまった、ということもあるのです。捨て身で会社内で立ち振る舞うことができた過去と、家庭を持って現状を維持せざる得なくなって慎重さを求められている現在では、考え方・価値観も違うものとなっている可能性が高いでしょう。
いま現在の「己」の、考え方・勇気の程度・守るべきものとのバランス、を知っておきましょう。そして現在の「己」で出来得る行動を見つけ、選択していくのです。
「己」についての知っておきたい内容をリストアップし、埋めていく方法
ブラック企業が不当な行為をしてきて、私たちが懇願しても一向に不当な行為を止めない場合又はその行為がエスカレートしていく場合は、いよいよもって戦うことを決意するでしょう。
ブラック企業と戦うことを決意した場合、まず最初に何をすべきでしょうか?
労働紛争における戦略的思考法では、何よりも真っ先に取り組むべきこととして、「最終目的の設定」を挙げます(労働紛争における戦略的思考法(1) ~「最終目的の設定」参照)。そしてその次の段階として「自分と相手を知る」というステップを踏むのです。
労働紛争における戦略的思考法(2) ~「自分と相手を知る」 では、「自分と相手を知る」ことの意義とむずかしさについて主に述べました。このページでは、把握すべき内容とは一体何なのか?について、より詳しく具体的に見ていきたいと思います。このページで、まず「自分」についての知るべき内容を考えていきましょう。
自分自身について知っておきたい内容を考えるにあたっては、「孫子の兵法」における「七計」を参考にするとわかりやすいと思います。「七計」とは孫武が「孫子の兵法」中で示してくれた敵味方の戦力の比較例なのですが、実に網羅的で完成度が高く、「七計」をもとに己の現状を見つめていくと、そのまま「己を知る」作業となります。
「五事七計」を用いてブラック企業と戦う時の勝算を測る方法 中における労働紛争対応版の「七計」をもとに、知るべき項目をリストアップしましょう(※敵について知る作業においても、七計をもとにリストアップします)。
- 労働紛争をすることについてどちらが血縁者・親近者・従業員の同意・支持を得ているか
- 紛争当事者はどちらが紛争を戦う意欲が強いか
- 戦う時期と戦う場所は、どちらの当事者に有利か
- 紛争当事者のどちらが平素より厳正で、信頼を確保しているか
- 紛争当事者の戦うための力(資料・知識・経済力)はどちらが上か
- 紛争当事者には、どちらに専門家の有無・労働組合・同僚の団結などの人的有利さがあるか
- 紛争当事者のどちらが、周囲の人間に対する公平・誠実な態度・評価をもって接しているか
- 当該紛争をする目的は明確で、かつ、それについて近親者の理解は得られているか?
- 自分自身の性格・戦う覚悟はどのくらいあるか?
- あなたは、戦う時期と戦う場所を有利に利用しうるか?
- あなたは、平素より、己に厳正さを要求することによって生じる信頼性を他者から得ているか?
- あなたは、周囲の人間に対する公平・誠実な態度・評価をもって接しているか?
- 責任追及を可能とする客観的資料・知識・経済力を持っているか?
- 職場内で力を貸してくれる人はいるか?(人的有利さを持っているか?)
以下で、知るべきリスト(各事項)について、分析すべき事実と分析の注意点を詳しく説明しましょう。
各項目について詳しく知るための「方法」と「注意点」を参考にし、リストを埋める
当該紛争をする目的は明確で、かつ、それについて近親者の理解は得られているか?
あなたの目指すべき目的は非常に重要です。その部分を知る(明確にする)ことは、真っ先に取り組むべき事項でしょう。目的を明確にし、設定することの意義と方法の詳細は 労働紛争における戦略的思考法 ~(1)最終目的の設定 で述べていますが、ここでも簡単に触れておきましょう。
労働紛争における目的は、目的の性質によって以下のように大まかに分類されます。
- 「わたくしごと」を満足させるための目的
- 「現状維持」を達成するための目的
- 「不当な事態の積極的改善」を実現するための目的
「わたくしごと」を満足させるための目的とは、復讐心や自己のプライド・誇りを満足させるための「目的」です。強引に退職させられたとしても、会社の経営者らに謝罪や慰謝料・和解金などを払わせる、などといった内容の「目的」です。
「現状維持」を達成するための目的とは、労働者が当該労働紛争に巻き込まれる前までに置かれていた職場環境・報酬のレベルを守るための「目的」です。減給通知や配置転換を不当な措置として拒否し、今までどおりの立場と給料を相手方に約束させる、などといった内容の「目的」です。
「不当な事態の積極的改善」を実現するための目的とは、職場での違法な労務管理の実態を強い働きかけによって改善するための「目的」です。理由のなき解雇の横行・有給休暇を使わせてくれないなどの不当な現状に対し、労働組合結成などの強い行動によって改めさせる、などといった内容の「目的」です。
なぜこのように紛争目的の性質を分類したのかと言いますと、目的の性質によって採るべき方向性・方策が変わってくるからです。例えば、現状維持を目指すのに、私怨や復讐心を達成させるような過激な紛争をすることは後々労働者自身の首を絞めることになる、などです。目的をしっかりと定め、後に不合理で二度手間な行動をとらないようにせねばなりません。また、目的をはっきりさせることは、あなたの家族の理解を得るためには避けて通ることができない重要な作業でもあるのです。
また、目的設定においては、自分の考え方の沿った目的であること・実現可能であること・守るべきもの(家族の生活・自分の誇り)を犠牲にしないような目的であることが必須です。私怨や復讐心で労働紛争を引き起こすことは全く無意味な行為と言い切ることができませんが、報復の感情にとらわれて過ぎて守るべきものをおろそかにしてしまうことだけは極力避けたいものです。
あなたの目標は何でしょうか?あなた自身が立てている最終的な目的を見つめ、心から湧き出たものか、実現可能か、家族を苦しめないか、をしっかり分析してみましょう。
自分自身の性格・戦う覚悟はどのくらいあるか?
自分自身の性格や覚悟の有無は、紛争の過程や結果に非常に大きな影響を与えます。
ここで考えてみましょう。紛争の過程においては、実に多くの勇気を必要とします。今までの職場生活の中では考えられないくらいの、明確な反抗と抵抗を余儀なくされます。陰で会社や経営者・上司の悪口を同僚と言い合っているのとは、次元の違った世界に突入するのです。
陰で悪口を言っているだけならば、言った後でも日常の職場で自分の立場や人間関係は全く変わりません(不当な現状も全く変わらないが)。しかし権利を主張し、経営者や上司にハッキリと「NO!」の意思表示をすることは、言った労働者の職場環境が大きく変わることを意味するのです。
その変化に対して、自分は覚悟を決めているか、そして上司や経営者に権利を主張し戦おう、という勇気があるかは非常に重要なのです。また、あなたの紛争を傍観して面白がる心なき同僚らの、言われなき中傷を跳ね飛ばすタフさも、紛争の形態によっては必要となるでしょう。
自分自身の性格や戦う覚悟の度合いを知ることは、労働紛争の最終目的を決めるうえで、やはり欠かすことのできない作業であるのは間違いありません。己にできない目的を立てても、それはどうすることもできないものだからです。
あなたは、戦う時期と戦う場所を有利に利用しうるか?
「孫子の兵法」においては、五事の構成要素として、「天」と「地」を挙げています(あとの3つは「道」・「将」・「法」)。「天」とは、天候・季節などの自然現象を指し、「地」とは、険しさや高低などの地形を指しています。ブラック企業との戦いにおいては、兵をもって原野で刃を交えることはしません。よってこのサイトでは、「天」と「地」を少し変わった視点で利用してみたいと思います。
「天」を戦うことに適した季節的な時期としてとらえます。時期を「時機」として考えてもいいでしょう。その場合は、「経済的に余裕ができて今こそ戦うべき時機」「証拠もそろって今こそ宣戦布告するべき時機」等の分析基準を考え出すことができます。
「地」は、地政学(地理的現状が、政治・軍事・経済分野で戦争当時者に与える影響を、広く大きな目線で分析する学問)的スタンスでとらえ、己の生活している場所が戦いにどのような影響を与えるか?という目線で分析に利用します。
戦う時期(時機)
古来より戦争においては、戦ってよい季節的な時期というものが存在していました。多くの兵員を動員し、そのための物資を運搬するためには、寒暑の著しい苛酷な季節は、戦う時期に向いていなかったのです。
ブラック企業との戦いにおいても、季節的な時期は影響します。労働紛争では実際に兵火を交えることはありませんが、現代社会においては季節的なイベントによる戦いにくい時期というものが存在します。年末年始・盆休み等の長期休暇が絡む時期は、精神的にも戦う意欲は湧きにくいものです。また、3・4月などの、労働者の家族に多くのお金がかかる年度が変わる季節も、家計に大きな影響を与える労働紛争には向かない時期だと言えます。
戦う場所
ここでは、あなたの住んでいる場所・生活している場所をもとに、その現状が労働紛争にどのような影響を与えるか?という視点で「場所」についての分析をしていきたいと思います。
実際にあなたが戦いを挑む場合、戦いの場所はどこになるでしょうか?その場所を利用するにあたって、あなたは場所を活かすための要素を準備しているでしょうか?
会社在籍中に自らで交渉することによって権利を実現させようとしているならば、あなたは「会社内」という場所で戦うことになります。その場合、その場所にあなたの仲間はいるでしょうか?
調停や裁判等の司法手続きを利用して戦う、つまり「裁判所」という場所を利用して戦うならば、あなたは司法手続きに必要な知識と精神的覚悟を持ち合わせているでしょうか?
あなたの住んでいる場所では、労働紛争を起こすことによってうわさが立つようなことはないだろうか?ブラック企業の経営者があなたの住んでいる場所において大きな影響力を持っている場合、戦うことによる不利益の発生を事前に予想しておくことも必要となります。人口の少ない地方都市では、このような特殊な影響も頭に入れておくと、後の不測の事態に対処できます。
あなたは、平素より、己に厳正さを要求することによって生じる信頼性を他者から得ているか?
自分自身に対する一貫した厳格さは、職場の同僚らから信頼を得ることに大きく貢献します。
他人の欠点に対してやたらと厳しい一方で、自分自身の欠点に甘い人間は職場にいくらでも存在します。あなたの職場の同僚にもたくさんいるのではないでしょうか?
そのような人間が例えば労働紛争に巻き込まれたとしても、周りの同僚は一切手助けをしないでしょう。道義的にいえば、そのような人間でも周りの同僚は手を差し伸べるべきでしょうが、現実問題として、日頃の言動によって嫌な気分を味わわせてくる人間など誰も助けないのが一般的です。
もしあなたが自己に対する厳格さを持ち合わせてない場合、同僚からの協力を望むことは難しいと考えてください。あなたが己に対する厳格さがないうえに同僚らに対して配慮に欠ける言動をとっている場合は、協力は絶望的だと思ってください。
信頼性を得ているならば、証拠の収集や職場復帰後の精神的サポートについて協力を願い出ることができます。信頼性を得てないならば、その状況を受け入れ、己自身で準備を進めることになります。
あなたは、周囲の人間に対する公平・誠実な態度・評価をもって接しているか?
「あなたは、平素より、己に厳正さを要求することによって生じる信頼性を他者から得ているか?」では「己」自身に対する厳格さから湧き出る信頼性について分析しました。この項目では、平素より他者に対してどのような態度をもって接しているか、言い換えれば、日頃から他者に対して公平・誠実に接しているか?を分析します。
相手の立場(自分より立場が上か否か)に関係なく一貫したポリシーをもって他者に接する人は、自然と信頼されていくものです。
例えば、相手が後輩や部下で立場上強く出ることができる場合に高圧的な態度で接し、上司や先輩等で立場上下手に出る必要がある場合に媚びへつらっているような人間は、当然嫌われ信頼もされません。誰に対しても一貫した、誠実さに満ちた態度で接している人は、接する人に安心感を与え、好かれ、信頼されていくのです。
残念ながら、この項目について誠実さ・公平さを満たしていない人は、労働紛争になった時に孤立無援になる可能性が高いでしょう。態度をコロコロ変えたり、不誠実であったり、傲慢な人間は、最も嫌われるタイプであり、そのような人間に使用者に嫌われるリスクを冒してまで手を差し伸べる同僚は、まずいません。
もしあなたがこの項目について満たしてない場合は、労働紛争をすることによって実に多くの敵と戦わざるえないことになります。職場復帰を考えているならば、復帰できるためにすることは山ほどあります。転職等も視野に、じっくりと将来を考える必要も出てくるでしょう。
責任追及を可能とする客観的資料・知識・経済力を持っているか?
会社の違法性を追及し得る客観的資料はあるか?
あなたに会社側の不当な行為の責任の追及をするための拠り所となる資料・証拠があるかどうかは、話し合い・調停・訴訟をするうえで欠かせない要素です。
主張する事実を裏付ける資料・証拠がないと、冷静な判断を欠いた感情的な主張として、様々な場面で冷たく対応される危険があります。また、会社やその経営者も、話の合いの場にすら出てこない可能性を産みます。
現実を直視し、そういった資料がない場合は、一から収集しなおすか、資料に頼らない解決法(資料を突き付け、有無を言わせず認めさせる強行手段でなく、相手の譲歩を促す穏健な方策など)を目指すかを考えます。
資料・証拠物については、会社と闘うため準備 ~労働法違反の基本的対処法② と 様々な証拠の活かし方 ~労働法違反の基本的対処法③ を参照にしてください。
ブラック企業と戦うための知識はあるか?
当該労働紛争の争点を知ることは、最終目的を実現するために大きな効果を発揮する「中間目標」・「具体策」を立てるうえで特に役に立ちます。
争点がはっきりすれば、労働者の権利の主張を実現するための資料・証拠の収集が効率良くなります。多くのぼやけた争点を捨て、明確な一点の争点のみに絞り、限られた時間と精神力を投入します。
争点を知る作業には、労働法の知識がある程度必要となります。しかし戦う労働者自身の時間は有限であります。労働法を知る作業は必要最小限にし、争点の明確化のために無料の労働相談所を利用するのがベストです。相談したうえで再び自習し、理解を深めるのです(※違法性を判断する参照)。
無料の総合労働相談所は、厚生労働省の 総合労働相談コーナー をはじめ、様々な団体が開設しています。
自分の家計の経済力は労働紛争を乗り越えられるか?
知るべき内容の最重要事項の一つとして、自分の家計の経済力が挙げられます。
「働く」ということは、究極は家族を養い、生活していくことです。働くことの意義や信条についてこの場において議論するつもりはないですが、「働く」ことの最も大きな目的の一つが生活費を稼ぐことであるのは間違いありません。しかし労働紛争になれば、会社から様々な仕打ちを受け、従来の給料額を稼げなくなる危険性が出てきます。
であるならば、当該労働紛争がいくらあなた自身の「誇り」や「譲れぬもの」を守るための戦いであったとしても、その戦いのために一番大事な「生活費を稼ぐこと」の目的がおびやかされ、結果的にその戦いが労働者の敗北によって幕を閉じてしまう可能性が高くなります。
しかしその労働者に給料や報酬に頼らずともある程度生活を維持できる独自の経済力がある場合はどうでしょうか?そうであるならば、持久戦・裁判・会社を休職しつつの責任追及等、様々な戦いのシナリオを描くことができるようになります。
会社等の給料に頼らなくてもいい経済状態は、極めて大きな勝算・強みとなります。しかしほとんどのケースで、労働者は会社からの給料に頼り切った生活をしているため、経済力の推し量りは細かく具体的に行う必要があります。
経済的な力を考える場合、常に最悪の場合を考えます。どの時代も、紛争・戦争のたぐいはお金がかかるものです。給料が全く入ってこなくなった場合、一体どれだけの期間、家計を維持できるのか?そのことをシビアに考えます。そして経済的窮地に陥る危険要素を減らしていきます。
いつが最後の給料振込み日か?失業保険の金額はいくらなのか?会社を退職したことで余分にかかる税金・社会保険料はどのくらいか?そしてそれはいつ支払われるのか?生活費として切り崩しても良い貯蓄の部分はどこまでなのか?再び働き始めてからその分の給料が入るまでどのくらい時間がかかるか?などをシミュレーションしておきます(戦いの期間を支える経済的な見通しを推し量る参照)。
職場内で力を貸してくれる人はいるか?(人的有利さを持っているか?)
職場内で力を貸してくれる人はいるか?それは「他人から認められたい」という欲求が顕著な現代社会人にとって、とても切実な問題です。
職場内で力を貸してくれる同僚がいないと、部内で孤立するのは間違いありません。会社の報復を恐れ見て見ぬフリをするならまだしも、多くの場合、同僚らも一緒になって「イジメ」に参加してきます。そうすることで、自己の保身を図りつつ、周りの同僚同士である意味での「つながり」を確認しあうのです(いずれその人らもターゲットにされるのだが)。
そうなれば、よほど精神が図太い人間でないかぎり、早晩逃げ出してしまいたくなります。それは労働者が「弱い」とか「意気地がない」とか、そういうレベルの話ではありません。そうなった場合、自己の精神的健康を守るためにも、いち早くその職場を去るべきだ、とすら言えます。
このような残酷な結果を避けるためにも、紛争に入りそうになった時、窮地に陥っても手を差し伸べてくれる同僚がどれほどいるか、考えておく必要があります。
表だって紛争に協力してくれる人でなくても、イジメに参加せず今まで通り接してくれる人がいるがどれだけいるか?、だけでも知っておくと良いでしょう。そのような同僚が多ければ多いほど、紛争期間中の職場生活に辛い思いをするのが少なくなります。
逆に、普段通り接してくれる人すら見いだせないときは、自分の性格を参考にしつつ、去るべきか、去りながら戦うべきか、果てはとどまりつつ戦うという強い覚悟をするのか、の判断をします。
当ページ参照文献
- 孫子 (講談社学術文庫)※本文中の「孫子の兵法」の引用は、当書から引用しています。
- [現代語訳]孫子