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知っておこう!パートの不当な解雇(雇止め)を裁いた裁判例

非正規雇用社員の解雇(雇止め)については、多くの判例(裁判例)が出ています。このページでは、不当な解雇と戦う時に役だつそれらの判例を紹介し、解説していきます。

昨今では、パート従業員に対する配慮もなされる風潮になってきました。しかしパートということで、いまだに不当な解雇(雇止め)が根強く存在します。この卑劣な扱いに苦しむパートの方々にも是非参考にしてもらいたい裁判例です。

「解雇権濫用法理」が、非正規雇用社員の解雇(雇止め)に類推適用されるには?

「解雇権濫用法理」の意味を、ここでもう一度確認しよう

 解雇権濫用法理とはいったいなんだろうか?この言葉を聞くと、内容は極めて難しそうに聞こえます。簡単に言うと「使用者は正当な理由なくして労働者を解雇できない」ということです。

 そもそも、民法上、解雇は自由に行えることが前提です。しかしそれでは、経済的基盤の弱い労働者が生活に困窮してしまう事態を招きます。

 そこで、民法第1条3項を応用して、数多くの労働裁判の中で、使用者の解雇権の自由に一定の制限を加えてきました。そうして確立されたのが「解雇権濫用法理」です。

 この法理の精神は、労働基準法第18条の2を経て、労働契約法第16条によって明文化されました。その16条を見てみましょう。

 『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 ”無効”とは、効果のないことを言います。つまり、世間一般にみて解雇に合理的で正当な理由がないときは、会社の行った解雇は効果が無いことになり、解雇の効果が生じないことになります。

 では以下で、この法理がどのようなケースの雇止めに類推適用されるか、見てみましょう。

どういった場合に、雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるか?

 どういった場合に、パート等の有期雇用労働者の雇止めに、解雇権濫用法理が類推適用されるのでしょうか?結論から言うと、労働者に更新に対する期待が生じるような事例がたくさん見られた時、その労働者の期待を保護するために、解雇権濫用法理が類推されます。

 その、生じさせる事柄は、いくつあり、それを全部満たしていなくても類推される時もあるし、全部満たしていても類推されない場合もあります。つまり、個々の事例ごと裁判は結論を出しているのでですね。

 以下で、そのいくつかの類推され得るための条件を見てみましょう。類推適用に関しては ◇非正規雇用労働者のクビ(雇止め)はしょうがないのか?権利を主張できないのか? でも既に触れているので、併せて参照にしてください。

  • 有期雇用労働者の業務内容が臨時的でなく、一般的で恒常的な業務である場合
  • 相当数契約更新がされており、期間の定めのない雇用契約と実質的に変わらなくなっている場合
  • 契約更新の手続きが毎回行われているが、厳格でなく形式的な手続きとなっている場合
  • 雇用がこれからも続き、契約も更新され続けていくのだろうな、という期待を有期雇用労働者に抱かせる発言がみられる場合
  • 同じような地位にある有期雇用労働者の更新において、雇止めの例がほとんどない場合

 ・・・先ほどの言いましたように、必ずしもこれらを全部満たしている必要はないようです。労働者が更新期待を持つような状況を総合的に判断して、裁判所は当該労働者に対する解雇の是非を判断しているのです。

非正規雇用社員の解雇(雇止め)についての裁判例の傾向・分類

 「雇止め」の裁判例としては、以下の4つに大きく分類できると言われています。これらの分類は、2002年の「有期労働契約反復更新に関する調査研究会報告」によるものです。

 これらについて、以下で詳しく説明しましょう。

純粋有期契約タイプ

 純粋有期契約タイプに属する判例としては、有期雇用労働者が明確に有期契約であることを認識している・更新手続きが厳格・雇止めの例がその職場で多い、という特徴がみられるグループだといえます。

代表的裁判例:亜細亜大学事件

 他の大学との兼任状態・業務の度合いなどが、専任教員と異なっていた。また、使用者による雇用継続を期待させるような言動がなかった。

 よって、契約更新回数が20回、雇用継続期間が21年にわたっていたが期間の定めのない雇用に転化したとはいえず、「期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があるとも認められない」と判断した。

実質無期タイプ

 外見的に期間の定めのある雇用契約であっても、反復更新の回数や、契約更新時の手続きの厳格さの低さから、実質的には期間の定めのない雇用契約と異ならない、とされるグループ。

代表的裁判例:東芝柳町工場事件

 2か月の雇用契約を5回~23回更新していた臨時工らが雇止めにされた時に争われた裁判。

 更新が繰り返して行われた実態から、雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約になっていた、として労働者の訴えを認めた。

期待保護(反復更新)タイプ

 期間の定めのない雇用契約とは認められないとしつつも、反復更新されている実態によって、契約更新について労働者の期待が合理的なものだと認められるグループ。

代表的裁判例:日立メディコ事件

 契約更新は反復して行われていたが、契約更新にあたっての契約書は当事者同士の意思に基づいているものだから、期間の定めのない雇用契約とは認められない。

 しかし契約更新の反復から、労働者に雇用継続の期待性があることを認め、それを考慮すべきことを判示した。

 結果的に本件訴訟では、正社員の希望退職の前に行われた臨時工らの雇止めは「合理的な差」によるものである、とし、会社側の雇止め行為を有効とした。

期待保護(継続特約)タイプ

 何か特別な事情等が生じない限り、契約は当然に更新されていくことが前提となっている雇用契約、に基づくグループ。

代表的裁判例:平安閣事件

 この裁判例では、本件雇用契約を、期間の定めのない雇用契約に転化したものと解することはできないとしています。

 しかし、この事件における雇用契約においては期間の定めは一応のものであって、格別の意思表示がない限り当然更新されるべきものとの前提のもとに雇用契約が維持されてきました。

 よって、期間満了によってこの雇用契約を終了させるためには、雇止めの意思表示プラス雇用契約を終了してもやむを得ないと認められる特別の事情が必要なのが相当だ、と論を展開しました。

 会社は期間満了を労働者に主張するのみで特別の事情等を労働者に説明もしていないため、この雇用契約はいまだに存続している、と労働者にとって勝利の判決を下しました。

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