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ブラック企業と戦う準備が整うまで「宣戦布告」は控える

 このページと、次の 労働法違反の会社に対抗するための準備~安易に同意しない! は、『心の準備』を述べるページです。

 この2ページには、証拠を効率よく取り、かつ孤立しないために大変重要な内容が書いてあります。ここでしっかりと頭に入れておきましょう。

 このページは、「宣戦布告」について説明します。ブラック企業と戦うための準備段階で犯しがちなミスとして、準備も十分に出来てない段階で宣戦布告してしまい、戦う前に嫌がらせを受け不利な状況に陥る、というケースがあります。よって、宣戦布告を控える意義と、適切な時機に布告をするための知識を説明します。

なぜ「いきなり宣戦布告すること」は控えるべきなのか?

 なぜいきなり宣戦布告してはいけないのでしょうか?それには、以下の二つの理由が挙げられます。

  • 宣戦布告により会社が警戒し、証拠の収集が非常にしにくくなるから
  • 宣戦布告をした労働者に対し、会社の露骨な嫌がらせが始まるから

 各理由について、詳しく見ていきましょう。

宣戦布告により会社が警戒し、証拠の収集が非常にしにくくなるから

 準備未完了のままの宣戦布告は、ブラック企業の警戒心を瞬時に湧き起こさせ、ガードを固くさせる結果を生みだします。

 おおよそブラック企業というものには、法律に明るい専門家がバックにいるものです。それら法律の専門家たちは、会社と顧問契約を結んではいますが、非常事態で無い限りは平素から密に連絡を取っているわけではありません。

 しかし、従業員から宣戦布告されたら、ただちに経営者は専門家に相談をします。有事発生だからです。会社は専門家と連絡を取り始め、会社にとって不利なあらゆる証拠を、アドバイスを頼りに隠滅・改ざんし始めるでしょう。

 そうなると非常に厄介です。警戒した会社からは、弁護士ですら証拠を取ることは難しくなります。ガードを固めた会社から証拠を取得するには、証拠保全手続き等の複雑な司法手続きを行うしかなく、それらの手続きの煩雑さに音を上げることになってしまいます。もちろん、保全手続きをしても証拠が消されていれば、その努力は無と帰します。

 よっていきなり宣戦布告しないことが鉄則となります。

 相手が油断してやりたい放題をしている間にしっかり証拠を取って、後々首根っこを押さえることができる準備をするのです。したたかに、隠密やスパイのように、心に刀を忍ばせ、相手の違法性のある言動を拾っていきます。 相手が油断しているときは、恫喝や脅迫、人格否定など、ありとあらゆる違法性を伴った発言をしてくれます。

宣戦布告をした労働者に対し、会社の露骨な嫌がらせが始まるから

 「目の上のたんこぶ」は、取り除きたいと思うのが人情でしょう。宣戦布告をした労働者は、従業員を押さえつけたいブラック企業の経営者にとっては、「目の上のたんこぶ」以外の何物でもありません。

 例え会社の行いが冷酷非道で非難されるべきものであっても、そんなことは関係ありません。労働者に非が無くても、経営者が「邪魔だ」と思えば、容赦なく嫌がらせを受けることになるでしょう。

 私の知人に、「自分は間違っていないから」と言って堂々と会社に宣戦布告をした人がいました。しかし宣戦布告をした1時間後に、さっそくとんでもない遠隔地の部署に異動命令が出されました。彼は即座に休職をして会社に対抗したのですが、証拠もない状態での持久戦は経済的基盤が弱かった彼にとって耐えられるものではなく、戦い開始から早い時期に撤退を余儀なくされてしまったのです。

 ブラック企業の非道に対し、声をあげて戦いを挑んだ彼はとても立派です。しかし彼には「会社の行いを公的機関に知らしめ正す」という目標がありました。その点では、いきなり宣戦布告をしたことは、目標達成のうえで大きなマイナスであったと分析できます。

 証拠を集めた後や、労働者の横のつながりを確保した後、または経済的メドをつけた後に宣戦布告をしたならば、きっと違った結果を得ることができたでしょう。

ブラック企業に対して「宣戦布告」をする適切な時機とは?

 宣戦布告をする適切な時機・・・それは、以下の3つの時です。

  • 証拠の収集が完了した時
  • 戦いの期間を支える経済的なメドがたった時
  • 労働者同士の横につながりを確保した時

 理想は、これら3つの準備がすべて完了した後に宣戦布告をするのがベストなのです。しかし、時間的余裕が無い場合等に、これらの準備の完了を待っていたのでは、状況がどんどん不利になる可能性があります。

 よって、宣戦布告をしないと状況がどんどん不利になったり、耐えることが精神的・経済的に限界に達した場合に限って、己の抱える紛争にとって欠かすことのできない準備が完了した時点で、宣戦布告をすると良いでしょう。

 各準備はそれぞれ大変重要ですが、準備未完了でも、各準備ごとに宣戦布告してもよい場合を少し説明しましょう。

「証拠の収集」が未完了でも宣戦布告して良い場合とは?

 ブラック企業の違反行為を公的機関に示し、行動をとってもらうためにも、証拠の収集は欠かすことができない準備です。

 パワハラ・セクハラ・社内いじめ・残業代未払い等、内密な準備と収集で証拠が得られる紛争形態では、この準備はかならず完了させてから宣戦布告をしてもらいたいのです。

 しかし、証拠そのものが会社の人事総務等の部署によって厳重に管理されているような場合、内密に収集することはほぼ不可能です。そのような証拠は、労働者が労働基準法等の法令によって定められた権利に基づいて直接会社に請求する必要があり、その行為自体が宣戦布告となってしまいます。

 よってこのような場合は、他の二つの準備をなるべく完了させてから、証拠を請求(宣戦布告)しましょう。この準備が未完了でも他の二つの準備がしっかりと完了してあれば、戦いによるダメージは最小限に抑えられるでしょう。

「経済的なメドを立てること」が未完了でも宣戦布告して良い場合とは?

 この準備が未完了な状態で宣戦布告するのが一番危険だといえます。また、経済的なメドを立てることは、誰の干渉も受けることなく出来る個人的な準備なので、出来ない理由はありません。是非とも完了して欲しいのです。

 この準備をしなくて良い場合・・・しいて言えば、ブラック企業を完全に去るつもりで、次の就職先を探している場合でしょうか?その場合でも、転職するまでの経済的なメドは立てるべきです。

「労働者同士の横のつながり」の確保が未完了でも宣戦布告して良い場合とは?

会社に残る意思が無いならば、労働者同士の横のつながりを確保することにこだわらなくてよい

 労働者同士の横のつながりを確保する目的は、嫌がらせ行為で孤立してしまうことを防ぐためです。

 悪質な経営者は、宣戦布告をした労働者を職場で孤立させ、精神的に追い詰め、退職させます。その時用いられるのが、部署のたらい回し・仕事を与えない・同僚らに無視を強要する、などの卑劣な手法です。その会社にとどまり続けようとする労働者にとっては、あまりに残酷な行いですね。

 逆を言えば、会社に残り続ける意思がないのならば、つまり会社を去る決意をしている労働者であるならば、労働者同士の横のつながりが無くても問題が無いことになります。

 そこである不安が出てきます。横のつながりを確保しないままに失職したら、会社に残っている同僚らの協力(裁判での証言・証拠取得の手助け等)が得られないのでは?という不安です。

 そんな不安はする必要はありません。どちらにしろ、会社に残っている同僚らの手助けなど、ほぼ期待できません。同僚らは経営者ににらまれることを恐れるが故に、会社を去った者に力を貸すことなどありえないのです。それが労働紛争における現実です。どれだけ仲の良かった同僚であったとしても、同じことなのです。

外部労働組合に加入して戦う場合でも、本当に親しい同僚の理解だけは得ておく

 外部労働組合に加入する場合、横のつながりなど不要だ、と思われるかもしれません。しかし、この場合であっても、本当に親しい同僚の理解だけは得ておきましょう。

 この場合には、親しくもない同僚の理解など、全く不要です。そのような人間は、必ず心の奥底であなたの立場など思いやってもくれないからです。戦いにおいて、心の奥底で何を考えているか分からない人間など、近くに置くべきではありません。最悪の場合、寝首をかかれることもあります。

 しかし、ほんの一握りの心が通い合った同僚には、是非とも理解をしてもらいましょう。その時「表だって協力してくれなくてもいい。あなたに迷惑がかかるから。しかし心の奥底では味方であってほしい。経営者の命令で私を無視する場合でも、どうか心の奥では味方であってほしい。」と告げます。

 戦いで孤立気味のとき、心の中で分かってくれている人がいる、と思えるだけでどれほど救われるか。それは私も身にしみて実感しています。

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