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ブラック企業の不当な要求・違法行為に安易に同意しない

ブラック企業と戦う可能性があるならば、不当な要求や違法行為に、特定の場合を除いて同意をしてはなりません。このページでは、同意してはならない理由と、あえて同意した方がいい特定の場合、そして同意してしまった場合の対処法を説明します。

ブラック企業の不当な要求には、基本的に「拒否」で望む。しかし同意した方がいい場合もある。

基本姿勢は「同意しない」

 会社の言うこと、要求してくることに対しては安易に同意しないことです。

 この点については、会話を録音してない時でも同じです!とにかく安易に会社の要求に「同意」しないことです。

 同意の撤回は難しいです。面談の場で脅迫じみた会話をされて同意したのなら、民法96条の強迫による取り消し・民法95条の錯誤無効で対応できるかもしれません。

 しかし、それは個人の交渉レベルではなかなか難しいでしょう。

 とにかく、恫喝されてもいいので、「同意」はしないことです。また、思わず撤回したとしても、証拠は集めつつ、次にある面談で撤回し拒否すること。そしてその内容を録音しておくこと。

完全拒否が不利になる場合

 注意点を一つ。不当な行為をされた時には、不当行為自体を拒否しつつ、命令には応じたほうがいいでしょう。命令に従わないからと言って懲戒処分をしてくる可能性があるからです。

 (例) 嫌がらせの転勤命令について、完全に同意はしない旨を会社に告げつつ、とりあえずは転勤命令には従う

止むを得ず同意してしまった場合の対処法

 会社の不当な要求に同意するなと言っても、ワンマン一族経営会社のような無法地帯会社では、同意拒否によって解雇されたりするのを恐れ、同意してしまうかもしれません。

 むしろ、そういうケースがほとんどだと言ってよいでしょう。同意してしまったら、後は従うしかないのでしょうか?

 このケース、非常に難しい問題と言えます。労働者が、同意を覆す法的な根拠は、「錯誤による無効」です。

まず、「錯誤」とは何かを知る・・表示行為の錯誤と動機の錯誤

 錯誤には、「表示行為の錯誤」と「動機の錯誤」があります。

 何やら分かりにくいですが、結論から言いますと、言った人が後から「無効だ」と言えるのは、「表示行為の錯誤」だけです。「動機の錯誤」は、意思を発した時に、意思を発した動機が表示されている場合のみ無効を主張できます。

 「表示行為の錯誤」とは、Aさん(言った人)が行った行為から推測される意思と、Aさん(言った人)の心の底の意思とが食い違ってることであります。

 (例) Aさんは1万フランで売るはずだったのに、書き間違えて「1万ドルで売る」と書いてしまった場合です。

 学説・裁判実務とも、表意者が無効と言えるのは、原則ではこの「表示行為の錯誤」だけです。

 「動機の錯誤」は、例を挙げて説明したほうが分かりやすいです。会社から労働条件の変更を迫られたAさんは、変更の同意をしなければ会社に解雇されると思い、しぶしぶ同意をした場合です。この場合、しぶしぶであれ、Aさんの心の底の気持ちは「変更の同意をしたい」であります。錯誤したのは、同意したいと思うまでの過程で錯誤したのであり、Aさんの内面と表示結果は一致しているのです。

 では、動機の錯誤の場合、全く無効を主張出来ないのでしょうか?例外がありまして、上の例の場合、「解雇されるのは嫌だから同意する」と表示しているならば、後から無効が主張出来るのです。さっき軽く触れましたね。

 錯誤について、錯誤が成立するための要件がもう一つあります。それは、表意者(言った人)に重大な過失がないことです。重大な過失とは、普通の人に一般に期待される程度の注意を著しく欠くことです。

 先ほどの、フランをドルで間違えて売る、という例で具体的に話します。もしこの間違いを、証券会社のプロディーラーが間違えた場合、プロなのに単純なミスをした、ということで重過失になりやすいのです。

では、会社の不当行為に同意してしまった場合は?

 「同意しないと解雇になりそうだから同意します。」「同意しないと給料下げられそうだから同意します。」というふうに、動機の部分を表示しているならば、後から無効を主張できます。学説も判例もこれは認めてます。

 しかし、なかなか明確に同意を表示することも無いのではないでしょうか?散々押さえつけられてる状態で、一体どうして言えますか。下手な会社なら、動機を明示するだけで「反発的な態度」「生意気な従業員」と思われてしまいます。また、会社に必要以上に自分の弱みを見せるようで、絶対言いたくない、という人もいるでしょう。

 そのような会社では、会社の面談で口を挟んだり、自分の本心を言うことなどタブーでしかありません。本当は言ってもいいのです。しかし、現実では、極めて言いづらいし、言いたいと思わないのです。

 よって、学説・判例のこの考えは、絵に描いた餅である、と思います。多くのケースで役に立たない、机上の救済の道だと考えています。実際のトラブルでは動機の錯誤が多いのに、こんな方法でしか救済の道が無いのは、法の不備・抜け穴と言われてもしょうがありません。

 ですから、解雇を恐れ、黙って同意した従業員にとっては厳しい戦いとなるでしょう。しかし、黙示で動機が表示されたと考えられる場合は、無効が主張できる場合もあります。

 それは裁判などで総合的に判断されるため、手軽な救済の道、とは言えません。会社の不当行為から従業員の同意に至るまで、もしくはそれまでの会社の従業員に対する態度の状況を判断して、従業員が明示すら出来ずに同意したことが認められれば、無効主張が認められる可能性があるのです。

 裁判は、非常に手間のかかる制度です。しかし今は労働審判・あっせん・調停などの、手間と費用が比較的かからない制度もあります。

 完全にあきらめずに、まずは主張してみることです。会社がもし動機の錯誤は無効を主張できない、と言ってきたら、それらの裁判外の制度でまず戦ってみるのもいいと思います。

 個人で参加可能な労働組合に加入し、会社に団体交渉をしてもらうのも手。しかし、かなり勇気のいる方法です。職場に居づらくなるかもしれません。どの方法を取るにも、進退を賭ける覚悟は必要だと思います。

 私は進退を賭け、破れ、会社を去りました。残念ですが、私は敗れたのです。しかし、会社にしがみつく気持ちから自由になり、今は日々の希望と誇りに満ちています。

 何が勝ちで、何が負けなのか、いまだに言い切ることは出来ないのでしょうね。皆さんの後悔のない闘いを期待します。

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