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「ブラック企業が開き直り、嫌がらせをしてくる」の対策

ブラック企業の労働基準法違反に泣き寝入りする原因の一つに、会社が開き直って無視・脅迫などの嫌がらせをしてくるため、労働者が耐えられなくなって退職したり我慢してしまったりするというものがあります。このページではその対策について説明します。

「相手を話し合いの場に引きずり出すための戦略を立てること」が対策の基本となる

 「ブラック企業が開き直り、嫌がらせをしてくる」の原因 で会社が開き直る原因を一通り見てきたところで、それらについての対処法を考えていきます。

 会社が開き直ることができるのは、「開き直っても大丈夫であろう」という安心感があるからです。であるならば、その安心感を粉砕しなければなりません。また、使用者の性格が横暴で尊大かつ労働法に無知であるならば、公の場での冷静な話し合いによって、その思い上がりと無知を正さなければなりません。

 使用者を交渉と戦いの場に引きずり出すことができる可能性は、無計画な行き当たりばったりの行動ではほとんど作り出せません。そこには、高らかに反抗の手を挙げる前の周到な準備と秘められたる準備、そして宣戦布告をする時期や仲間との結束など、目標を達成するための戦略的な対応が求められます。

 ※労働紛争の戦略は 労働法違反に負けないための戦略論 を参照。

 一矢報いるだけが目標、みたいな無欲な動機でない限り、ある程度貪欲に結果を出すことにこだわらなければなりません。でなければ、会社にほんの少しのわずらわしさの感情を与えただけで、あなたはいとも簡単に敗れ去り追い出されてしまうでしょう。

 先ずは、とにもかくにも話し合いの場に相手を引きずり出すことを考えなければならない。会社が労働者の権利の主張を無視できず、対応せざる得ないような状態を作りだすことです。

『労働者側に会社の不当な行為を証明する資料がないと思い、「やれるものなら・・」とタカをくくっている』場合に、相手を話し合いの場に引きずり出すには?

 この場合、会社の不当な行為があったことを明確に証明し得る資料・証拠を集めることが真っ先の課題・対策となるでしょう。

 資料・証拠を集めるには、やはりある程度相手方に対して書面の交付等の請求をせねばなりません。しかし労働トラブルにおいては、多くの場合労働者は既に会社から目をつけられ、行動しにくい状況になっているはずです。よってその状況で資料を集めることは多くの困難を伴います。

 ですから、資料集めを一層困難にしないためにも、第一に相手に対して戦う意思を明確にしないこと。そして第二に「自己の戦闘力の高さ」をアピールしないこと。この二つは非常に重要だと思います。

 労働法について、自己の無知さを示しておくことは、相手の不当な行為のエスカレートを招く危険があります。しかしだからと言って、「自分は法に明るい。勉強した。そう出るならこう出る。」と相手を威圧しつつけん制することは、相手の高い警戒心を招くでしょう。ある程度の理解を示しつつ、不当な行為についてはしっかり拒否をしておく。それが基本姿勢だと思います。

 そして、相手に対して明確な宣戦布告をしないことです。「宣戦布告」にはいろんなパターンがあると思います。内容証明をいきなり送り付け、権利の請求を行う。専門家に相談したことを相手に伝え、以後の扱い如何で出るところに出る、と威圧をすること。要は、会社に明確に「徹底的に戦うので、覚悟してほしい」ということです。

 この宣戦布告ですが、労働紛争が紛争である以上、するべきものだと思います。しかしそのタイミングが重要です。資料も集めていないのに宣戦布告をして相手の守りを固めるようでは、城の防御機能の建設の時間的猶予を相手に与え、自ら不利の状況におとしめるようなものです。

※ ブラック企業と戦うための準備 の ブラック企業と戦う準備が整うまで「宣戦布告」は控える を参照。

『労働法等で定められた「使用者が守るべき義務」を知らず・・・』・『「自分より位の低い雇ってやってる人間・・・』の二つが原因の場合に、相手を話し合いの場に引きずり出すには?

 この場合、労働者の団結によってその力を誇示するか、公の機関を利用して強制的に無視ができない状況を作るしかありません。しかるべき資料が集まっても使用者の性質が尊大で横暴である以上、冷静な手段による抑止力は望めない可能性があります。「不当な行為を証する資料があるから、話し合いに応じなければ、後で多くの責任を取ることになってしまう。ここは話を聞いておこう」という冷静な対応は難しいでしょう。使用者の力で押さえつけ、嫌がらせ等で労働者を追い出そうと考える可能性が高いです。

 このような使用者であるならば、もはや「賽は投げられた」のです。資料集めと同時に、公の機関への相談と、団結による影響力の増大に努めるのです。社内で仲間を見つけるのが困難であらば、外部の労働組合を頼ることになります。このような使用者のもとでは、将来安心して生活を送ることは難しいでしょう。職場での地位を覚悟しつつ、やや力強い方法で相手にこちらの意志を見せつけ、強制力をもとに交渉の場に引きずり出すしかありません。

 結成した労働者同士の団結がよほど強いものでない限り、将来のあなたの生活の糧をそのような尊大な経営者のいる会社に求めるのは極めて危険です。ですから戦いの期間は、他の安全な場所(その職場よりも常識的な職場)への逃走時間を稼ぐ期間だと捉えておくのです。

 『逃げるのか!?』と思いたい人間は思わせておけばいい。その会社に身を置くことの危険性は、あなたが一番よく分かっているのだから。周りの中傷や自己のプライドにとらわれ、どうしようもなくなってから追い出されることは、お金や健全な精神状態を失うことにつながります。そのような賭けは断じて必要ありません。

開き直る相手と戦う心構え ~こちらも断固とした意志で戦いを遂行する

 最後に、開き直る会社との戦いにおいて、最も重要な心構えを述べたいと思います。

 労働紛争において、まれに自分を全く傷つけず、相手にも嫌われないことを望みながら、少しの不平と薄弱な意志だけで行動を起こそうとする方がいます。

 そのような方は、「法令や情を無視してでもその労働者を犠牲にして我が身を守ろう」とした非情な会社に、完膚無きまでに叩きのめされるでしょう。私がここまで言い切ることができるのは、それなりの経験があるからであります。

※ 不当な会社との労働紛争は、ルールなき理不尽な戦いとなりがちである 参照。

 「相手にも事情がある」「お世話になった」「子供みたいなこと言ってばかりではいけない」という言葉は、周りで無責任に相談にのったフリをしつつ面白がっている同僚らに多く見られる意見です。そんな意見に心を曇らされてはならない。

 相手を殲滅せんとする意志に欠ける者は、その意志を旺盛に持っている者に敗れ去れさるでしょう。ここで、プロイセンの参謀・クラウゼヴィッツの「戦争論」か一節を引用しましょう。

 『戦争は実に危険な事業であって、このような危険な事業にあっては、お人好しから生まれる誤謬(ごびょう)ほど恐るべきものはないからである。・・・そのさい、一方は、まったく無慈悲に、流血にもたじろぐことなく、この暴力を用いるとし、他方には、このような断乎(だんこ)さが欠けているとすれば、かならず前者が後者を圧倒するであろう。』【淡徳三郎訳・戦争論(現代人の古典シリーズ 10)】と。

 戦う決意をしたら、戦略を立てて勝算を推し量り、決戦に踏み切るか否かを判断する。面白がっている同僚らの無責任な意見に耳を傾けることなく、ただ家族の意見を最大限に尊重し、淡々と事を進めるべきでありましょう。

 会社は遠慮をしていないのに、あなたが遠慮して、一体どのようにして不利な戦いとなりがちな労働紛争に勝利できるのでしょうか?

 相手は強大な力を誇る強者なのです。労働者は労働紛争では、経済的にも人的にも圧倒的に不利なのです。他の条件で勝てないのなら、せめて気持ちだけは負けてはならないのです。

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