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脅迫に負けない交渉術(4)~共同で「第三の案」を生み出す

ブラック企業との戦いにおける交渉の場で、「脅迫」に対し交渉術(主にハーバード流交渉術)をいかに用いたらよいか?を説明する第4回目。

目前の労働紛争を双方が納得して早期に解決するために最も有効な手段である、『会社側と共同して「第三の案」を生み出す』手段の説明していきましょう。

「卑劣な手を使ってきた相手と共同作業?」と思うかもしれませんが、(1)~(3)のプロセスを経ていれば、(4)を行うことは不可能ではありません。ポイントは、誠実に、真面目に、そして過去の怨みにとらわれないことです。

簡単とはいえず、かつ、相手を許せない気持ちとの戦いとなりがちですが、大きな目的のためにも行動に移していきましょう。

会社側と「第三の案」を作るために、とるべき4つの行動

会社側が「脅迫」をすることを止め、話し合いをする姿勢を示してくれたなら、それはとても大きな進展だと言えるでしょう。しかし、焦ってこちらの意見を押し付けるようなことはしないことです。

労働紛争の交渉で大事なのは、こちらの思惑と会社側の思惑の両方を満たすような「第三の案」を共同して作っていくことなのです。

会社側の思惑ばかり受け入れたのでは、何のために立ち上がったのかわかりません。しかし、こちらの思惑ばかりを強硬に主張するのでは、再びケンカ腰な交渉となってしまいます。

双方の利益を満たすような「第三の案」を共同して作るためには、両者の間である程度の信頼関係を作ることが大事です。

信頼関係?労働紛争の両当事者が信頼関係など今さら築くことができるのか?と思われるでしょう。確かに難しことです。しかし不可能ではないのです。

信頼関係構築という難しい作業を為し得る4つの行動があります。それは特別の交渉術も必要としない、相手と自分の立場を尊重した行動です。この4つの行動に共通する理念は「争わないこと」。争いになって相手の反発を引き起こすから交渉が難しくなるのです。それを避けるのが最も賢明な道なのです。その4つの行動を、以下に挙げます。

  • (1)会社側の合法的な要望に対しては、快く応じる姿勢を示すこと。
  • (2)双方の利益を満たす「第三の案」を共同して作りたい、という気持ちを誠実に伝えること。
  • (3)脅迫をしたこと等について、会社側の行為・人格を否定しない。双方合意だけに焦点を絞る。
  • (4)こちらの要望を、しっかりと「第三の案」に入れてもらう。そしてそれは、会社側の譲歩によって得られた形をとり、その決断に感謝の念を示す。

これらの姿勢を示しても、会社側が話し合いの進展を思いとどまるケースもあります。しかしそのような相手ならば、そもそも脅迫自体を止めません。

ですから、話し合いに応じる姿勢を示した相手ならば、上で示した態度に高い確率で良い反応をしてくれるでしょう。その反応には敬意を表さねばなりません。形だけの交渉参加しか考えていない相手でない限りは、こちらも攻撃的な姿勢は控えなければなりません。

以上で示した4つの行動点について、以下で補足をしておきましょう。

各行動をすべき理由と順序

 上に挙げた各行動は、下図の順序で基本的に行われます。

4つの行動の取り組み順序を説明する図
4つの行動は、前から順に行っていくものではない

 (1)・(2)の行動は、基本的に同時に行われます。そしてそれらの行動でもって信頼関係を築きつつ、最後に(4)の結果を目指すのです。交渉自体を進めるために、常に(3)の行動を心がけます。

 では、各行動の注意点と理由を説明しましょう。

会社側の合法的な要望に対しては、快く応じる姿勢を示すこと

会社側の要求してくることは、不当なものだけではありません。その中には、私達の今までの勤務態度等に対する「不満」が含まれている場合があります。

その不満が違法な行為をもとにした会社のエゴからくる不満でない限り、不満を解消するために努力する考え(または協力する考え)を伝えます。

双方の利益を満たす「第三の案」を共同して作りたい、という気持ちを誠実に伝えること

片方の示す案にもう片方が合わせようとするから、もう片方の不満を招いて激しい紛争に発展するのです。

であるならば、双方で協力して、互いが納得できるもう一つの案「第三の案」を一緒に作ってしまえばいいのです。

第三の案作成には、必ず双方が参加すること。ここにこちらの要求を入れておきます。

脅迫をしたことについて、会社側の行為や人格を否定しない。双方合意だけに焦点を絞る

交渉の場で相手のしたことや人格を否定すれば、ここまでこじつけた話し合い場そのものが壊れてしまいます。

確かに、今回の紛争の原因を作ったのは会社側ですし、挙句に脅迫までされて相手に対して不信感を持ってしまう気持ちは分かります。言い返してやりたい気持ちも湧き上がるでしょう。しかし、話し合いという最も事態を素早く終わらせる手段を失わないために、交渉の進展にのみエネルギーを使いましょう。

こちらの要望を、しっかりと「第三の案」に入れてもらう。そしてそれは、会社側の譲歩によって得られた形をとり、その決断に感謝の念を示す

最後に、こちらの要望もしっかりと第三の案に入れるようにと会社側に意思表示します。この意思表示は、話し合いの大詰めで行いたい。わずかながらに積みあがった信頼関係をもとにこの作業を行います。

こちらの要望を盛り込むことに成功したならば、その成功を会社側の譲歩によるものとして感謝をする。そこでまた信頼関係に上乗せがされます。

やってはいけないこととは、会社側に遠慮してこちらの要望を伝えないこと。それでは何のために労働紛争を起こしたのかわかりません。

第三の案を共同に作る、という点で、互いが譲歩をしなければならないのは間違いない。しかし互いが、持っている権利以上のものを得ることもないし、持っている権利以下のものしか得られないこともないのです。