出来る限り証拠を集める
ブラック企業と戦うための準備で最も重要なことの一つとして、「証拠集め」が挙げられます。証拠集め、などと書くと大層おおげさなことのように思われますが、収集はスパイ映画のような激しいこともありません。少しの道具と知識で可能です。このページでは、証拠を取ることがなぜ重要なのか?についてまず触れ、その後、簡単な収集の方法について説明したいと思います。
「証拠を集める」ことの意義
有効な証拠は、労働紛争の長期化を防ぐ切り札となる
「証拠を集める」ことは、労働紛争を自力で解決するために欠かすことができない準備である。労働者の主張する権利が本当に存在するのかどうかを証明する材料となるからだ。
証拠を握っていることの有効性は、裁判の場だけで発揮されるわけではない。話合いの場でも大きな意義を持つ。それは相手(会社)を交渉の場に引きずり出し、一定の譲歩を引き出す力を持っている。つまり証拠があるということは、労働紛争の短期かつ有利な解決を促進することになる。
労働者が適切な方法で権利を請求し、証拠により権利の存在を証明することができるならば、いくら専門家がついていようと会社は己の行為の責任を取らねばならなくなる。どうせ責任を取らなければならなくなるのならば、歩み寄りをしておくか・・という、最高の形での勝利を生みだす可能性を作る(ただし「謝罪」や「友好的解決」は期待しない方がいい)。
経済的なバックボーンのない労働者は、紛争が裁判までもつれてしまったら、たとえその結果が勝利だとしても、経済的ダメージは大きいのが一般的である。その経済的なダメージが、紛争で疲れ弱った精神をさらに攻撃するだろう。
適切な権利行使と、それを裏付ける証拠は、紛争が長引くことによる様々なダメージを軽減させる。
重要だが、やや集めにくい証拠
切り札となる証拠。しかし労働紛争で証拠となり得る物は非常に残りにくく、いざという時に手元に確保出来ない。
労働以外のトラブルでは、契約書や借用書などの書面で約束を交わしていることが一般的なので、一定の証拠が残っている場合が多い。しかし、労働の現場では、口約束や口頭での異動命令などが横行しており、ああ言った、いや言ってない、などの「言った言わない」の小競り合いを生じさせる。
会社の行った不当な行為を立証しようとしても、そもそも口頭で聞いた内容を正確に再現できないので、「そんなことは言っていない」と言われてしまえば反攻は容易ではない。
そんな理不尽を回避するために、相手がスキだらけの内に証拠を取ってしまう、などの対策を取らねばならない。その点については、 ◆様々な証拠の活かし方 ~労働法違反の基本的対処法③のカテゴリーや、◇準備段階の注意点 ~いきなり宣戦布告しないのページで説明していく。
どのようなものが証拠を、どのように集めるのか
どのような証拠があるか
どのようなものが証拠となるだろうか。それは、各紛争ごと、または何を証明したいかで大きく変わってくる。
具体的には、会社が出してきた文書、辞令、就業規則、朝礼の内容、上司との会話の内容、面談内容、叱られた時の会話内容などが証拠となるだろう。
しかしそれらのものは、実に入手困難である場合が多い。そのためにも、会社から配布される文書・書面等は、例えどのような内容のものであれしっかり保存しておく。そして会話内容を必要な時に記録するためにも、事前に道具をそろえ、録音・メモのシミュレーションをしておく。会話内容の録音、詳細なメモは、問題となった行為が実際にあったかどうかを証明する上で非常に有効な証拠となる。
「録音すること」を証拠獲得の基本手段にしておけば、あらゆる行為をこちら側の有利な証拠として仕入れることができる。録音は、具体的で改ざんの可能性も少なく、相手の声もハッキリ入っているので、特に「パワーハラスメント」「職場イジメ」等でかなりの説得力を持つ。もちろんそれら以外の事例でも、こちらの質問内容に対する相手の反応・返答を録音することで、「言った、言わない」の不毛な押し問答を回避することができるようになる。
証拠集めの基本は、抜け目ない「保管」と積極的な「記録」
抜け目なく「保管」する
会社から配布された書類を「保管」しておくこと・・・それは極めて当たり前のことのように聞こえる。しかし実際はどうだろうか?紛争当事者たる労働者の手元には、何も残ってないケースが多い。
多くの人は、会社から配布された書面をとってあるだろうか?辞令、お知らせ、社内報・・・。これらのものを捨ててしまうことはよくあることだ。しかし、労働契約書や、労働条件通知書などの重要な書類すらも捨ててしまう人が非常に多い。中には、雇用保険被保険者証や年金手帳ですら紛失してしまう人もいる。
このような書面は、万が一労働紛争に陥った時には非常に重要な意味を持つ。紛争により会社と関係が悪くなってからこれらの書類を手に入れようとするのは大変な困難を伴う。下手をしたら、嫌がらせの一環で交付してくれないかもしれない。
サラリーマンとして働いている方の全てが、過酷な労働紛争に巻き込まれるとは限らない。むしろ、そのような人はごくわずかだろう。しかし可能性はゼロではない。現にあなたの周りを見渡せば、何らかの不利益を受けて会社を追われた人は一人か二人は居るものだ。
よって、紛争になった時に手元に何も残っていない事態を防ぐためにも、配布された書類は例外なく保管しておくことが望ましい。そうすることで、紛争になった場合に会社に必要書類を請求することで生じる精神的負担を軽減することができる。
積極的に「記録」する
「記録」という行為には、「~のためにも記録しておこう」という労働者本人の積極的な意志が必要となる。
ボイスレコーダーで「記録」するならば、自分自身にとって使いやすいレコーダーを選別・購入し、相手の声をクリアに記録するための練習をしなければならない。メモで「記録」する場合も同じである。何をメモしておくかを学び、実際に今日あった出来事を詳細に記入していく、という行動を必要とする。
今は、携帯電話にもボイスレコーダー機能が備わっている。また、ペン型や腕時計型の商品もたくさん出回っている。これらの道具の使い方をマスターし、しかるべき場所と機会で、目指すべき内容を記録する。以下でいくつかのレコーダーを挙げておきたい。
◆Panasonic ICレコーダー 4GB ホワイト RR-XS455-W
◆OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek VN-703PC ブラック 4GB+micro SDカードスロット VN-703PC
どのようなものを保管するか、そしてどのような記録を残しておくか、については、 様々な証拠の活かし方 ~労働法違反の基本的対処法③ のカテゴリーで詳しく説明したい。
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