「地上の星」は、誰にも評価されない名もなき労働者たちの歌

中島みゆきさんの『地上の星』は、発売されたときはそんなに目立った歌ではなかったが、ドキュメンタリー番組「プロジェクトX」の主題歌としてじわじわと売れ続け、とんでもないロングセラー曲となりました。

途中でプロモーションビデオの内容も変わったくらいです。中島さんは紅白中継で黒部ダムにて歌い、またそれがヒットに影響を与えました。

しかし私は、「プロジェクトX」で取り上げる主人公たちと、この歌で歌われる名もなき星たちが、ミスマッチのような気がしてたまらなかったのです。もちろん、世間はそんなこと感じてもいなかったでしょう。あくまで私だけの考えです。さらっと聞き流してくださいね。

『地上の星』で歌われる星(英雄)たちは、本当にマイナーな人間たちだと思います。マイナーだけだったら、プロジェクトXの主人公たちもマイナーです。しかし彼らは、後世に語り継がれる大工事・大事業・技術革新を成し遂げ、そして評価されています。

私の考える『地上の星』の星たちは、それすらもない。マイナーで、かつ自らが行った仕事について、世間から評価されることもほとんどない。直接感謝もされない。ましてはテレビで取り上げられることもない。社会にとって必要な仕事をしているが(仕事に不必要な仕事などないだろうが)、ちやほやもされず、空気のように必要なのだがあまりに目立たなく当たり前すぎてほとんど誰にも意識されない存在。

私は、そんな風に歌を、星たちを解釈していたから、歌が番組中で流れても、鳥肌が立ったりすることはなかった(もちろん、番組中の主人公たちの努力と情熱は、すさまじいと思ったが)。番組自体もほとんど見ませんでした。同じ理由で、カンブリア宮殿やガイアの夜明け系の番組も見ません。

私はこの歌が流行っている頃、非正規雇用の機会工として働いていました。そこで目の当たりにした景色も、この気持ちを確信させているのでしょう。

そこでは、非正規雇用の日本人労働者も、外国人労働者も、皆一生懸命働いていました。仕事をこなすことが精いっぱい。課せられた作業目標を達成すれば、即座にトヨタの『カイゼン』の餌食になり、また難題を突き付けられる。当然、私たちは小間使いゆえ、いつまでたっても褒められることはありませんでした。

しかしそこで働いていた非正規の仲間たちは、抱えているモノ、守るべきモノ(家族・誇り・夢・恋人)のためを思って、会社に評価されなくとも黙々と、時に弱音や愚痴をいいながらも人間らしく働き、すべきことをこなしていたのです。

私はあの人たちの姿を思い出すとき、『地上の星』が頭の中に流れる。そして、その時こそ、胸が震え、鳥肌が立つのです。

その後も私は、多くの「名もなき星」たちに巡り合い、時に意気投合し、時に大きな影響を受けてきました。

いろんな人がいました。

故郷に家を持つために、真夜中のコンビニで働いていたシングルマザーの人。娘の夢(大学卒業して大学院に行き研究者になる)を実現させたいがために、労災隠しをされても会社にしがみついて所得を守った、会社の人事課のアホ若造曰く「無能なおやじ」。トヨタ系の得意先に横柄に怒鳴られても、いつも笑顔で皆を不快にさせないことを心がけていた、品質管理の再雇用のおじいさん。

私にとって、この人たちは、まさに『地上の星』。

この人たちは、このような事情があって耐え忍んでも、誰も評価してくれない。多くの人に、「だから何?」で片付けられるだろう。でも、そこに私は、心を揺さぶられる。彼らも、自分の目指すべきものに対して向き合う、『挑戦者たち』だ。

きっとこの人たちを題材にして「プロジェクトx」が作られ、そして『地上の星』がバックミュージックで流れたら、泣いてしまう。

いや、この記事を打っている今でも、目頭が熱くなっている。今この人たちは、どこへ行ったのだろうか。

・・・・この記事を書いてから、早いもので、5年たちました。最初に書き始めてから、何度も加筆し、「地上の星」たちにわたしなりの応援歌を歌ってきました。

彼らのあの時の、誰にも評価もされないけど黙々と己の目標への突き進む姿勢に感銘を受けて、私自身の究極の目標へと向かって、人のいない場所で練習に打ち込んできました。

一定の段階へと至り、今やっと、自分のしたいことのスタートラインに立つことができました。きっとこの成果は、「地上の星」たる名もなき労働者の皆さんからもらったもの。ありがとうございました。これからも、忘れません。

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