まず「違法性判断・争点明確化」を行い、本戦に備える
労働基準法違反をするブラック企業に対抗するための準備として一番最初にすることは、貴方がされている行為が違法行為かどうかを知り、かつ争点を明確にする、ということです。このページで違法性を素早く判断し、争点を明確にすることの意義を述べ、その後それらの方法を説明していきたいと思います。
なぜ最初に「違法性の判断」と「争点の明確化」べきなのか?このページではまず、その意義から説明していきます。そして意義を理解したうえで、この二つの準備の方法を説明していきます。労働紛争における戦う準備は、まずここから始まります。
「最初に違法性を判断し争点を明確にする」ことの意義
権利を主張するには、権利の存在が必要。多くの人は、無い権利を主張している。
「違法性を判断し争点を明確にする」ことは、すべての準備の基本となる。なぜなら権利を主張するのなら、そこには主張できる権利が存在しなければならないからだ。
このことを分かりやすく説明してみよう。上司があなたを高く評価してくれない場合、「高く評価しろ。でないと訴えてやる!」と言えるかどうかを考えて欲しい。
それは無理であろう。あなたが労働組合に属していて、それがために同僚に比して露骨な低評価をされるのなら主張できる権利もある。しかし単に普段の仕事態度を「普通」に評価されただけでは、主張できる権利もない。
この例はいささか大げさだと思われるかもしれないが、この例と同じような間違いを多くの人はしている。
典型例から、「違法性の判断と争点の明確化」の意義を検証してみる
期間社員の「雇止め」の例を題材に考えてみよう。
雇用された労働者が、契約期間満了を理由に契約終了となった。その労働者は解雇されたと思い、労働法を勉強して「解雇権濫用法理」を持ち出し、解雇無効を会社に主張した。
しかし考えてみて欲しい。この労働者のケースは「雇止め」である。解雇無効と雇止め無効では、成立するための条件が違うのである(※解雇権濫用法理が適用される雇止めもある)。
この労働者は、当ケースでは雇止め無効の条件を吟味し自己の状況に当てはめ、そして主張するべきであった。解雇無効は主張できない。そもそもこのケースは解雇ではないのだから。
これは特異な例では決して無い。なぜ多くの人がこのような間違いをしてしまうのか?それは、労働法における権利を主張できる条件が、一般の人には複雑で分かりにくいからである。
何が違法であるか?私のケースではどこに違法性があるかを判断し、そして問題となっている争点を明確にし、主張できる権利を考える。その作業は決して容易ではない。しかし最初に判断と明確化をしておかないと、無益な戦いを強いられることになる。主張できない権利を頼りに宣戦布告をしても、誰も力になどなってくれないし、力になることもできないのだ。
最初に綿密にこれらの準備をし、目標を定める。戦いの最中に自己のしていることに一貫して集中するためにも、「違法性の判断」と「争点の明確化」は避けて通ることができない道である。
労働紛争では、労働者と使用者との間の力の差が歴然としている。もちろん労働者が不利である。その状況で、争点の把握に失敗し権利の主張もできない事項で勝負を挑もうとしたならば、使用者に嘲笑されることになる。そして最初の準備不足で進路を誤り、そのうえでたどり着いた先は、本来目指すべきだった望ましい場所から大きく外れていることだろう。
「違法性の判断」と「争点の明確化」は、決して先送りにしてはいけない。全ての準備はここから始まる。
どのようにして「違法性の判断」と「争点の明確化」に取り組むのか
ゼロから勉強するのは困難。ある程度の予習後、専門の相談所に相談する。
先ほども触れたが、労働法における権利を主張できる条件・法律文の解釈・裁判例等は非常に細かく、複雑である。また労働法は、民法を基礎にした法律であり、民法中に流れる法的思想を理解しなければ分かりにくケースが多い。
よって、労働紛争が発生してから勉強しなおすのは大変な困難と時間を必要とする。紛争が発生してからでは間に合わないのだ。
ではどうすればいいのか?いかに短時間で違法性を判断し、かつ争点を明確にするのか?
方法はある。それは専門の相談所をうまく利用することである。ある程度の予習後、専門の相談所に自己のケースで権利を主張できるのか?そして一体どこが問題なのか?を確かめに行くのである。
この準備過程では、順序を変えてもいい。最初に相談をしに行ってその後復習する、という形でもいい。とにかく相談機関に相談するということが大事なのだ。相談することで、独断による誤りを少しでも減らし、専門家の意見を参考にした効率の良い準備ができるようになる。
では私達が身近に相談できる場所を以下で見ていこう。
労働相談所・労働相談機関にはどんな場所があるか
各労働基準監督署に設置されている「総合労働相談所」
最も身近な相談所として、各労働基準監督署の窓口に設置されている「総合労働相談所」が挙げられるだろう。この相談所の最大の利点は、身近かつ無料で相談が受けられる、ということ。労働トラブルに巻き込まれ、右も左も分からぬ状態の場合、とりあえず相談しに行くことができる。
しかし相談窓口に行っても、監督官に内情を直接訴えることが出来るわけではない。おおよそ窓口にいる相談員は元総務経験者・社会保険労務士などである。
監督官は様々な案件を抱えており、基本的に忙しい。そこで相談等による仕事負担増を避けるため、窓口で来訪する労働者の相談を承っている、というが実情です。
その現状が招く弊害として、監督官に「申告」する意思を持って訪ねた場合、相談員に「考え直すように」と水を差される場合がある。彼らには監督官の仕事を増やさない程度に相談者を追いかえす使命があるのだ。
であるから、総合労働相談所の賢い使い方は、無料で相談にのってもらいたい時に利用するといい。彼らの専門知識を少ない軍資金の中で有効に利用し、以後の準備に役立てるつもりで臨む。
そして「申告」する時は、断固とした意志で窓口に臨むこと。目の前にいる相談員や監督官は、決してあなたの敵ではない。強い意志と力を貸してほしいとい真摯な願いがあれば、きっと彼らも対処をしてくれるだろう。
労働基準監督署が相談労働者のために行政指導などの行動を起こしてもらいやすい事例がある。それは、労働基準法に違反していて、かつ権利の存在が明確で判断が複雑でない事例である。
その事例の典型例は、残業代未払い、有給休暇賃金の未払い等が挙げられる。
逆に行動を起こしてもらいにくい、もしくは起こしてもらえない事例とはどのようなものだろうか?それは、労働基準法にかかわる裁判例には反しているが、判断が複雑なため労基署で扱うには不適切と考えられる事例である。
代表的な事例は、不当解雇問題、不利益取り扱い問題などである。これらは個々の事例によって考慮すべき事情が複雑であるため、労基署での判断より裁判での判断が望ましい、とされているからだ。
弁護士・司法書士・社会保険労務士らの専門家への相談
他の相談場所として考えられるのは、弁護士・社会保険労務士・司法書士などの専門家である。
今は無料メール相談を受け付けている所が多くあるので、利用してみるといい。ただ、無料メール相談ということで、どうしても質問から回答をもらうまでの時間がかかってしまう。
専門家を利用する際に気をつける点は、労働者側に立った専門家もしくは、中立の立場に立った専門家に相談しなければならない、ということである。専門家にも様々なタイプがいて、「社長の味方です」と堂々と宣言している者もいる。
彼らに相談すると、あなたの権利ばかりか、人格までも否定されかねない。そこで戦う意志がしぼんでしまう危険がある。この状況になったら最悪である。使用者側に立った専門家というのは、高い確率で労働者そのものを馬鹿にしている。至らない知識を笑い、難解な言葉で圧倒しようとし、最終的には訴訟をちらつかせ力でねじ伏せる、とすごむのだ。
では一体どのようにして労働者側の専門家であることを見分けるのか?方法としては二つある。
まずは相談しようとする専門家のホームページや広告を見てみることである。そこには、労働者側の立場に立った者ならば、何らかのメッセージが付されてるはずだ。
もう一つは、「法テラス」や他の相談所で、労働者側に立った専門家を紹介してもらうことだ。法テラスは、利用そのものが無料であるため、相談機関として利用してもよいだろう。
外部労働組合への相談
外部労働組合は、労働者の立場で相談にのってくれるのは間違いない。また、相談後の高い行動力・交渉力も大きな魅力である。
その強力さから、外部労働組合に相談する場合は、緊急かつ追い詰められた事態において活用するのが望ましいと言われる。
しかし日本の労働者は、労働組合活動を敬遠する傾向にある。従順で控えめな国民性がそうさせるのだろうか?とにかく、いまだ波風が激しく立たぬ状態から労働組合に駆け込む労働者は少ない、ということだ。
外部労働組合に相談する場合の大きな欠点の一つである。私たちの中に無意識のうちに埋め込まれた「順々な労働者」像からすると、組合に参加して声を挙げることは、特異で不忠義な行為と映りかねない。その感情が、組合に相談する気持ちを鈍らせる。
だが、解決手段が訴訟しかない案件(不当解雇)では、経済的な力のない労働者にとって互角に戦うことができるほぼ唯一の方法である。
あなたにとって事例が不利であればあるほど、早い段階からの相談が有利である。
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