年次有給休暇を取得するには、その日が労働の義務を免除されていない日である必要があります。
仕事をしている間に、仕事のためにケガや病気をして療養のために休業している場合、それらの休業の日は労働の義務が完全に免除されていません。
なんだか労働の義務が完全に免除されている気もしますが、その期間は働けないから休業しているだけなのです。
よって労災による休業期間中は年次有給休暇を請求し、かつ取得することが出来ます。
この期間中の有給休暇の申請による使用者の拒否はできるのでしょうか?
できません。労働の義務が完全に免除されていない以上、使用者には請求に応じ付与する義務があるのです。
では、使用者による時季変更権はどうでしょうか?
『あなたが有給休暇を取りたいと言った日に与えると事業が回らなくなるから、与えることはできない』という反論です。
結論から言いますと、時季変更権も行使できません。
なぜなら、すでに労働者は休業していて、取得しようとする日も仕事ができないハズです。つまり当該労働者が休業している以上、その労働者の有給休暇取得日も労働者は仕事上の戦力としては考えられておらず、労働者に対して事業の正常な運営を妨げる・・・という理由での変更権行使はできないからです。
労働者はすでに労災で休んでいます。
そしてその休んでいる期間中の一部を有給休暇として使いたい、と言っているのです。
つまり今現在も、有給休暇取得希望日も、当該労働者がいなくても事業は回っているのです。
おそらく会社は、労災保険制度の『休業補償給付』で我慢をしておけ、という考えだと思われます。
しかし休業補償給付は平時の賃金の60%しかもらえないので、有給休暇をもらうことは労働者にとってとても有利だと言えます。しかし会社にとっては賃金を払う必要が生じるので、快くない。
会社が有給休暇取得を拒否するならば、真摯に話し合う必要があります。ケンカでなく対話で両者の思惑を満たしましょう。