ブラック企業と戦うことを決意した人の中で、古来の兵法を読んでみたい、と考える労働者の皆さまに、私が読んだ本の中で薦めたい「孫子の兵法」を取り扱った本を紹介したいと思います。意外とよく質問されるからです。
あなたにお薦めしたいのは以下の3冊です。
「孫子」(浅野裕一)
「現代語訳 孫子」(杉之尾宜生)
「全訳・武経七書 孫子・呉子」(守屋洋)
私のサイト「ブラック企業の労働基準法違反に負けない!応援サイト」において兵法の解説・活用法をする際に勉強したり参考にしたりした本の一つです。これらの本について、あなたが選ぶ際に参考になるように解説していきましょう。
まずは、講談社学術文庫より出版されている「孫子」(浅野裕一:著)です。
浅野さんは軍事の専門家ではありませんが、この本の中で展開されている解説は、「この人は軍人なの?」と思わせるようなものが多いのです。もちろん、よくよく読めばそのようなことはないのですが、解説は非常に的を得ており、詳しく、最初に読む本としては最適だと思っています。
解説が詳しいからといって、その内容はビジネスの解説などは無く、孫子、という文献に対して真摯に解説がなされています。解説の口調はなかなか手厳しく、断定的ですが、その点がかえって面白く、理解も深まります。この本に関しては、今でも何度も読み返しています。文庫本なのでサイズが小さく、何かあるときは持って行く、そんな感じの便利な本でしょう。
次は、日本経済新聞出版社より出版されている、「現代語訳 孫子」(杉之尾宜生:著)です。
杉之尾さんは、防衛大を出て、その後自衛隊で国防に当たった「職業軍人」?の方です。今は戦史研究家であり、彼の書いたこの本は、軍人視点での解説がなされています。実際、この本の執筆に当たり参考文献とした「孫子」は、軍事関係出身の方が書いた本であります。
この本で特筆すべきは、各篇の最初に体系図が用意され、直後に要約があることです。まずこの部分を読み、その後本文を読んだ後にまた両部分を読み直すことで、理解が深まります。「労働紛争に対処するためでなく、これからの人生のためにも孫子を研究していきたい」と考える向きの方には、以後の人生において大変役に立つテキストとなるでしょう。
最後は、プレジデント社より出版されている「全訳・武経七書 孫子・呉子」(守屋洋:編著)です。
守屋さんは中国文学の研究者であり解説も文学的ですが、「孫子」という古典を優雅に味わうには素晴らしい本です。実用一辺倒の勉強もいいのですが、今は戦国時代ではないのです。「孫子」そのものを味わうことで、あなたなりの活用方法が頭にわいてくるかもしれません。
この本には、他の武経七書の一つである「呉子」も収録されています。「呉子」は「孫子」に比べれば短く、より好戦的な感じなので、興味のある方は読んでみるといいでしょう。あと、「武経七書」と書いてある通り、「孫子」「呉子」のほかにもあと5つ、兵法があります。武経七書についてはまた触れますが、それらも一読すると、中国兵法のエッセンスが感じ取れるかもしれません。
・・・兵法は、ざっくりと言えば、戦いの心構えや戦略思想について書かれた本です。読む側は、具体的なマニュアル内容を期待せず、兵法のエッセンスを自分なりに理解して、目の前にあるブラック企業との戦いに活かすべきでしょう。
「孫子」は、他の古今和洋の兵法に比べ、読む側に自由性があり、活用もしやすいと思います。ぜひ、興味のある方は読んでみてください。