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脅迫に負けない交渉術(6)~最終手段たる客観的基準に従う

ブラック企業との戦いにおける交渉の場で、「脅迫」に対し交渉術(主にハーバード流交渉術)をいかに用いたらよいか?を説明する第6回目(最終回)。

(5)における通知と期限の設定後も脅迫に固執するブラック企業に対し、最終手段として客観的基準(法律)に沿って行動する方法を説明していきます。

この段階までくると、交渉がほぼ決裂したことになりますが、客観的基準たる法律を利用する、という最後の手段が残されています。この手段は、相手側の態度を硬化させる危険性を持っていますが、この段階ではその配慮は必要ありません。しかし常に、話し合いによる解決の道は示しておきます。

(6)においても、(5)と同じように、淡々とこなしていくことが効果的です。私たち労働者の最大の味方である法律を存分に利用して問題解決を図りましょう。

期限切れ後、警告通り淡々と最終手段を進める

期限切れと同時に、すぐに行動する

 交渉の始めから終わりまでずっと脅迫を受け続けてきましたが、穏健な態度をするのもこれまでです。事前の計画通り、最善と思われる手段から淡々と進めていきましょう。

 この段階まで来ると、非常に残念な結果になったと言えます。「話し合い」という、最も双方にとって負担の少ない問題解決方法がほぼ消えたのですから。

 こちらが建設的な対話による解決を望んでも、相手は「脅迫」という意味のない愚かな交渉態度を崩さなかった。この事実は、しっかりと受け入れないといけません。

 「会社側にも事情がある」などという、一見物わかりがよさそうだが実は自分が被害を受けたくないから黙っているだけの保身同僚の無責任な意見など無視をします。

 脅迫の姿勢を崩さず話し合いを拒否し続け、不当な行為を一方的に押し付けて謝罪もしない会社には、その行為の果てに当然生じる結果を受け入れるべきです。

行動する時は、遠慮は無しで

 こちらが示した回答期限が過ぎるのと同時に、警告内容で伝えた手続きの初めの手段を実行に移します。

 すぐに行動に移すことの意義は、「こちらの断固とした決意をしっかりと相手に示すこと」にあります。

 通告通りに実行するときも、決して相手を感情的に逆なでしてはなりません。目的はあくまでも当労働トラブルの解決だけなのです。憎しみ合うのは、すべての可能性が絶たれた後で構いません。淡々と手続きを進めることが、相手にとって十分すぎるくらいのプレッシャーを与えることになるのですから。

 いったん振り上げた斧は、躊躇なく振り下ろすことで、うまくスパッと処理できるのです。もう十分、私たちは譲歩してきました。遠慮は無しです。

 行動は迅速に遠慮なく、かつ合法的に。最後に、常に「話し合い」による解決の可能性を残すことの大切さを説明して、『脅迫に負けない交渉術』を終わりにしましょう。

話し合いの可能性は、いつでも必ず残しておく

 行動する中でも、常に「話し合い」には応じる意向を伝えておきます。

 なぜなら、問題解決の最善の方法は、やはり話し合いによる合意だからです。最善の方法は決して、裁判や労働争議ではありません。

 日本では、裁判になってもその期日中、常に裁判官によって両当事者への和解が促され続けます。もちろん、あふれる案件を素早く処理するための方策ではありますが、紛争解決の専門家集団たる裁判所も、話し合いによる合意が一番双方が納得できて迅速な解決手段であると認識しているからそのようなことが行われているのです。

 我々もそのプロたちの姿勢を見習いましょう。会社側と紛争を通して接している以上、話し合いによる和解の可能性はゼロではありません。たとえ憎しみ合っていてもです。会社側が万に一つでも話し合いを求めてきたら、「何を今さら」などと言わず、話し合いに応じましょう。

 しかし再び期限を設けて相手の歩み寄りを期待するなどの、手続きの進行速度を緩めるようなことをしてはなりません。

 そうしてしまうと、会社側にこちらの「警告内容の実行の本気度」を疑われ、再び会社側の傲慢で不誠実な態度を招くからです。

 

 ・・・これにて『脅迫に負けない交渉術』を終わりたいと思います。

 大事なのは、会社側の脅迫にこちらも脅迫で応酬するようなことのないこと。そして互いに協力して両者納得の第三の案を作ることです。

 会社側が脅迫する姿勢を崩さなかったら、こちらは冷静に警告を発し、それでもなお話し合いにならなかったら、警告内容を淡々と実行します。そして常に話し合いの機会を確保しておきます。

 皆様が会社側の脅迫を乗り越え、己の権利を実現できることを願っております。