悪徳経営者と戦う時の心構え
◇労働法違反にあなたの貴重な時間を使わずとも、悪徳経営者は天に裁かれるのページでは、悪徳な使用者と戦う事のむなしさについて語りました。よって、このページで述べる内容は、そのページの書いてあることと矛盾していると感じるかもしれません。
ですがこの社会には、悪徳経営者との戦いを避けられないケースもあるのです。本ページでは、戦う道を選んだ労働者の皆さんに対し、私や先輩の経験・兵法などの教えを元にした心構えの持ち方を書いていきたいと思います。
悪徳経営者との戦いに遠慮は禁物 ~その危険性と「六韜(りくとう)」の考え
「遠慮」は、戦意を喪失させ、戦いの継続を不可能にする考えを招く
今まで働いていた会社に対して宣戦布告し権利を主張することは、なかなか出来る事ではありません。働いていた期間が長ければ長いほど、その会社の経営者や上司たちとも交流も長く、非情になり切ることができないのは無理もないことです。
その心の隙に、以下のような考えが忍び寄ってきます。
- 今はひどいことをされているが、長年働かせていただいた。その恩まで忘れたくはない。
- 今はひどいことをしているが、社長にも事情がある。その辺りは汲まないといけない。
- これくらいのことなら、皆我慢しているのではないか?私はわがままなのではないだろうか?
今までお世話になったという気持ちを持つことは、平素では全く悪いことではありません。ですから、戦う時でも相手を徹底的に憎むべし、とは決して言いません。
しかし、お世話になったからとか、相手にも事情があるから、などといって攻めるべき個所(決勝点)を徹底的に崩せないようでは、戦いそのものの姿勢が中途半端となります。
その結果、機を失い、機を失って戦意を失い、戦意を失って戦うことが困難になります。一度旗を挙げ引っ込めたあなたに、今まで通りの職場環境が待っていることは稀です。
労働者に比して会社は強大国。遠慮して勝てる相手ではない
どんな小さい会社であっても、経済力の観点でいったらおおよその家計の経済力よりも上であります。労働紛争を「戦争」という観点からみると、経済力の大きい会社側に有利なのは間違いありません。
経済力が有利であれば、紛争が長引いたとしても自ら旗を降ろさなくても済みます。調停などの短期解決方法を拒絶して、労働者側に不利な持久戦法(裁判等)をちらつかせることが出来ます。
経済力が有利であれば、労働紛争に明るい専門家を雇い、彼らの力によって戦いが出来ます。労働者との交渉段階から弁護士・経営コンサルタント・社会保険労務士・税理士などの悪知恵を存分に利用できます。これは労働法に明るくない労働者にとって計り知れない脅威となります。
そのように、あらゆる面において自分よりも強大で戦闘力が高い相手に遠慮などして、一体どうして勝機を見出すことができるでしょうか?
ここは徹底的にこちらの権利を認めさせるための戦略を考え、その戦略にそって容赦なく事を進めていくことでしか、悪徳使用者の牙城を崩すことは出来ないのです。その時に、上で述べたような遠慮する気持ちは妨げでしかありません。
※労働紛争における労働者のための戦略については 労働法違反に負けないための戦略論 を参照。
中国の古代兵法「六韜」に学ぶ心構え
『六韜(りくとう)』は、中国の優秀な七つの兵法書(武経七書)のひとつに挙げられています。国と国との戦いについて述べられた書物ではありますが、今なお戦う立場・競争する立場の人間にとっては多くの示唆を与えてくれます。
悪徳使用者と戦う決意をした人にとって、これらの優れた兵法に述べられた処世術・戦略・戦術は、是非とも取り入れたい考えであります。
ここではそんな『六韜』の一節を引用してみましょう。悪徳経営者と戦う時の心構えとして、実に有益な一節があります。
「日中には必ず彗(さら)し、刀を操(と)れば必ず割(さ)き、斧を執(と)れば必ず伐(う)て。日中に彗さざる、これを時を失うと謂(い)い、刀を操りて割かざれば、利の期を失い、斧を執りて伐たざれば、賊人、将(まさ)に来たらんとす。」
『物を干すならば昼間の日が高い時に干すべきであり、刀をとった以上は必ず人を殺め、斧を振るう時は必ず物を切り落とすべきである。
日中に物を干さないと時期を失ったことになり、刀を取って殺めるべき時に殺めなければ時期を逸したことになる。斧を手にしながら伐(き)ることが出来なければ、かえって敵の襲撃を受けることになる。』
※書き下し文・現代語訳ともに『六韜』 (中公文庫)・文韜:第七より引用
この一節は、国家が自国の防衛のために攻めるべき時・反撃するべき時に、すでに振り上げた武器・兵器を使って事を起こすのをためらうのことを戒める文です。
ためらっていると、武力を行使する好機を失い、反逆のタネはますます増大し、手がつけられなくなる、という教えにつながっていきます。
悪徳経営者との戦いも同じではないでしょうか?
今までの想い出や恩によって経営者に攻勢をかけるのをためらっていると、こちらに有利な証拠が採れなかったり、権利を主張するための手続きの時期を逸したりします。
そうなれば後々権利を主張するのに必要以上の労力を強いられたり、最悪権利の存在を認められず戦いが完全な徒労に終わる危険があります。
刀を振り上げた以上、覚悟を決めて躊躇せず行動を全うする。そうでないと、ただでさえ不利な労働者にとってはより厳しい戦いとなってしまいます。
「今までお世話になった会社に容赦せず」は恩知らずではないか?という意見について
「今までお世話になった会社に対して、”徹底的に容赦なく戦いを遂行する”なんて極めて恩知らずの非道な行為ではないか?相手も根っからの悪人ではないし、事情もあり、家族もいるのでは?」
ブログ等で、悪徳経営者と戦う時の心構え等について触れると必ず指摘される意見であります。「和をもって貴しとなす」的な日本国民ならではの、素敵な意見であります。しかし相手がそう思ってくれてない限り、そのような考えで戦いに挑むのは、極めて危険な結果を招く可能性があります。
不当な行為をしてくる点で、もはや会社はあなたの人権を軽視している
悪徳経営者は、法律で禁止された不当な行為だと認識していて、あなたに対して不利益を強いてくるのです。
もし使用者のする行為が労働者に不利益であったとしても、そこに止むにやまれぬ事情があったならば、貴方自身が権利を主張しようと思うでしょうか?
悪徳でないなら、その使用者はきっと労働者に十分な説明と「申し訳ない」という気持ちを示すハズであります。
恐らく、多くの紛争の原因たる行為は、当然のように悪びれる様子もなくされたが故に紛争に発展したのです。
悪びれもしない悪徳使用者が、あなたが反旗を翻し理をもって権利を主張したからといって、反省し情けをみせてくれるとは到底思えません。”自分より下の人間に謀反を図られた”などという、人間軽視の感情をもって、激しい反攻を仕掛けてくるでしょう。
そんな時に、相手にも事情が・・・などと言っていれば、そこは格好な付けいられるスキとなります。弱みを見せた時の、悪徳使用者とその背後にいる専門家たちのやり口は、凄惨で陰湿です。そんな事態は絶対に避けなければなりません。
不当な行為は、努力して稼いで蓄えたお金・稼ぐ機会の両方を奪う重大な行為。それを知ってて行う悪徳経営者は強盗も同じである
機を逃さず徹底的に戦うことが恩知らずの非道な行為とは言えないと説く根拠として、悪徳経営者の罪深さが挙げられるでしょう。
悪徳経営者はあなたに不当な行為をすることによって、あなたから「慣れた職場で働いて賃金を得る」という労働者としての安心を奪い取ったのです。
例えば、あなたが不当な行為によって会社を去らざる得なくなったとしましょう。次の職場をみつけ収入が安定するまで多くの時間を要します。
多くの時間を要するということは、その間今まで貯めたお金を食いつぶさないといけないのです。そして仕事をみつけたとしても、多くの場合収入は減り、そこでも貯蓄を食いつぶさないといけない。不安定な期間が半年もかかれば、手持ちのお金を何百万単位で失うことになるのです!
また、今までの慣れた仕事ではなくなるので、精神的な負荷はかなりのレベルに達するでしょう。慣れた環境を本能的に愛する人間にとっては、看過できない仕打ちであります。
悪徳経営者が不当な行為をして追い詰めなければ、労働者は慣れた職場で働き続ける事ができ、お金も奪われなかった。
そしてそうなることは、悪徳経営者は想像がついていた、それでも構わず自社と自己の利益のためにやってきた。そして悪びれる様子もない・・・。
戦う道を選んだあなたが、躊躇する理由などありません。徹底的に戦うことは非道な行為ではない。あなたが行動を起こすことによって、これから悪徳経営者に関わる多くの人が救われる可能性すら出てくるのです。
悪徳経営者は、かならず自らの暴力によって自滅する。その自滅の過程の一つが、あなたからの正当な権利の行使だっただけなのです。
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