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ブラック企業と戦うための経済的な準備を始める

 ブラック企業と戦うための経済的な準備をすることの意義と、その準備方法について詳しく説明するページ。労働紛争に大敗しないための、具体的で現実的な経済的準備方法を紹介します。

 古来より、兵站(輸送・補給・経済的試算等)を軽んじる将軍や君主は、戦いで手痛い敗北を喫してきました。あなたもこのページを読んで、経済的準備の重要性を理解し、実行してください。

経済的な準備をすることの意義

大敗を避けつつ、勝利の可能性を高める・・・それこそ意義。

 経済的な準備をすることの意義・・・それは「大敗を避けつつ、勝利の可能性を高める」。その一言に尽きるでしょう。

 このサイトで何度も言っていますが、労働者にとってブラック企業は、強大な敵であることに間違いありません。経済力も桁違いに豊富だし、戦うための人的資源(人材)も労働者をはるかにしのいでいます。また、労働者を会社から追い出す、黙らせる、という目的においては、情け容赦がなく、悪びれることもありません。会社に反旗を翻すことに躊躇しがちな労働者とは、目的を成就する気迫が違います。

 そんな冷酷・傲慢で強大な相手に、わずかな資源でスパッとスマートに傷つくことなく勝てるケースなどほとんどありません。こちらがいくら証拠や正論をもって対峙しても、会社はきっと屁理屈や嘘をならべ、労働者にとって一番過酷な「持久戦」へと引きずり込んでくるでしょう。その場合労働者も、会社を休職するなりの苦肉の策をもって、相手の戦法に対処しなければなりません。

 そして、どんな戦術をもって戦うにしても、戦いの期間を支える経済的な拠り所が必要となるのです。

 経済的な拠り所がしっかりしていれば、戦いの最中生活費のことで悩まれされず、家族からの圧力も小さいものとなります。

 逆に、経済的な拠り所が弱い場合どうでしょう?紛争期間中の臨時出費のたびに、本人や家族がお金の不安を覚え、気持ちが乱れ、絆が崩れてきます。そのマイナスな状態から脱しようと、不完全な段階で無理やり戦いから離脱したり、家庭内不和を生じたりします。

 戦いで家族の絆や私有財産を失う・・・それこそが最悪の結果、大敗だといえます。事前の経済的な準備は、最悪の結果を防ぎます。準備の段階で経済的な拠り所が得られなかったら、戦いそのものを控えればいいのです。逃げることによる一時の屈辱よりも、家族や財産を失う苦痛の方が、くらべものにならないくらい手痛いものなのです。

戦いのプロは戦術よりも兵站を語る。あなたもそれを見習おう。

 古来より、戦いのプロフェッショナル(名君主・名将・名軍師・名宰相等)らは、戦場での用兵技術(兵の動かし方・戦術)よりも、軍の物資と食料を支える兵站(補給活動等)の方が戦争の勝敗を決する、ということを知っていました。

 我々はどうしても、戦場での鮮やかな戦術だけに目を奪われ、それだけで戦争の帰趨が決すると考えがちです。しかし、鮮やかな戦術でたとえ一時戦局が有利になったとしても、兵站活動で弱さを持つ軍隊はその部分を攻撃され、兵力をしぼりとられて不利な状態に引きずり込まれていきます。

 会社側に労働紛争のプロフェッショナル(ベテラン総務担当者・弁護士・社会保険労務士等)がいたとしましょう。彼は確実に、労働者からの反旗に対し、合法的なラインギリギリ、もしくは少し越えたあたりで、労働者の経済的に弱い部分を攻めてきます。

 会社内で嫌がらせをし出勤できなくし、給料を支払わないことで労働者を自主退職に追い込む。労働者が早期解決を目指して民事調停を申し立てたとしたら、不誠実かつ譲歩の意思のないまま出席し、最後の最後で調停を不調に終わらせ、裁判まで持ち込ませようとする(多くの労働者は、解雇等の裁判になりそうになると、その煩雑さから自らあきらめてしまう)・・・・。枚挙にいとまがありません。

 よって我々は、最も過酷な相手方の戦術を理解し、予測し、紛争期間中の大きな拠り所をなる経済的基盤を日頃から作り出しておくのです。経済的基盤がしっかりとしていれば、相手のもちこんだ持久戦戦術をも、弾き飛ばせるようになります。

経済的な準備の方法

 会社と闘うため経済的な準備には、大きく分けて二つの準備がある。その二つとは、以下のものである。

 この二つの準備のどちらも、ないがしろにはできない。計画を立てること怠れば、無計画で行き当たりばったりな行動で時間とお金をロスする。周囲の理解を得ずに単独で行動してしまえば、一番大事なものを失う危険が生まれる。

まず、計画を立てる

 「経済的な準備」で最も多くの時間を使わなければならないのが、「計画を立てる」という作業である。大まかに述べよう。計画を立てるには、細かなお金の計算が絶対に必要である。

 下の一覧を見て欲しい。ざっとこれだけの計画・準備を立てるのである。以下でそれぞれの計画の立案方法を詳しく見ていきたい。

  • 1.毎月の家計の出費の現状を正確に把握する。その中で「生活にどうしても必要な支出」以外のものがあれば、それを控える。
  • 2.入ってくるお金の予想を立てる。残業代をあてにせず、残業が全く無かった場合の収入だけで計算をする。
  • 3.退職して戦う人ならば、雇用保険から支払われる失業保険の金額をできるだけ正確に計算する。
  • 4.それぞれの収入源の支払日を把握し、その状態で生活費をまかなえるか予想する。貯蓄の切り崩しは、最後の手段とする。
  • 5.仕事をしないで闘いに専念できる期間を区切り、その期間は権利の主張のためと、「これからどのように働き、どのように生きていくのか」を真剣に考える期間と定める。

 下図を見て欲しい。以下で下図を参考にしながら、それぞれの計画の立案方法を詳しく見ていきたい。

計画の参考となる流れを示した図

1.毎月の家計の支出を正確に把握し、余分な支出を控える

 会社と闘うとなれば、それは戦争状態、つまり有事になるのである。有事の時、どんな国でも自国民に質素倹約を強いるものである。労働紛争も全く同じである。紛争が起こる前の、残業代・賞与を問題なくもらっていた時と同じ生活はできない。闘う以上、それら基本給以外の収入は無くなると思った方が良い(場合によっては基本給自体ももらえ無くなるかもしれない)。

 そんな切羽詰まった現状において手っ取り早くできる対処法は、支出を減らすことである。そして支出を減らすためには、今自分の家計が何にお金を使っているのか正確に把握することが必要となる。把握したうえで、使わなくても生活に問題無い支出をピックアップする。

 使わなくてもいいお金・・・それは、効果のよく分からない健康食品・見栄で使い続けているお金・五感の抹消を満たすためだけの娯楽費などが挙げられるだろう。人によってはそれらのお金の使い道が生きがいとなっているかもしれない。どうしても止められない場合は、「会社と闘う選択肢」をあきらめなければならならい。

 「生活に必須の支出」以外の支出を止めないで闘う労働者もいる。そして止めないでも勝利したケースもあるだろう。しかしほとんど多くの闘う労働者にとって、余分な支出を止めないで闘うことは、不利な条件をより増すことにつながる。

2.入ってくるお金の予想を立てる

 支出を把握したら、今度は収入である。

 紛争時の収入は、十中八九減少すると言ってよい。先ほど把握した「生活に必須の支出」を下回る収入しか予想できなかったら、新たな準備と行動が必要になる。場合によっては、闘うこと自体を止める選択も考える。

 その「収入」であるが、あなたに入る様々な収入の中で、確実に手にすることができるものだけを見極めるのである。そしてその収入だけをアテにする。

 会社は、労働者が自ら会社を辞めていくような状況に追い詰めることを得意とする。例を挙げてみよう。

 強引に配置転換をし、従来の給料水準と慣れ親しんだ環境を奪う。職場イジメで出勤不能にし、その間の給料を支払わない。残業代をさせなかったり、賞与の査定を大幅に下げたりする。賞与は一定の条件がそろわない限り、会社に支払う義務は無い。残業をさせろ、という権利は、労働者には基本的には無い。残業できなかったら、当然残業代はゼロになる。そのほとんどが経済的圧迫につながる手口である。

 あなたに対する敵対心に満ちた相手(会社)は、経済的に容赦なく締めあげてくる。払わなくてもいいお金は一文も支払わない。その過酷な中で、あなたが法的にもらう権利のあるお金を選別し、その額を把握するのだ。

 入ることが確実でないお金をアテにすることは、紛争中の経済的破綻を招き、戦意喪失による敗北につながる。この敗北パターンは驚くほど多い。

3.雇用保険から支払われる失業保険の金額をできるだけ正確に把握する(退職して戦う人の場合)

 退職して戦う道を選んだ人には、雇用保険から支給される失業保険は確実に入るお金としてアテにできる。どのような手続きが必要か?一体いくらもらえるのか?いつ支給されるのか?を必ず把握しておきたい。

 雇用保険からの収入の良いところは、手続きさえ行えばほぼ確実に支給されることだ。会社の悪意は入り込む余地はほとんどない。

4.各収入源の支払日を把握し、必要な時にお金が手元に入るかを理解しておく

 この4番目の作業は、貯蓄がほとんど無い労働者にとって特に重要である。収入のアテがあっても、それが必要な時に手に入らなければ、手元にお金が無いのも同じである。

 必要な時に必要な分のお金が無いのでは?という不安は、意外にも大きな不安となる。そのような目立たないぼんやりとした不安が、家族間(特に配偶者間)の不和をもたらし、戦意を喪失させる。

 よって、確実に入る収入をピックアップすると同時に「いつ、いくら、どのように入ってくるのか」を確認するべきである。「だいたいこのくらいの日にちでは・・・」程度では不完全である。

 先ほど「貯蓄ない労働者には特に重要」と書いたが、蓄えがある労働者にも是非取り組んでもらいたい。なぜなら、「お金が不安だから貯蓄を切り崩せばいい」という安易な姿勢はやがてクセとなり、労働紛争という空しいイベントのために貯蓄をいたずらに減らすことになるからだ。そのお金は、あなたが人生おいて少しでも幸せになるためのお金である。身勝手な使用者の引き起こした労働紛争のために、できるだけ使わないで欲しい。

5.仕事をしないで闘いに専念できる期間を把握する

 計画を立てる過程の最終段階である。あなたが使用者との闘いに専念できる期間をハッキリさせる。

 その期間はできるだけ多くの時間を、「労働紛争を終わらせ、平穏な生活に戻る」ために使う。最終目的を定め、中間目標で道筋を明確にし、小目標を一つづつ潰していくことで、心から望む結果に近づいていく。

労働法違反に負けないための戦略論参照

 そういった戦略的・計画的な時間の過ごし方を送るためには、不安事は少ない方がいい。いや、なるべく無い方がいいのだ。専念できる期間を明確にすることで、その間は小目標の実現にわき目も振らず打ち込める。集中できる。

 紛争期間中は、勉強・読書・職探し・交渉・自分の心との対話など、やるべきことがたくさんある。それらの重要な時間を、不安によって乱されしまうのは大きなマイナスである。

 職探しをし始めた方がいい時点が到来したら、勝敗よりも生活の安定を目指して、気持ちを切り替えていく。そのような合理的かつ計画的な切り替えは、決して「逃げ出した」とは言わない。周到に練られた闘いは、勇猛さだけが取り柄の無計画な突撃よりも、はるかに相手にダメージを与える(たとえ主張が通らなかったとしても、である)。

周囲(主に家族)の理解を得る

周囲の理解を得ないことは、後の深刻な不和を引き起こす

 よほどのことが無い限り、あなたは周囲の人(主に家族・親族)とつながりながら生きている。労働紛争のような一大事であっても、大切な人の気持ちや考えを無視することはできない。

 上で述べた「計画を立てる」という準備は、そんなかけがえのない人とのつながりを守るための準備でもある。そしてその準備を進めつつ、あなたの心からの言葉によって理解をしてもらうのである。

 何度も書いているように、労働紛争は金銭的な試練を私たちに与える。金銭の問題は、そのまま生きていくこと、教育や健康につながる。家族の理解を得ないで強引に進むと、紛争突入後の苦境の中で深刻な不和を招く。このような結果の原因を作った使用者に対する憎しみの気持ちも加わって、あなたは精神的に潰れてしまうだろう。

 紛争に突入する前は分からない。苦境に立たされて初めて、理解を得なかったことの重大さが理解できる。深刻な不和を招いた状態から理解を得るのは極めて難しい。前もって取り組んでおきたい準備である。

周囲の理解を得る方法とは?

 さて、理解を得るためには何をした方がいいのだろうか?

 理解を得るには3つのことをするべきである。紛争になって収入が下がっても何とか生活できることを、目で見える形で示すこと。闘う期間を明確に区切ること。そして、紛争にかける真剣な気持ちと計画を守る決意を、誠実に打ち明けること、である。

 人間とは、たとえ大切な人の言葉であっても、口先だけでは心から信用できないものだ。目に見える形でプランを示すことで、相手の理解を得やすくなるのは間違いない。だから計画を立てることは重要なのである。

 計画を立てることで、闘うことのみに専念できる期間も明確に把握できる。自分の頭の中だけでぼんやりと考えているだけでは、話すべき相手に分かりやすく説明できない。闘う期間が明確になることで、周囲も「その期間だけなら・・・」と理解を示しやすくなる。

 そこまでしたら最後に、計画を守ることを宣言する。そして、なぜ使用者と闘うのか、その気持ちを偽りなく示す。闘う理由は気取らなくてもよい。それで理解が得られないのなら、相手の考えをよく聞くことである。相手の身になって考えてみる。そして互いにとって満足が得られる決断をする。

 そこまで話して紛争を取りやめるなら、それは逃げたことにはならない。見ていて素晴らしい、勇気ある決断である。身勝手な使用者のために発生した労働紛争を見限り、大切な人とのつながりを守ったのだ。

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