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「将とは国の輔なり」を参考にした労働紛争専門家の活用方法

労働者はブラック企業に比べ、戦いに充てることができる資金が圧倒的に少ないため、専門家へ依頼する際には、一定の注意が必要となります。

あなたの目的に応じて、選ぶ専門家・利用する専門機関は変わってきます。

また、訴訟が紛争当事者のためにあることを忘れた専門家(特に弁護士)による不快な思いをするのを防ぐために、「労働者の望む結果の実現のために力になってくれる専門家」の見分け方・探し方の知識も必要となります。

このページでは、「孫子の兵法」の「将とは国の輔(たすけ)なり」の教えを活かした専門家の選び方・探し方・利用の仕方を考えていきたいと思います。

決してリーズナブルな金額では利用できない専門家です。皆さんが利用に際し、当ページを少しでも参考としていただけたら幸いです。

労働紛争の専門家に依頼する時の心構え・注意点

 労働紛争には、不当解雇の場合や不利益取扱いのケース・労働災害トラブルなど、事例が複雑で一般の人には分かりにくい紛争のケースがあります。そういう場合は、労働トラブル解決を謳う専門家らに頼むのも一つの手段となります。

 そもそも専門家たちには、どんな人がいるのか?そして、紛争解決過程で信頼関係を築くことができるあなたに合った専門家とは、どんな人か?それは後段で述べることにします。このページの前半では、専門家に紛争解決の手助けを願うときの「心構え」について少し触れたいと思います。

 専門家に頼むときのスタンスとしては、大きく以下に分けられます。

  • 紛争解決自体を、ほぼ完全に依頼し任せる場合
  • 紛争解決の主体はあくまで自分であり、専門家にはアドバイスをもらう程度の場合

 これらそれぞれのパターンについて、心構えや注意点を述べていきたいと思います。

「紛争解決自体を、ほぼ完全に依頼し任せる場合」の心構え・注意点

 専門家に完全に依頼する場合について考えてみましょう。完全に依頼する、というケースになるのは、あなたが抱える紛争について、あなた自身で解決をするのが難しいと判断したから専門家に依頼したのだと思います。

 抱える紛争が複雑で難解な場合、あなたがその問題の解決法を紛争発生時から速やかに学習したとしても、それは到底間に合うものではありません。よって、そのケースの場合にあなたが持っている知識の深度は、浅いことが一般的です。

 専門家に解決を全面的に依頼した場合は、あなたは必要以上に彼らの細かい行動に干渉しないことです。また付け焼刃の学習で得た知識は、法の基本的な原理原則が理解されていないケースが多いので、専門家の言っている内容について、知識で張り合おう、などと思わないことです。

 専門家も人間です。知らない細かい数字の知識などについて、全てを暗記しているわけではありません。完全ではないのです。ただ言えることは、彼らはあなたより労働紛争の経験や知識が豊富であり、法の基本的な活用法を知っているということです。

 「孫子の兵法」では、戦争の最高責任者とその補佐役との関係について以下のように述べています。

”「夫(そ)れ将とは国の輔(たすけ)なり。輔周(しゅう)なれば即(すなわ)ち国は必ず強く、輔隙あれば即ち国は必ず弱し。」(そもそも将軍とは、国家の輔佐(ほさ)役である。輔佐役が君主と親密ならば、その国家は必ず強力であるが、輔佐役が君主と隙間があれば、その国家は必ず弱体である。)” ※浅野裕一訳・孫子・第31刷・講談社学術文庫・2009年4月・50p~51p

 戦争に無知な君主が、戦争の専門家たる将軍に対して戦場にてあれこれ指図・干渉することは、味方内の意志の不統一を招き、足並みが乱れ指揮命令系統が混乱し、自ら勝利を手放すことになります。◇会社との戦いで労働者に勝利をもたらす要素とは?では、孫子の兵法が挙げる「勝利を呼び込む5つの要素」について触れましたが、その中の最後の要素はまさに「君主の過度の干渉が招く味方内の意思の不統一による勝算の減少」についての戒めでした。

 親身になってくれる専門家の人選(必ずしも優秀で有名である必要はない)をしっかりしたら、その後は解決の手続きについて信頼して任せる。それこそが紛争解決自体を、ほぼ完全に依頼し任せる場合の心構え・注意点と言えるでしょう。

「紛争解決の主体はあくまで自分であり、専門家にはアドバイスをもらう程度の場合」の心構え・注意点

 この場合は、あなたの置かれた状況・考え方・不利な材料等を、ありのままに正直に、相談を受けてもらう専門家に話すことが一番大事です。そして、事前に紛争の全体像を予習し、その知識をもとに話を聞き、予習で分からなかった点や相談の中で分かりづらい点を質問します。面談後は家に持ち帰って話を整理し、アドバイスを参照にしつつ、あなたの要求にあった解決法の選択をします。

 相談員は、あなたの話すことだけが、あなたの紛争の状況を知る唯一の手段です。その限られた材料から、あなたの求める内容を見つけ、障害となる問題点を見出し、あなたの要求に合った解決方法をいくつか提示するのが仕事なのです。

 ですから、専門家から有意義なアドバイスを受ける時の鉄則は、自己の置かれた状況をありのままに正直に話すことです。それだけを意識すれば、専門家との信頼関係もおのずと築かれていくのです。信頼関係を築くことは、面談の最も重要な目的です。信頼関係なくして、有意義な解決策の模索はありません。

 しかし相談者の中には、専門家による厳しい叱責を恐れたり、全てをさらけ出すのが恥ずかしいと思う方もいるでしょう。

 でもそれは考えようなのです。後で述べますが、あなたの人格を相談の場で性急に判断し叱責するような専門家とは、そもそも信頼関係は築けません。そのような場合は、その専門家のもとをあなたから去ればいいのです。専門家の態度や価値観、熱意さをあなた自身が厳しい目で観察すればいいのです。あなたの人生の全てを知らない専門家に、あなたの人格を否定されることはありません。ただあなたの労働紛争のケースについてのみ、アドバイスを受ければいいのです。

 全てをありのままに話すことも、何も恥ずかしいことではありません。完全な人間などいないのですから。労働紛争において、してしまった不利な行動は、アドバイスを受けつつ補っていけばいいのです。そもそも紛争過程において完全な立ち振る舞いをしていれば、専門家の必要性もないでしょうから。

専門家にはどんな人がいるのか?あなたの目的実現にふさわしい専門家とは、どんな人か?

 ここでは、上の段落を受けて、どういった専門家がいるのか?また相談者に合った専門家の要素とは?について話していきます。

どのような専門家がいるのか?

 労働紛争の解決を手助けしてくれる専門家とは、どのような職業・肩書きの人か?あるいはどのような組織なのか?

 労働紛争において問題となるのは、その違法性です。使用者による人事権や労務管理上の権利の濫用、禁じられた行為の強行行使などが主な原因です。そうであるならば、労働法を始めとした法に詳しい職業に携わる人が、あなたの権利実現を助ける専門家となりうるでしょう。

 主な職業としては、弁護士・司法書士・社会保険労務士・労働組合・労働基準監督官などが挙げられるでしょう。

 しかしその専門家の種類など、紛争解決にとってさほど重要ではありません。例えば、弁護士ならば訴訟を代理することすらできます。しかし一般的に、弁護士は高額な相談料を取り、かつ高額な依頼料を取ります。それでは労働者の家計が窮乏してしまいます。

 弁護士に頼むことが、いけない、役に立たない、と言っているわけではないのです。あなたの家計の実情、置かれた立場に合わせて、頼るべき専門家を選ぶのです。そしてその専門家は、あなたの役に立ちたいと真剣に考えていることが最も重要です。

弁護士

 弁護士は、法のスペシャリスト。労働者のために裁判を代理することができます。労働紛争の種類が、過労死・複雑な事情の解雇問題・高額の残業代請求の時に、利用するのが一般的です。

労働組合

 労働組合に加入することは、紛争を解決しその会社で生きていくうえで、最も強力な方法です。弁護士に頼み訴訟に勝ったところで、戻った職場では孤独です。しかし労働組合を結成していれば、職場内で孤立することはありません。また、労働組合は労働組合法で厳格に保護されているため、使用者もその扱いには慎重にならざるをえません。職場内で結成されていなかったら、外部の労働組合に入ることをお勧めします。

 労働組合については、労働組合を活用して闘う! のカテゴリーを参考にしてください。

あなたに合った専門家の要素とは?

 あなたに合った専門家とは、どのような専門家であるのか?まず言えることは、テレビに出ているような名の知れた専門家・法律家である必要など全くありません。

 また、百戦錬磨で連戦連勝の専門家である必要もありません。それらのことよりも、はるかに重要な要素があります。それは私が思うに、以下の点だと思います。

  • 相談する側の理解能力を考慮に入れてくれている専門家
  • こちらの自主性を重んじ、最終的な目標を決定させてくれる専門家
  • 相談者の役に立ちたい、という熱意のある専門家

 有名でなくとも、百戦錬磨でなくとも、これらの要素が備わっていれば良いと思います。労働紛争は人に任せきって行う戦いではありません。それは最終的には自分で踏み出し、歩みきる戦いなのです。あなたが必要以上に気を遣うことなく、共に戦うことができる専門家こそが、よい専門家なのです。各要素について、少し触れたいと思います。

相談する側の理解能力を考慮してくれる専門家

 専門家というのは、その分野においては非常にマニアックで深い知識を持っているものです。しかしそのマニアックさが、相談者の理解を大幅に越えてしまうと、その相談自体が無意味なものとなってしまいます。

 先ほども書きましたように、労働紛争は一般的に、最終的に自分が主体になって行う戦い、と言えます。ですから、労働者本人がその紛争の要点や押さえどころ、問題点をある程度理解しておく必要があります。

 しかし専門家が相談者に対して要点や難解箇所の説明を怠り、表面的な対処法のみを教授し、難解な専門用語ばかりの羅列で時が過ぎるのならば、その時間に何の意味があるのでしょうか?

 分からない点が増え圧倒され、相談者が自信を失うことは、かえって「紛争の解決」という点でマイナスになるでしょう。

 繰り返し言いますが、労働紛争は、労働者自身が自己に自信を持ち、自ら戦い、家計を維持しながら存続していく、という、自立した国家の営みに似ているものです。

 それを実現するために、問題の所在を詳しく諭してくれる専門家こそが、紛争には必要なのです。

こちらの自主性を重んじ、最終的な目標を決定させてくれる専門家

 労働トラブルの解決には、労働者自身が自主性を持って臨むことが重要だと、先ほど話しました。

 これは非常に重要です。まず自分の結論ありきで、持論を押し付けてくる専門家では、あなたの進みたい方向性を見つけることはできません。労働相談での最終的な到達点は、あなたが選ぶべきいくつかの選択肢を提示してもらうことです。

 持論が強すぎて他人の意向を重んじることができない専門家では、相談者自身も気後れしてしまい、またはある意味で洗脳されてしまい、自由な意思を阻害される結果になります。

 一般的に、労働紛争は訴訟で解決する問題ではありません。使用者と労働者が話し合いで納得することが、最も後腐れのない終結の仕方となります。そういった現実的で相談者の立場に基づいたアドバイスを提示してくれて、かつ持論を押し付けずに判断をさせてくれる・・・そういう専門家が望ましいと言えます。

相談者の役に立ちたい、という熱意のある専門家

 役に立ちたい・・・これはあなたが相談を持ち掛ける専門家の良し悪しを見分ける、最重要の判断要素だと思います。

 私が労働トラブルに見舞われた時、多くの「相談員」たる専門家を見ました。中には、労働問題に精通する相談員もいましたが、その人自身のプライドが見え隠れし、役に立ちたいという熱意は伝わってきませんでした。

 やる気のないサラリーマン、のような相談員に相談することは、多くの場合非常にマイナスの影響をもたらします。彼らの発する、やる気のない、困難ばかりにスポットを当てた悲観的な回答は、相談する者の意志を激しく揺さぶります。

 相談の場で、相談員がプライドにこだわり一般論に終始するならば、その相談員はあなたにとって望ましい専門家ではありません。

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