労働紛争での交渉の特徴~現状打破の重い使命を負っている
労働紛争における交渉には、会社側の不当な行為により発生してしまった現状に対し、打破しなければならないという重い使命が課せられます。このページでは、この特徴の内容となぜそうなるかの理由、そして打破のための対応策を説明していきます。
一方的に「既成事実」にされた現状を打破することの難しさ
労働紛争における交渉においては、非常に重い使命があります。それは「すでに発生してしまった事態をひっくり返さなければならない」という使命です。
会社側は不当な行為をするとき、労働者にいちいち確認を求めたり希望を聞いたりしません。不当な行為による不利益の強要は、ある日突然前触れもなく、こちらの意志に関係なくやってくるのです。そして、強要によって変わった事実は、すでに既成の事実となってしまい、会社側は頑として変えようとはしなくなります。なぜなら、「もう起こってしまい、そうなってしまって簡単に変えられないから」です。
その突然の出来事に、あまり覚悟を決めずに「やめて欲しい。その結果は受け入れられない。」と文句を言うことは恐ろしい結果を招きます。文句を言った瞬間、もっと過酷な仕打ちがあなたに降りかかります。
その経営者の性質は、一方的に不当な行為をしてくるということから予測して傲慢で、かつ労働者の生活や感情を軽視している可能性が高いでしょう。そのような経営者に、覚悟を決めないで行き当たりばったりに権利を主張することは、行動をエスカレートさせるこの上ないキッカケとなるでしょう。
「ひっくり返してやる」というほどの強い覚悟と、周到な準備が必要となる交渉
こちらに「申し訳ない」という気持ちを起こさせる巧妙な嘘を跳ね返す「鉄の決意」が必要
労働紛争における交渉には、強い覚悟が必要です。交渉の場になれば、会社側の不誠実で上から目線の態度に必ず悩まされます。もしくはまともに話し相手になってくれないかもしれません。
たとえ話し合いの場に出てきたとしても、その場で会社側の交渉担当者は、あなたの欠点を責め反省の念を起こさせるような話をしてくるかもしれません。
- 「今回の行為に及んだ理由として、平素の君の○○○○という行動が挙げられる。それなのに反論するとはどういうことだ。」
- 「今回は会社も苦しくて、皆今回のことについて納得してくれている。文句を言ってきたのは君だけだ。」
あなたの平素のどの行為が問題だったのでしょうか?それはほとんどの場合言いがかりです。会社側は、あなたの人件費や日頃の言動が気に入らないだけなのです。
皆今回の不当な行為を納得などしていません。会社の仕返しが怖くて黙っているだけです。本当は文句を言いたくてたまらないのですから。あなたが権利を主張することで、労働者同士が団結することがもっとも嫌なのです。
これらの言葉は、あなたに「申し訳ない」という気持ちを起こさせ、戦う決意を失わせる巧妙な言葉です。交渉に臨む前にしっかりとした目的をもって決意しておかないと、交渉を投げ出してしまうことになるでしょう。
事態をひっくり返すための証拠収集。できることから取り組む。
「鉄の決意」は、不誠実な交渉態度の会社に大きな打撃を与えるでしょう。しかしそれに加えてもう少し準備がしたいです。
それは、公的機関や労働裁判でも認められているような、不当な行為の証拠をつかむことです。しかし「証拠を採る」ことは予想以上に難しく、面倒なものです。
社内いじめを例にとりましょう。
日常の中でいじめられているならば、その内容といじめられた時、場所、いじめに加わった人間などを記録しておかないといけません。その記録により真実味を持たせるために、録音などのしておく必要があります。
しかし「録音」というものは実に難しく、勇気のいることです。常にボイスレコーダーを持っていなければならないですし、相手の声をクリアに録音するには、事前の練習が必要となります。
ではノート等に記録するのはどうでしょうか?この方法が最も現実的な証拠採取方法でしょう。しかしいじめられるたびに詳細に記録をしなければならず、その作業は手間であり、かつ辛いものがあります。
しかし証拠はあった方がいい。ですからあなたが不当な行為を受け不利益を強制された時は、あなたの事例で何が不当な事実を証明するものとなるかしっかりと調べます。
そして証拠として考えられるものの中で自分にも集められることができそうなものから、取り組んでいきます。
「録音」などの高度な証拠収集作業は、本当に心から信頼できる人間にだけ協力してもらいましょう。あなたの周りの同僚の中で、心から協力してくれる人間など実はほんのわずかです。証拠収集などという、己も巻き添えを食らう危険性のある作業には、うわべだけの理解者は協力してくれないのですから。