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有期雇用契約途中で会社を辞めたい場合に我が身を守る知識

有期雇用契約の期間の途中に、自己の都合で辞めることはできないのか?また辞めた場合はどのような責任を問われるのか?について説明するページです。

有期雇用契約を結びいざ職場で働き始めても、どうしてもその職場・仕事になじめず、辞めたいと考えることもあります。その場合、我慢して心身共に傷つく前に退職への道を探ることは、やむを得ない行為であり、非難されるべきではないと思います。

 このページでは、行動に移ったあなたへ知っておきたい知識を説明していきます。己を責めず、引け目も必要以上に感じず、前向きに読んでいただけたら・・・と思います。

まず民法と、それによって生じる結論を知る

民法第628条『期間の途中で解約するには、基本的に正当な理由が必要』

 民法第628条を見てみましょう。

『当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。』

 この条文によると、労働契約に期間の定めがある場合でも、やむを得ない事由がある場合は、期間の途中でもただちに解約できる、ということになります。やむを得ない事由とは、通常「本人のケガ」や「本人の病気」・「親族の看病などで労務を提供することができなくなったとき」など、が挙げられるでしょう。

 では、「やむを得ない事由」以外での退職の場合は、どのような結果が生じうるのでしょうか?

「やむを得ない事由」以外で退職した場合、最悪損害賠償される可能性も生まれる

 民法628条の規定より導き出される結果として、期間途中の退職の理由が、労働者の過失によって生じた場合・勝手に辞めた場合などでは、使用者に対して損害賠償をしなければならない義務が生じます。

 「最悪損害賠償される可能性も生まれる」と書きましたが、そのニュアンスにはちゃんと意味があります。法によるとそうなるのですが、実際には損害賠償請求されることはまれなケースなのです。その点について、以下で触れていきます。

途中解約に対する「損害賠償」の現実・・・めったに請求されることはない

 労働者の方が、勝手に辞めた場合や過失があった場合は、常に損害賠償をしなければならないのか?もちろんそこには、一定の制限があります。下の2つを同時に満たす必要があるといわれています。

  • 損害が具体的に発生していること
  • 使用者が損害の発生を回避する努力を尽くしていること

 つまり労働者に過失があったからと言って、それだけの理由で使用者は労働者に対して損害賠償請求をできない、ということです。

 その過失が生じた場合、損害が発生しないように使用者が努力し、かつ、それによっても具体的に損害が発生した場合のみ、その発生額を請求できるのです。そして、その発生額は具体的に計算し、かつ給料からの天引きも許されず、司法手続き(訴訟・支払督促)において請求しなければならないのです。

 その作業は極めて手間です。その作業を嫌がり、多くの事例では損害賠償まで至りません。有期雇用契約の労働者が途中で退職したことによる実損害の計算は難しく、かつ少額である場合がほとんどであり、事業主もばかばかしくなり損害賠償のための行動をしないのです。

有期雇用契約途中で会社を辞める時の、現実的行動とは?

 まず、「やむを得ない事由」を用意することから始めましょう。その事由が通ってしまえば、事は大きくならずに退職できます。

 「嘘をつくのか」との声が聞こえてきそうですね。でも、我慢して働いて、労働者に深刻な被害が起こってからでは遅いのです。実際、人事側も、有期雇用契約者の途中退職事例は珍しいことではなく、その都度損害賠償などの行動を取ることは非現実的だと考えています。

 「仕事が合わなくてウツになってしまった」という理由を持ち出すならば、事前に心療内科に行き、診断書を書いてもらいます。ウツが途中退職の正当な事由となるかは、各事例において微妙ですが、診断書まであれば、会社(もしくは派遣元)も、必要以上に期間途中の退職に攻撃はしないでしょう。

 要は、会社を必要以上に怒らせず、かつ穏便に済ませる手段を考えるのです。必要以上に怒らせると、損害賠償を持ち出してあなたを脅してくる可能性があるからです。

 例えば、会社が「期間途中に退職して損害が出たから、給料からその分を差し引いておく」と言ってきたとします。損害分の給料からの天引きは、労働基準法の禁ずるところです。しかしあなたが「それで済んで辞めることできるなら構わない」と思うならば、それも選択肢の一つとなるでしょう。

 もし納得できない場合は、そこで反論の意思を軽く表明しておき、いったん身分を失ってから、差し引かれた分を取り戻すための戦いをしましょう。差し引かれた給料を取り戻す戦いのほうが、損害賠償を請求された場合の戦いよりも、精神的に極めて楽なのですから。もうすでにその会社と縁が切れている事実が、あなたを精神的に救ってくれます。

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