年次有給休暇取得日の賃金は、以下の3つのうち一つでなければならない、とされています。
(1)平均賃金・・・労働基準法第12条に定められている。
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金・・・労働基準法施工規則第25条に規定されている。
(3)健康保険法第99条第1項に定める標準報酬日額・・・健康保険法第40条第1項において定められた標準報酬月額の30分の1
この3つのうちどれにするかは、労働者が有給休暇を取得する時に、使用者がその都度この3つの中から自由に選択するものではありません。
この3つのうちどれにするかは、就業規則であらかじめ決めておかないといけないのです。そして就業規則等で定めたら、その定めた方法で必ず支払わなければなりません。
具体例で説明しましょう。
「たびたび有給休暇を取得するAが気に入らないから、Aに対しては支払う額が抑えられる『平均賃金』での賃金を支払っておけ」
このような、行き当たりばったりで恣意的な支払方法の選択は許されないのです。就業規則や、就業規則で別に定めるとして任された賃金規程で定められた支払方法で、差別なく公正に支払われなければなりません。
ここは意外と守られていないのですね。
実際、就業規則等で「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金で支払う」と定められているのに、使用者の胸三寸で平均賃金やまったくでたらめな額によって賃金が支払われている場合は、かなり多いのです。
ですから、有給休暇の取得に快い顔をしない会社に勤めている労働者の皆さんは十分に警戒して欲しいのです。
そのような会社は、就業規則等で有給休暇取得時の賃金支払い方法すら規定されていない場合もあります。
いい加減な対応にだまされ続けないためにも、一度、あなた自身の『所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金』がいくらになるかを計算しておくといいでしょう。
これは有給休暇取得時に支払われる賃金を正確に把握するための第一歩です。
多くの会社は、この(2)の支払い方法を採用するケースが多いので、知っておくのは無駄になりません。