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「不利益取扱い」という不当労働行為の知識と戦い方を知ろう

労働組合を結成したり、結成後組合活動をしていると、高い確率で会社側からの嫌がらせに遭うでしょう。嫌がらせの中で最も多いのが、組合員である従業員に対して不利益が生じるように人事権・業務上指揮命令権を行使する「不利益取扱い」です。

「不利益取扱い」はその種類も豊富で、かつ最近は心無い専門家等の助言により法に抵触するかしないかギリギリの巧妙な行為が横行しており、対応が難しくなっています。巧妙化した「不利益取扱い」を見逃さず、行為をした会社にきっちりと責任を取らせるにはどうしたらいいのでしょうか?

それには、労働組合法第7条の1項1号前段と4号に示された不利益取扱いの種類をおさえ、そのうえで巧妙化した不利益取扱いの変形パターンを知り、中核となる具体的な戦い方に結び付けていくことです。

当ページで詳しく説明していきましょう。

実際にブラック企業の現場で行われている「不利益取扱い」の内容を知っておこう

 労働組合法第7条が禁止している「不利益取扱い」は、それが生み出す結果の性質から分類して、以下の3つに分けることができます。

 実際に現場で行われる不利益取扱いの内容を事前に知っておくことで、自分がいざおこなれたときに、「これって、不利益取扱いなのでは?」と早い段階で勘付くことができます。

 以下で挙げる不利益取扱いは、実際に私が経験したり、組合仲間が経験したものがほとんどです。このことは、以下の卑劣な行為が、あなたの身の回りでも実際に行われ得る、ということを意味します。決して対岸の火事ではないのです。

労働者としての身分・地位を奪ってしまう「不利益取扱い」

 労働者の地位自体を奪ってしまう「不利益取扱い」として、以下のモノがあります。

  • 解雇
  • 契約の更新の拒否
  • 雇止め
  • 本採用の拒否

 ここで、よく問題になる行為について、あらかじめ解説しておきましょう。採用と再雇用の問題です。

組合員であることを理由に、採用を拒否することは、不当労働行為になるか?

 組合員であることを理由に、採用を拒否することは、不当労働行為になるか?この点については、最高裁判所でも争われました。

 その裁判例では、『労組法7条は、使用者の採用の自由まで制限するものではない』と判断しました。

 しかしその裁判の判断の是非については、学説上で反対意見が多い。労働組合員が、労働基本権という憲法上認められた権利を行使しているだけなのに、組合員というだけで社会からのけ者にされてしまう危険性が生じるからでしょう。

再雇用の場合、組合員であることを理由に再雇用を拒否したり差別することは不当労働行為になるか?

 再雇用・再採用の場合、組合員であることを理由にして雇用の拒否をしたり、契約を打ち切りしたりすることは、不当労働行為にならないか?考えられるケースは、以下の場合が挙げられます。

  • 定年後の再採用の拒否
  • 季節労働者の再採用の拒否
  • 会社の営業譲渡の際の、営業を譲り受けた会社による採用拒否

 これらの場合は、再採用の拒否は解雇と性質が似ているとの理由で、不当労働行為である、判例で判断とされています。

 再採用も一種の”採用”なので、使用者に自由がある、だから組合員は採用しない、などという理屈になったら、それを理由とした不利益取扱いが横行するからです。

労働者を経済的に追い詰める「不利益取扱い」

 労働者を経済的に困窮させ追い詰める「不利益取扱い」として、以下のモノがあります。

  • 基本給の減額
  • 諸手当等の支給停止
  • 給料等級の降格
  • 非組合員との査定の差別
  • 組合員だけ残業をさせない
  • 組合員に仕事をさせない(経済的・精神的に追い詰める)

労働者を会社の人事的命令によって追い詰める「不利益取扱い」

 労働者を、会社の人事命令をつかって追い詰める「不利益取扱い」として、以下のモノがあります。

  • 労働者の今までの職歴からかけ離れた部署への配置転換・左遷
  • 出向
  • 降格
  • 組合員を、組合活動継続の困難な場所に配置転換すること

「不利益取扱い」を、労働組合法第7条をもとに詳しく分析

 労働組合法第7条には、不当労働行為の種類がずらっと並んでいます。この中で、不当労働行為の代表となるのが、当ページで触れている『不利益取扱い』です。

 不利益取扱いは、第7条の1項で述べられています。また、4項の、制裁的不利益取扱いも、広義の意味での不利益取扱いとされています。当ページでは、4項の制裁的不利益取扱いも不利益取扱いの一種として説明しましょう。

 ここで、労働組合法第7条1項1号の前段と、同条同項の4号を抜粋します。使用者は、以下の条文の内容の「行為をしてはならない」のです。

労働組合法第7条1項1号前段

労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。

「労働組合の組合員であること」を理由に不利益取扱いされた場合(1号)

 労働組合の組合員であることを理由に不利益な扱いをする場合に、不当労働行為が成立します。

 例え不利益を与える理由が表面上別の理由であったとしても、組合員であることが発覚した直後に為された場合など、組合員であることが理由なのが明らかな場合、不当労働行為とされる可能性があります。

「労働組合に加入し、もしくはこれを結成しようとしたこと」を理由に不利益取扱いされた場合(1号)

 労働組合に加入したり、労働組合を作ろうとしたことに対し、会社が制裁的に不利益取扱いをした場合には、不当労働行為が成立します。

 実際、この例をもっともよく聞きます。

 以前勤めていた会社の中の一つの会社は、組合を結成した労働者を、結成通知直後に全員解雇しました。これほど露骨で浅はか、かつ醜い例は少ないでしょうが、組合に加入したり、作ったりして不利益をされる例は後を絶ちません。

 「結成しようとしたこと」に対する不利益には、「組合を作りたい」と言ったり、組合結成のため仲間を勧誘したりしてる事に対する不利益取扱いも含まれます。

 また労働者が、労働条件改善を求めて、組合を正式に結成するまでいっていなくても、団結して使用者に要求等をしている場合には、組合結成の準備活動をしているとみなされる場合があります。よってみなされる場合、それら団結要求に対する制裁措置は不当労働行為とみなされるのです。

「労働組合の正当な行為をしたこと」を理由に不利益取扱いされた場合(1号)

 この場合を逆から考えてみますと、正当な行為と言えない組合活動に対する制裁等の不利益取扱いでは、不当労働行為は成立しないことになります。

 組合活動の中には、裁判等で”正当性を有しない”とされた活動がいくつかあります。

 それらの正当性があるとは言えない活動をして組合員が使用者から制裁を受けても、不当労働行為で使用者が指導を受けたりすることはありません。

労働組合法第7条1項4号

 『労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和21年法律第25号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

「労働委員会に申立てをしたことなど」を理由に(報復的に)不利益取扱いされた場合(4号)

 労働組合法第7条1項の4号では、労働委員会に申し立てをしたことなどしたことに対する報復的な不利益取扱いの禁止について定めています。

 4号で挙げられている禁止行為は、以下の3つです。

  • 「労働者が労働委員会に対し、使用者が労働組合法第7条の規定に違反した旨の申立てをしたこと」に対して、不利益な取扱いをしたこと
  • 「労働者が中央労働委員会に対し、労働組合法第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと」に対して、不利益な取扱いをしたこと
  • 「労働委員会が、労働委員会に対する申立て・再審査の申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に、労働者が証拠を提示し発言をしたこと」に対して不利益な取扱いをしたこと

 労働者には、不当労働行為があって改善を要求しても改善されなかった場合、都道府県の労働委員会に救済を申し立てる権利があります。また、労働委員会が救済請求を受けて出した命令に対して、再審査を求める権利があります。それらの行為に対して、解雇や減給・配置転換などの報復的な不利益取扱いをしてはならない、と4号は言っているのです。

 また、労働者の申し立てに対して労働委員会が調査・審問・和解手続きをする時、証拠を提出するなどの協力をしたことに対して報復的に不利益取扱いをしてはならない、とも書いてあります。

 

 ・・・いかがでしょうか? これらの報復的な使用者の行いは、法を軽視し、立場を利用し労働者の権利を踏みにじる、極めて卑劣な行為です。

 しかしこれらの行為が、常識を要求される大人の集団によって、多くの会社で公然と行われているのです。それはあなたの会社でも起こり得ることです。決して他人事ではないのです。

 不利益取扱いをされることは、労働者とその家族の生存権を脅かす極めて危機的な事態に陥ったということなのです。不利益取扱いについてはしっかり頭に入れておいて、危険を感じたら使用者の動向をしっかりチェック・記録しておくべきでしょう。

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