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ブラック企業と戦うための「詳細なメモ的日記」証拠の作り方

(このページは2023年2月19日に更新されました。)

ブラック企業の労働基準法違反と戦う際に、証拠は欠かすことのできないものとなります。

こちらが抗議をして、違反行為が収まるならば、証拠など必要ありません。しかしブラック企業は、こちらが抗議をしたぐらいで行為を止めることなどほぼありえません。幾たびの労働闘争をしてきましたが、抗議をしただけで収まった事例など一件もありませんでした。

そうなると、公の場で判断をしてもらうしかなくなります。このサイトで取り扱っている、個人の労働法違反では、簡易裁判所もしくは地方裁判所がメインの争いの場となります。その場で権利を主張し、その権利が主張できる根拠事実を立証するためには、「証拠」が必要となるのです。

証拠というと、会社が発行した文書や、パワハラ・セクハラ時の音声・映像証拠などを思い浮かべるでしょう。違反行為に直接触れていない労働契約書なども、有給休暇の権利発生を争う際などで、証拠文書となり得ます。

そして、相手方の行為によった証拠のほかにもう一つ、このページで詳しく解説する「詳細なメモ的日記」があります。「詳細な」とあるため「作成が難しいのでは?」と思うかもしれませんが、そのようなことはありません。書く際のポイントは、以下の3点のみです。

撮るタイミングや事前準備の兼ね合いで、録音証拠というのは残すのが大変難しい証拠となります。しかしメモ的日記であれば、本人が少し手間をかける覚悟があれば、相手の都合やタイミングに関係なく確実に残すことができます。

「日記?メモ?そんなもの、書き換えもできるし、証拠になるの?」という疑問がわくでしょう。しかし、上記3点を守り日頃からコツコツ記録を残しておくと、文書や録音との合わせ技で大きな信ぴょう性を与え、和解を有利に導くなど、効果的な役割を果たすことがあるのです。

このページでは、「詳細なメモ的日記」の効力と、それによってもたらされるやる気の湧く効果、そして「詳細なメモ的日記」の残し方について、皆さんが迷うことなく、今日この時から作成を開始できるように解説していきます。

「詳細なメモ的日記」の役割~「点」的証拠の「録音」「文書」を補う役目を持つ「線」的証拠の「メモ的日記」

「点」的証拠の「録音」と「線」的証拠の「メモ的日記」で立証活動を始める

詳細なメモ的日記は、録音を補う役目を持っています。 詳細なメモ的日記によって重要な要所にて労働法違反があったことを書き記し、あったことを裏付ける証拠として、他の書面や録音証拠を提出します。

このふたつの証拠の合わせ技で、裁判官に「原告の主張する事実はあったようだな」という感情(心証・しんしょう)を湧き起こさせ、こちらの主張を認めさせます。

つまり、「労働法違反が行われた期間中に起こった原告の主張する違反の出来事が本当にあったかどうか」についての証明は録音した音声や会社側が配布してきた文書で証明し、メモ的日記によって流れをこちら側の主張する違反が行われたプロセスを示し説得力を持たせるのです。

つまり「録音」は点、「詳細なメモ的日記」は線の証拠と言えるでしょう。その二つが合わさって出来事同士のつながりと連環が明白になり、説得力を増させるのです。

※片方の証拠だけしかなくても悲観する必要はありません。あくまで2つあれば望ましい、というだけのことと捉え、主張を必ずすること。そうすれば、こちらの主張を書き連ねた訴状(申立書)に、会社側は反論をしなければならなくなり、そこから和解などの道が生じる可能性が生まれます。

「詳細なメモ的日記」は改ざんが容易という点で、証拠能力が低い、とされるケースもあるのも事実です。その疑念を軽減させるため、作成上のポイントを後述します。よって落胆などせず、この瞬間から日記をつけていきましょう。

具体的な効果は?

「裁判上の和解」・「本人尋問」において裁判官を味方につける可能性

録音や文書などの「点」的証拠が乏しくとも、「線」的証拠の日記が事実の発生ごとに詳細に書かれているならば、それを見た印象はかなり違ってきます。

その都度書かかれた日記は、意外と書き加えが目立つため、その都度書いていれば、そのような目立つ箇所もなく、信ぴょう性が増すためです。そして時系列が矛盾なく整然としている主張は説得力があるため、その信ぴょう性は高いものとなります。

裁判官が心の中で「この事実はあったかもしれない」という感情を抱くと、その感情に従って以下の結果を生む可能性が生じます。

  • 裁判の途中で行われる裁判官主導の「裁判上の和解」の試みについて、示される和解案が原告に寄り添った内容となる可能性
  • 裁判の後半で行われる「本人尋問」において、裁判官が原告の日記の内容の信ぴょう性を判断するため、裁判官自ら被告会社にとって厳しい尋問を行い、その時の被告の対応・返答によって原告の主張が正しいのではないかという思いを強める可能性

メモ的日記の説得力効果・具体例

 例えば、賃金の改定の通知です。当然賃金計算期間に入る前に通知をしなければなりません。

 その通知がなされたとしても、その通知日が通知書や掲示板に全く記載されていなかったら、例え賃金計算期間に入ったのちに通知がなされたとしても相手が言い逃れをすれば、遅れて通知がされた事実を証明出来ません。(※この賃金のケースについては他にもいろいろ問題はありますが、今は例え話で挙げました。監督署では、賃金減額通告時期も最近はシビアでは無いようです)

 そこで、詳細なメモがあれば、それぞれの違法な行為の時系列・流れ・つながりを知ることが出来、一体いつ、録音された面談や一方的な通知がなされたのか分かりやすくなります。

「詳細なメモ的日記」書き方(1)~なるべくパソコンにではなく「ノートに自筆」で書く

どんなノートに書いてもいい。とにかく、今日から日記を取り始めよう。きっと間に合う。

記録するノートは何でも構いません。裁判では、ノートそのものではなく、該当箇所の写し(コピー)を提出するからです。※裁判官が職権で「原本(ノートそのもの)を提出してください」と言うことがありますが、滅多にありませんでした。

本人の筆跡で書かれ、なおかつ改ざんが目立ち安いノートならば、明らかに大幅な修正がなされていない限り、本人がその日に書いたことが推測できるので、訴状に書いてあることを裏付ける・証する能力(証拠能力)は、パソコンより高くなります。

私の周りの事例です。隣家のトラブル時に、相手の言った内容や態度、その時の天候や自分の気持ちなどを詳しく書いて、簡易裁判の調停で損害を見事に賠償させたという例があります。

リアルに書かれた内容は、判断する人(裁判官・審判員・調停員)に「記載されている内容が本当にあったのだろう」と推定させます。

ブラック企業の代表者のような、傍若無人で思いやりのない人間であっても、リアルタイムで記載された手書きの文書は、その内容が真実をありのままに記載されている限り、争う気持ちをなえさせます。

被告に何らかの行動と立証を促す効果がある。だからあきらめないで!

訴状で原告(ここでは労働者)が主張したこと(請求の事実)については、被告(ここでは会社)は、「否認」・「不知」・「認める」・「争う」と反論書(答弁書)で記載し、否認し争う理由とその理由を示す証拠を提出しなければなりません。原告の主張に対し、何ら反論もせず、もしくは反論などをしてもその理由を示し証しなければ、裁判官などの判断する人は、心の中に「原告の主張は真実かもしれない」という気持ちを持つのです。

判断者の心中にそのような疑念を抱かせることは、裁判では大きな成果です。上述のように、「有利な和解案」や、「本人尋問中における、裁判官による被告への厳しい質問」を引きおこす成果を招くからです。

よって、録音が取れなかったからといって落胆せず、今あなたに出来ることをしましょう。在職中であればいくらでも後から補えます。もちろん、離職後であっても可能です。弱い証拠の補いかた・録音・メモ以外の各証拠の活かし方については、各証拠の特徴・活かし方 ~労働法違反の基本的対処法③でも紹介します。

「詳細なメモ的日記」書き方(2)~メモ的日記に記録しておいた方がいい事項を決め、リアルに書いていく

 詳細なメモ的日記で強い証拠の効力を得たいならば、主に以下の点を記載してください。

(1)「日にち・天気・その日社会で起きた出来事」~日記が「リアルタイム」で書かれていることを示すために書く

詳細なメモ的日記の最大の弱点である「信ぴょう性」。法的手段等を採ることになって初めて、慌ててまとめて書かれたメモでは、「主張の事実は本当にあったのだろうな」という気持ちを、裁判官等の判断者に湧かせることは難しくなります。

そこで、メモ的日記には、記載する際「日にち・天気・その日社会であった出来事」を書いておきます。これが信ぴょう性を必ず担保するとは限りませんが、リアリティを持たせるうえで自分で出来る最低限の行動として、必ず記載しましょう。

大変ではありますが、何事も無かった日も、日記をつけておくことがベストです。この(1)と他の(2)~(5)をリアルタイムで書き続けることで、メモ的日記に信ぴょう性を持たせていきます。

(2)「その日に会社で起きた出来事の時系列と内容」~日記の「線」的証拠性質の中核となる内容。詳しく書こう

事実を直接証明する「点」的証拠の「録音内容の反訳書」・「文書(書面)」などのつながりを示し、時系列を明確にする記載内容です。

労働トラブルにおける公的機関の判断要素には、問題行為につき会社が通知・行動してきたタイミングは非常に重要となります。よってメモ的日記に、その都度記録を残しておくことで、訴状等で主張する際、メモ的日記を証拠として引用・参照させることができます。

よって時系列と行動の内容を詳しく書きましょう。内容が詳細であれば、当然その記載内容は信ぴょう性を増し、こちら側に有利な印象(心証)を得ることができます。

(3)「言われた内容(詳細)と自分の感情」~ハラスメントは「言われた人の感情が基準」だから効果大

ハラスメントであるか否かは「問題となった行為を受けた人間が、行為・言動を受けた際苦痛を感じたか否か」が認定に基準であり、行為者側の都合(思惑や意図)は一切関係ありません。つまり、受けた言動について、受けた労働者が詳細なメモ的日記に、言動の内容と、その時の経緯、言動を受けた際の感情をしっかり記録しておけば、リアリティのある証拠が作成できるのです。

最近(2023年2月19現在)では、ハラスメントにおける認定の基準がしっかりと固まりました。

この記事を一番最初に書いた頃は、いまだハラスメントであるか否かについて、言った人間の主張(俺はそんなつもりで言ったんじゃない系の言い訳)が認定に影響を与えていました。

しかし現在はそのような見苦しい言い訳は入り込む余地がなくなったのです。

ハラスメントがあったことを証明する代表的な証拠は録音や録画ですが、そのような証拠は現実問題として残すのが大変難しい証拠となります。メモ的日記であれば、その日家に帰って記載するだけなので、作成に際する人の邪魔などは心配ありません。

ハラスメントを受けた際の状況を詳細に記録しておくことで、裁判官(審判員・調停員)の心の中に「このことは本当にあったのだろうな」という気持ちを起こさせることができ、有利な展開を招き入れることができます。

(4)「自分の体調」 ~時系列との合わせ技で、「うつ」「過労死」「過労自殺」事案対策の記載内容となる

最も悲惨な結果を招く恐れのある紛争事案たる、過重労働や過重な責任による「過労」や「ストレス」。心身の異常を証明するためには、病院の発行する診断書だけでは、そのすべてを証明することは困難です。

メモ的日記に「己の体調」もしくは「配偶者の体調」を記載しておくと、(5)で示す過重時間外労働の記録との合わせ技で、体調不良・うつ発症との因果関係を示すことができます。

時間外QC活動によるストレスが加わり、悲しい結果を招いた労働紛争において、家族の記していた日記が裁判で過重労働を証するものとして評価され、遺族の請求が認められた裁判もあります【平成17f年・豊田労基署長過労死労災給付請求事件】。

(5)「サービス残業させられたなら、させられた細かい時間と、指示した人・残らざるえなくなった経緯」~タイムカード打刻を禁じられた悪質なサービス残業対策

未払賃金請求事件の代表的事案たる「サービス残業代」の請求。

サービス残業では、タイムカードを打たせてもらえないのが当たり前です。また、異常な量の時間外労働や休日出勤においても、会社・本人の手元に何らかの形で記録が残るような行為はさせてもらえません。

この悪質な対応に対抗する手段として、実はメモ的日記が大きな役割を果たします。残業を強いられている最中に、職場で撮った写真などと合わせて、裁判等で証拠として提出することで、未払残業代を勝ち取る可能性を高めます。

サービス残業が始まった時間、終わった実際の時間、そしてもっとも重要な「残業を指示し、かつタイムカード打刻を禁じた」人間を記載します。禁じた時間はハッキリと覚えておき、記録に残しましょう。その際強制するような言動があったならば、それも書き加えておきます。

「詳細なメモ的日記」書き方(3)~毎日もしくは書き残す事実があった日に必ず書く

毎日書くことは、メモ的日記の信ぴょう性を増加させる効果が期待できます。「詳細なメモ的日記」が裁判で証拠として採用されるか否かは、裁判官の心証(気持ち)次第ですが、採用してもらう確率を高めるためにも、毎日もしくは書き残す事実があった日に必ず書いていきましょう。

自筆で書く、その行為は極めて自然で人間的な行為。その時の書き方などは、後日完全に再現できないのです。その時の書き方とか、文面とか、そういうものが微妙に違っているため、後日意図的に修正された箇所は、相手にも分かるものです。

つまり、後日証拠が必要となった際に慌ててまとめて書いた部分は、字の雰囲気や記載内容など、その部分だけが浮いて見えるものであり、それは一見して、まとめて書いたものだな、と分かるものです。私自身、労働組合闘争における仲間の戦いで、被告がその点を指摘してきた経験は幾度となくありました(労働紛争では、それくらい詳細なメモ的日記を提出することが多い)。

毎日書くことが難しい場合は、書き残す事実があったその日、その時に、必ず書いてください。これは必ず守ってください。

書き方(2)で挙げた事項は、事実があった都度、リアルに細かく書き残されていることが信ぴょう性を与えるのです。リアルに細かく書き残すための方法は、「事実があったその直後にすぐに書き残す」ことなのです。

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