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産休の取得による雇止め(契約更新拒否)は違法。断固戦う!

産休を取得したことを理由とした雇止め(契約更新拒否)が許されない理由と、雇止めされた場合の対応策について説明するページです。

ブラック企業は、出産によって休まざる得ない労働者に対し、その引け目を利用して、もしくは期間満了を理由として巧妙に雇止めを押し付けてきます。そんな卑劣で違法な行為と、断固戦うための知識と戦い方を説明したいと思います。

男女雇用機会均等法により、産休中の解雇・雇止めは禁止されている

まず具体例。Aさんの例。

 Aさんの例をとりお話ししましょう。実際にあった話です。

 パートタイマーのAさんは8月に出産を控え、7月中旬から産休に入りました。その間に半年ごとの契約更新日が来ましたが、Aさんの意に反しパート契約の更新はされず(雇止め)、パートタイマーの身分を失ってしまいました。

 気丈なAさんは、会社の一方的な措置に抗議をしました。でも会社から帰ってきた返答は、きわめて冷酷なものでした。

 雇止めをした理由として会社が挙げたのは、(1)「産休中に契約更新の時期がきて、それに従って当然に契約が満了した」・(2)「Aさんの部署は忙しいため、産休の期間に新たなパートを補充したので、Aさんの居場所がなくなった」の2点でした。

 一見問題がないようにも見えますが、この行為は男女雇用機会均等法の禁じる行為であります。その理由を以下で見ていきましょう。

男女雇用機会均等法ではっきりと禁じられている、産休中の雇止め

 男女雇用機会均等法第 9 条第 3 項では、「産休を理由とする不利益取扱いの禁止」として、会社が妊娠・出産等を理由に女性労働者に対し不利益取扱いをすることを禁止しています。9条の3項を見てみましょう。

事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 法の通達(行政の現場に、業務を円滑に進めるために発せられる指導、みたいなもの)では、「契約の不更新が不利益な取扱いに該当することになる場合には、休業等により契約期間のすべてにわたり労働者が労務の提供ができない場合であっても、契約を更新しなければならないものであること」と通達しています。

 また、均等法の施行規則(法律をうまく運用するための細かい規則みたいなもの)でも、「妊娠・出産等」には、産休を取得すること又は取得したことが含まれるとはっきり言及しています。

加えて、雇用機会均等法の改正によって改めて出された指針では、不利益取扱いには、「期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと」が含まれると規定しています。

もう一度、Aさんの例で考える。

 Aさんの場合はどうでしょうか?

 まず、Aさんの休業は、労働基準法第65条による産休であり、その点において、産休中の不利益取り扱いにあたり、均等法の規定に違反します。この客観的な事実だけで、会社の行為はアウト、ということになるのですね。

 会社は言ってくるかもしれません。「一つの契約期間中すべての期間を産休によって休むパートのために、席を空けておくことはできない。よってパート従業員を雇った。よってAさんは不要なので、更新しない結果に至るのは自然なことだ。」と。しかし、それすらも、通達の言及するところです。「休業等により契約期間のすべてにわたり労働者が労務の提供ができない場合であっても、契約を更新しなければならないものであること」と。

 均等法がこのように明確に禁止をしていても、ブラック企業はお構いなく産休中の雇止めをしてくるでしょう。以下で、そのような事態になった場合の具体的な戦い方を説明していきます。

産休をきっかけに雇止めされた場合の、具体的な戦い方

 労働トラブルにおいて「戦い方」と書くと、みなさんはおおかた「裁判・訴訟」を思い起こすでしょう。しかしそれらの手段は、解決手段として現実的ではありません。

 このようなトラブルに巻き込まれた多くの方は、「復職」もしくは「一矢報いたい」と考えているからです。この二つの結果を実現するために手段として、裁判は大げさで、かつ体力を使いすぎます。

 復職するの手段としていきなり裁判などしたら、復帰後の人間関係に大きな傷を残します。裁判を起こすことは悪いことでは決してありません。しかし現実を見据えないといけません。裁判をして勝利を勝ち取り、復職した後は、容易に、事業主や同僚からの冷たい扱いを受けることが予想できます。

 ですから、まずは会社にお願いをしてみましょう。きっと拒否されます。その結果を得たら、あえて「話し合い」の姿勢を崩さない意味もこめて、労働局の「雇用均等室」へ相談します(こちらを参照)。

 雇用均等室では、相談にとどまらず、「男女雇用機会均等法による調停」をも取り扱ってくれます。「調停」とは、専門家が、事業主と従業員との間に入って、和解するための手助けをしてくれる制度です。

 「調停」は、「裁判」と違い、参加を強制されるものではありません。しかし調停が起こされた場合の参加率と問題解決率は思った以上に高く、行動してみる価値は極めて高いでしょう。

 「調停」には、雇用機会均等法とその問題に精通した専門家が参加して双方に的確なアドバイスをしてくれます。よって、事業主もその場で適当な言い訳や詭弁を言うことができなくなります。逆に、あなたは「話し合いによって解決したい」という意思を相手方に示すことができ、必要以上の関係悪化を招くことを予防できるのです。

 以後のことは、この「調停」が終わってからでも遅くありません。コツとしては、不当な雇止めが発生したら、すぐに行動することです。調停は、即断即決で行われるものではないからです。産休中は忙しいでしょうが、復職を考えている方でしたら、なおのこと、行動は迅速にしましょう。

全国の雇用均等室の所在地はこちら

参考資料・男女雇用機会均等法の第9条第3項が禁じる行為

 最後に、男女雇用機会均等法の第9条第3項が列挙する禁止事項をあげておきます。産休以外の行為で不利益を受けた場合など、あなたの事例・戦いでお役立てください。

・・・・男女雇用機会均等法の第9条第3項は、事業主が、厚生労働省令で定められている事由を理由に、女性労働者に対し不利益な取扱いをすることを禁止しています。

「厚生労働省令で定められている事由」の内容

  • 妊娠したこと
  • 出産したこと
  • 母性健康管理措置を求めたこと又は措置の適用を受けたこと
  • 坑内業務・危険有害業務に就けないこと…又はこれらの業務に就かなかったこと
  • 産休を申出たこと又は取得したこと
  • 軽易業務への転換を請求したこと又は転換したこと
  • 時間外労働、休日労働又は深夜業をしないことを求めたこと又はしなかったこと
  • 育児時間の請求をしたこと又は取得したこと
  • 妊娠又は出産に起因する症状により労働できないこと…又は能率が低下したこと

「不利益な取扱い」の内容

  • 解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • あらかじめ契約の更新回数の上限が示されている場合に、当該回数を引き下げること
  • 退職の強要や正社員からパートタイム労働者等への労働契約の変更の強要を行うこと
  • 降格させること
  • 就業環境を害すること
  • 不利益な自宅待機を命じること
  • 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  • 昇進・昇格の人事評価において不利益な評価を行うこと
  • 不利益な配置の変更を行うこと
  • 派遣労働者について、派遣先が当該派遣労働者に係る派遣契約の役務の提供を拒むこと

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