労働紛争での交渉の特徴~総論(不平等・不利・不愉快な場)
労働紛争の場において行われる交渉の独特な特徴について、その内容と、他のシーンでの交渉の特徴とどこが違うのかを比較しながら説明します。
このページでは、労働紛争における交渉の特徴を大まかにまず説明します。不平等で、不利で、かつ不愉快な思いをしがちな労働紛争での交渉をマスターするための、第一歩のページです。
労働紛争での交渉に見られる3つの特徴
労働紛争で行われる交渉には、大きく3つの特徴があると考えています。
もちろん、他のシーン(商談等)でも同じような傾向があるでしょう。しかし以下に挙げる3つは、労働紛争における交渉において特に強く感じた特徴だと思いました。
- 相手(会社側)は労働者側と対等に交渉する気がない
- 他の交渉に比べて格段に感情的になりやすい
- 会社側の不当な行為により発生してしまった現状をひっくり返さないといけない
では3つの特徴を、以下で軽く説明していきましょう。各特徴の詳細と簡単な対応策は、詳細ページにて説明します。
相手(会社側)は労働者側と対等に交渉する気がない
会社側の責任者(経営者・人事の責任者)は、そもそも労働者と対等に話し合いをするつもりなど無いケースがほとんどです。これは労働紛争における交渉の最も大きな特徴だと言えるでしょう。
責任者の心の中では、もうハラは決まっているわけです。ですから今さら話し合いをすることなど、面倒以外の何物でもないのです。心理的・経済的な圧力を加えて会社から追い出したり、黙らせたりする方が楽だと考えるでしょう。
対等に交渉するつもりがない心からは、考えられないほどの傲慢・卑劣な対応が生み出されます。その典型例が、「脅迫」や「不誠実な話し合い」などです。
そのような相手に真っ向から取り組むのは効率が悪いでしょう。そこで、「崩し、同じ土俵に立ち、突破口を作る」という手順を踏んだ交渉姿勢が有効となるのです。
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他の交渉に比べて格段に感情的になりやすい
労働紛争における交渉の大きな特徴の一つとして、当事者双方が非常に感情的になってしまう、という特徴があります。
会社側の交渉者は、当事者たる労働者に業務上の指揮命令権を持っているケースが多い。指揮命令することを繰り返すうちに、彼は労働者に対して身分的な優越感を感じ始めます。
その優越感が日常の中で配慮に欠けた態度を徐々に生みだし、交渉の場で権利を主張する労働者に対しては「下の人間のクセに」的な見下した態度・発言を引き起こします。
労働者は当然、その傲慢な態度・発言に激しく反発・・・そして解決の見えない感情的な交渉へと突き進んでいくのです。
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会社側の不当な行為により発生してしまった現状をひっくり返さないといけない
労働紛争の交渉には、非常に重い使命があります。それは、労働紛争における特徴の3つ目でもある、「すでに発生した現状をひっくり返さないといけない」という使命です。
交渉する時は、もうすでに不当な行為は発生(もしくは決定)しています。交渉では、その発生した事実を話し合いで以前の状態に戻さないといけません。しかしこのことは容易でないことは想像がつきます。会社側は「もうすでに発生したことで戻せない」もしくは「よくよく考えた上でもう決定してしまったこと」という姿勢を採るからです。
この重い使命を達成するためには、強い決意を持つことと、会社側も動かざる得ないような準備(証拠収集・組合結成等)をしたうえでの交渉スタートが必要となります。
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他のシーンにおける交渉と、どこが一番違うのか?
私が今まで経験した交渉(仕事上の交渉からプライベートでの交渉までを含む)では、労働紛争におけるそれと比べて、相手の態度がこれほど傲慢なことはありませんでした。
確かに他のシーンでの交渉でも、話し合いがもつれることは常にありますね。皆様の直面している交渉でも、もつれることで大いに心悩まされていることと思います。
しかし労働紛争における交渉では、そもそも会社側は問題を解決しようとする意志が無い(もしくは少ない)場合が多いのです。話し合いによる解決を求めて交渉する機会を作っても、相手は真面目に話し合いなどしてきません。
その場で私が出逢った人間は、どんな質問をしても経営者の考えを繰り返すだけの伝達マシーンと化した人間、脅迫によって屈服させようと一生懸命な人間、みえみえの嘘を勝ち誇りながら話す人間でした。
これは大きな違いだと思います。他のシーンでの交渉では、双方が問題解決を願って権限と解決意欲のある人間を送り込んでくるのが普通です。しかし労働紛争では、交渉は単なる形だけのケースに陥っている場合が多いため、伝達マシーンや、解決意欲のない人間がその場にやってくる。
この点は、交渉を建設的なものにするために特に心にとどめておかなければならない点だと思います。
つまりこの大きな違いを克服するために、他の交渉の準備に加えて特別な手順を要した方がいい、ということです。
この特別の準備については、交渉の4原則の中で、しっかりと説明していきたいと思っています。