「黄犬契約」という不当労働行為の基礎知識と戦い方を知ろう
「黄犬契約」・・・その変わった名前の中身は、労働組合の結束力を奪う恐ろしい不当労働行為なのです。
しかし「黄犬契約」は採用時の、ある意味「密室」と化した場で行われる行為であるため、労働組合はその発見を見逃す場合があります。そして気づいたら、黄犬契約によって生み出された社員ばかりが組合に入り込んでいて、結束力と士気が下がる結果に・・・。
では、労働組合は、その悪魔の契約をどう防ぐべきでしょうか?
それには、採用時に会社と新入社員の間で行われている契約を監視すること、そして黄犬契約に対する断固とした姿勢を、会社に知らしめることです。このページでは、黄犬契約に対抗するための基礎知識と、その具体的な戦い方を説明しましょう。
労働組合法第7条1項1号後段に定められた「黄犬契約」の成立要件
「黄犬契約」は、使用者が以下の内容の雇用条件を労働者に提示したり、結ぶことによって成立します(※本条の解釈として、そう捉えられている【『労働組合法』山口浩一郎】)。
- 労働者が労働組合に加入しないことを雇用条件とすること
- 労働者が労働組合から脱退することを雇用条件とすること
- 労働者が労働組合に入ったとしても、積極的な組合活動をしないことを雇用条件とするもの
この黄犬契約、難しい考えはいりません。読んで文のごとく、使用者が上の事実を行えば、黄犬契約として不当労働行為となるのです。
黄犬契約・・・なんとも変わった名前ですが、その名前の奇異さとは裏腹に、不利益取扱いと同じくらい頻繁に労働の現場で横行しています。
労働組合を結成して会社と対決している場合は、採用時にそのような不当な契約がなされていないか監視していく必要があります。その具体的な施策は後述します。
「黄犬契約」・・・そのユニークな名前の由来は?
「黄犬契約」という面白い名前の由来を説明しましょう。
この言葉の語源は、アメリカにあります。英語では、『yellow dog contract』と黄犬契約を表現します。
英語で”yellow dog”には、「卑怯な裏切り者」という俗意味があります。
よって”黄犬”とは、その英語をそのまま漢字で表現したものなのですね。
また、アメリカには黄色い模様のある犬は臆病な犬であるという常識?通説?があり、上で述べた内容の契約を使用者と結んだ労働者を揶揄する意図でこの呼び方をしているそうです。
それがそのまま日本に入り、”黄犬契約”と呼ばれるようになったのでしょう。
「黄犬契約」との具体的な戦い方
さきほども少し書きましたが、「黄犬契約」を防ぐための最も基本的な施策は、採用時の会社側の行動を監視し、黄犬契約をさせないことです。
しかし採用に関しての事項は、強力な組合が社内にある場合でも、口出しをしにくい領域であるのが現状です。
だからといって手をこまねてい見ていては、組合員がどんどん減り、もしくは組合の団結力が弱まる危険性が生じます。団結力が弱まること・・・それは最も危険なことです。
監視する、という手段の中で、労働組合が行いやすい方法は「新入社員に対するヒアリング」でしょう。
新入社員は会社に対しても従順な存在ですが、会社のトップや人事担当者以上に、現場で密に接する人間に対して気を遣っているのが普通です。新入社員が会社生活に慣れないうちに、労働組合の公式なヒアリングとして、黄犬契約がなされていないか聞き取り調査をします。
新入社員に対しては、会社がいろいろな研修で労働組合の悪いイメージを植え付けるリスクが生じます。そこで、会社の研修と並行して、労働組合の適合性と存在意義を説明する場を設け、その場を借りてヒアリングをするのです。
黄犬契約が行われた可能性がある場合、組合はその真偽を会社に確かめると同時に、新入社員に対するフォロー(新入社員に対して叱責等の報復を決して行わないよう会社に念を押すこと)をしなければなりません(※フォローは必ず行ってください!)。
黄犬契約は、放置しておくと、知らないうちに労働組合の結束力と士気が低下する、恐ろしい不当労働行為です。ですから、会社に抗議してそれでも誠実に対応しない場合は、団体行動や労働委員会への救済申し立てなど、断固とした措置を用意しておくべきです。
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