『リデルハート  戦略論 間接的アプローチ』~私の活用例「相手が油断してないうちは、わが兵力を打撃に投入するな」編

リデルハートの『戦略論』は、私のように歴史の大好きな人間にとっては、実に面白い本であります。

しかし歴史に関わる知的好奇心を刺激するだけではありません。この本は、実生活においても本当に役立ったのです。

例えば、過去の労働トラブルにおいて、会社から情報を仕入れた時の話を例にとってみましょう。

懸念となっていた事案について、社内での規程をどうしても確認したかった。しかしその会社では、規程は上司の机の中においてあり、周知義務が果たされていなかった。

その会社では、従業員が規程を確認するだけで『不穏な行動』ととられてしまう前例があり、誰も規程を確認しようとするのものは居なかった。

さて・・・どうする?

労働者の権利をかざして、堂々と規程の周知を要求するのか?しかしこれは現実的には実に愚かな行為である。そう言った瞬間から、ここの会社で平穏に仕事をするのは難しくなります。

そこで、自分がこれから長期休暇を取る可能性を示唆し、そのために休暇規程がどうなっているのか教えて欲しい、と相談しました。

まだこの方法は、自分がそれほど目を付けられていない状態だからできたことであります。自分が会社に警戒の目を向けられていた場合には、この方法も難しかったでしょう。もし目をつけられていたならば、採るべき方法もまた変わっていたはずです。

確かに、この行為は偽りを伴います。しかし、そうすることで、後々の会社とのコンタクトでも、このお願いした内容を利用することが出来ます。

労働紛争に関しては、紛争が表だって直接に火花を交える状態になるまでは、なるべく水面下で準備をしていくのがいいのです。

そうすることで、相手の頑強な抵抗のもとで戦わなければならない愚行を避けることが出来ます。

相手が油断しているうちに、できるかぎりのことを行う。そして相手が警戒しているときは、その警戒を落ち着かせることが必要です。

この例では、会社側に友好的に「教えてもらう」ことにより、油断を誘い、そして後の行動をしやすくする意味がありました。もちろん、このように当時から考えて行動していたのです(もっとも、そのあとの性急な行動で、この努力も無駄にしてしまいましたが・・・)。

『相手が油断してないうちは、わが兵力を打撃に投入するな』

リデルハートさんのこの考えは、私たちに日常生活の些細な場面で、結構用いることができると気づくでしょう。

※参照文献 『戦略論』(森沢亀鶴訳・原書房)

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